研究課題/領域番号 |
23K23813
|
補助金の研究課題番号 |
22H02549 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
藤原 俊伸 近畿大学, 薬学部, 教授 (80362804)
|
研究分担者 |
三嶋 雄一郎 京都産業大学, 生命科学部, 准教授 (00557069)
伊藤 拓宏 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (70401164)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
|
キーワード | 翻訳制御 / リボソーム / RNA結合タンパク質 / RNA結合蛋白質 |
研究開始時の研究の概要 |
翻訳装置であるリボソームが同質ではなく、多様な不均一性を形成していることが判明しつつある。そしてこの不均一性は哺乳動物における選 択的な翻訳を促進し、細胞・組織特異性を決定する重要な要素となりうる。しかしながら、リボソームの不均一性により、翻訳制御機構がどのように影響を受けているのかについての知見は乏しい。そこで本研究では、哺乳類細胞のin vivo 翻訳制御システムを高度に保ったin vitro 翻訳系を駆使した生化学的解析とクライオ電子顕微鏡による立体構造解析により、組織特異的結合因子によりRNA情報を識別可能となるリボソームが、細胞・組織に特化した翻訳開始を制御する分子機構の解明を試みる。
|
研究実績の概要 |
昨年度の研究により、リボソーム結合因子が細胞・組織特異的にIRESの配列情報を識別するために必須であることが示されたため、本年度は「3.結合因子によって機能が特化したリボソームにより翻訳指向性が特徴付けられる新規配列を見いだす。」ことに着手した。足がかりとして簡便に分化誘導可能なマウス筋細胞を用いて、ショ糖密度勾配遠心による分画後にポリソームから抽出したRNAの配列情報を分化前後で比較解析を実施した。その結果、細胞の分化前後でmRNAの発現量に変化がなくポリソーム画分への局在にのみ変化のあった遺伝子が複数同定された。さらに、同定された遺伝子の5’非翻訳領域を挿入したレポーターmRNAを作成し、分化前および分化後の細胞抽出液を用いたin vitro翻訳解析を実施した。そして、分化前後で生じる5’非翻訳領域の配列依存的な翻訳活性の変化をin vitroで再現することに成功した。同様の比較解析を野生型および因子XをKOした神経細胞において行なっている。分担者の三嶋は、昨年度の条件検討結果をもとに、ヒト培養細胞においてRNA-Seqとリボソームプロファイリングによって翻訳効率とRNA制御配列を統合的に解析するための予備実験をおこなった。また、リボソーム衝突に由来するDisomeのプロファイリングの結果を解析に含めるためのパイプラインを構築した。さらに分担者の伊藤は、翻訳開始因子eIF3の変異体をヒト培養細胞を用いて精製する方法を確立し、再構成型試験管内翻訳系に使用可能であることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経細胞のように分化した細胞では抗アポトーシス機構の働きが重要であり、これには細胞内リン酸化シグナルが深く関わっている。一方で、翻訳開始因子のリン酸化を介した翻訳開始制御機構も多数知られており、分化した細胞内におけるリン酸化シグナルと翻訳制御機構との詳細な関わりを明らかにすることは、本研究課題を遂行する上で非常に重要な課題である。本年度は、神経分化に必須である神経特異的RNA結合タンパク質とタンパク質リン酸化酵素との結合性が翻訳開始機構にどのように影響するかの解明に挑んだところ、翻訳制御そのものにはリン酸化酵素の働きは関わりが小さく、神経細胞内における局所翻訳制御および配列指向性に重要である可能性を見出した。さらに、昨年度において、神経細胞特異的に発現するRNA結合タンパク質を探り針として翻訳開始機構の解明に挑み、リボソームをmRNA上へとリクルートする上で鍵となる翻訳開始因子eIF3との相互作用が重要であることを明らかとした。そして、翻訳システムを試験管内で再現する実験系を構築するにあたり、最大の障壁である巨大複合体eIF3の組換えタンパク質調製において、分担者伊藤により大きな進展を得ることができた。さらに、分担者三嶋の尽力により、翻訳効率とRNA制御配列を統合的に解析するための予備実験が完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続きリボソーム結合因子による細胞特異的翻訳開始制御の分子機構の2種類のIRES依存的な翻訳開始の分子機構を生化学的解析とクライオ電子顕微鏡による立体構造解析により明らかにすることを試みる。すでに同定済みである神経細胞由来リボソームに特異的に結合し、ポリオウイルス IRESの神経細胞での翻訳開始を制御する40S結合因子Xと、そのリボソーム結合に重要なアミノ酸の変異体とを用いたリボソームプロファイリングを実施し、結合因子によって機能が特化したリボソームにより翻訳指向性を特徴付けられる新規配列を見いだすことを最終目的とする。また、結合因子Xと40Sサブユニットとの相互作用部位の同定をクロスリンク質量分析法によって試みる。また、どのように IRES中の1塩基変異を認識してリボソームへのローディングの可否を決めているのか、その理解を得るためには、構造生物学的解釈が必要かつ不可欠である。そこ で、分担者・伊藤が中心となり、因子X・40Sサブユニット・ポリオIRES翻訳開始複合体、および因子X・80Sリボソーム・ポリオIRES翻訳開始複合体の立体構造解析を行う。翻訳開始の各ステップに必要な翻訳開始因子を加減することにより、様々なステップを取り出し、それらの立体構造解析を決定可能である。そして、得られた立体構造情報に基づいて生化学的な解析を行い、立体構造から見出される分子機構を検証する。多くの段階の一連の立体構造と生化学的な解析により、ポリオウイルスIRES依存的な翻訳開始制御の分子機構の全体像を足がかりに、リボソーム結合因子による特異的翻訳促進の分子機構を明らかにする。 加えて、我々がこれまでに報告しているA型肝炎ウイルス(HAV)IRESからの翻訳を促進する肝細胞特異的因子の同定を試み、ポリオウイルスの場合と同様の実験を実施する。
|