研究課題/領域番号 |
23K23815
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補助金の研究課題番号 |
22H02551 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新冨 圭史 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (60462694)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 染色体 / 細胞周期 / ヌクレオソーム / DNAトポロジー / クロマトソーム |
研究開始時の研究の概要 |
分裂期染色体は遺伝情報の継承に不可欠な細胞内構造体である。本研究では、ナノメートルサイズの小さな構造要素が、マイクロメートルサイズの染色体の高次構造構築にいかに貢献するのかを理解することを目指す。そのために、研究代表者が開発した独自の手法(カエル卵無細胞系や精製因子を用いた再構成系)を駆使した解析を行う。具体的には、「ヌクレオソーム」、「クロマトソーム」、「DNA超らせん」という3つの構造要素に対して精緻な実験操作を施し、その影響を解析することで、それぞれの要素の役割を検討する。最終的には、異なる実験系から得られた情報を統合し、マルチスケールな視点で染色体の新しい描像を提示する。
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研究実績の概要 |
染色体構築は、細胞分裂に際して遺伝情報を正確に娘細胞へと受け継ぐために不可欠なイベントである。近年になって、本研究課題の代表者を含むいくつかのグループの精力的な研究によって、染色体構築に必要なタンパク質のリストがおおむね出揃った。さらに、そうしたタンパク質のひとつであるコンデンシンがATPの加水分解反応から得たエネルギーを使ってDNAにループ構造を作ることなどが新たに示されている。これらの研究成果を踏まえて、DNAループが連続的・らせん階段状に配置されることによって染色体へと折り畳まれるとのモデルが提唱されている。しかし、染色体構築のメカニズムには未だ不明な点が多く残されている。例えば、クロマチンの基本構造単位である「ヌクレオソーム」、そこにリンカーヒストンが結合した「クロマトソーム」、二重らせん構造に起因する「DNAの超らせん」など、染色体に内包された微視的な構造要素が、いかにして巨視的な染色体の構築に貢献しているのかという問題はほとんど理解されていない。 そこで、本課題では、代表者が独自に開発したカエル卵無細胞系や精製因子を用いた再構成系を駆使して、クロマチンの微視的構造から染色体高次構造までの連関をスケール横断的な視点から理解することを目指す。2022年度には、まず、従来のカエルの精子核の代わりにカエルの赤血球核をカエル卵抽出液中でインキュベーションする方法と顕微鏡下で染色体高次構造を定量的に評価する方法を確立した。これらを組み合わせた解析により、クロマチンリモデラーが染色体の個別化を促進させるのに対し、リンカーヒストンは個別化を抑制的に機能することが示唆された。また、細菌由来のタンパク質を用いて、染色体内のDNAの超らせんを検出する方法も検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由は主に2つある。 (1)研究の準備となるステップを早々に完了できた点である。具体的には、まず、新しい実験材料である赤血球核の調製方法を確立し、その後の詳細な解析の再現性を担保できるようになった。さらに、卵抽出液中における赤血球核クロマチンの形状変化とクロマチン構成タンパク質の変化などの基本的なデータを収集できたことも、解析結果の解釈にも役立つと考えている。
(2)クロマチンリモデラーやリンカーヒストンに与えた実験的かく乱の結果、各々の染色体の「個別化」の過程が大きな影響をうけることを見出した点である。さらに、個別化の程度を定量的に評価する方法を確立した。これらによって、これまで見過ごされてきた染色体個別化のメカニズムに解析が及ぶようになったことは非常に大きな意義を持つと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの予備実験から、クロマチンリモデラーISWIが染色体の個別化を促進させるのに対し、リンカーヒストンH1.8は個別化を抑制的に機能することが示唆された。この可能性を詳細に検討するために、卵抽出液からISWIやH1.8を除去したとき、あるいは、それらの変異体に置き換えたときに、染色体の形状や個別化の程度にどのような影響が及ぶのかを解析する。これらのさまざまな実験条件におおける染色体結合タンパク質組成の違いを質量分析によって解析し、ISWIやH1.8と協調的に働くタンパク質を同定する。 一方、細菌由来のタンパク質を用いたDNAの超らせん構造を検出する方法については、有力な結果が得られつつあるが、さらに詳細に実験条件を検討する必要がある。この方法が完成すれば、染色体上でいつどこに超らせん構造が作られるのか、さらに、検出される超らせん構造が、コンデンシンやトポイソラーゼⅡなどの染色体構成タンパク質に依存するのかなどの問題を検討していきたい。 最終的には、これらの解析から得られる結果を総合し、ヌクレオソームやクロマトソームのようなクロマチン基本構造やDNA超らせんが、巨視的な染色体の構造をどのように制御しているのか明らかにする。すでに、解析が進んでいる部分については、今年度中に原著論文として発表したい。
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