研究課題/領域番号 |
23K23823
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補助金の研究課題番号 |
22H02559 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 貴之 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (20423155)
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研究分担者 |
高崎 寛子 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (50610432)
寿野 良二 関西医科大学, 医学部, 准教授 (60447521)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | クライオ電子顕微鏡 / 楔形試料 / 細胞内単粒子解析 / 単粒子解析法 / 集束イオンビーム / FIB / 単粒子解析 / cryo-EM / FIB-SEM / 収束イオンビーム / in situ SPA |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質の機能は構造と密接に関係しており、構造情報を得ることは機能を理解するうえで重要な情報を与える。一般に構造解析の手法は精製試料に対して行うため、自然な状態を反映していない可能性を否定できない。細胞というタンパク質が機能するための優れたチャンバー内で構造解析できれば究極の構造情報を得ることができる。そこで、細胞をFIB-SEMを使って試料をくさび形に成形し、高分解能に適した試料の厚さ部分のみから粒子像を撮影し、単粒子解析法によって細胞内での構造を解析する手法を開発する。
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研究実績の概要 |
タンパク質は生命活動の根幹であり、タンパク質の機能異常は病気を引き起こす。また、ウイルスなどの病原体は特定のタンパク質に結合することで感染が開始されるため、タンパク質を知ることは病気の治療や創薬のおいて最も重要な要素である。近年の創薬は構造情報に基づいた"Structure based drug design"が主流である。そのため、自然な状態のタンパク質の構造情報を得る手法は創薬の基盤技術になり得る。一般的に創薬に用いることができる高分解能な構造情報は細胞内から精製されたタンパク質を用いられ、細胞内で今まさに機能しているタンパク質の構造情報を高分解能で得る方法は未だに確立していない。本研究では凍結させた細胞を収束イオンビーム(FIB)を用いて、楔形に切削し、十分に薄い場所のみをクライオ電子顕微鏡にて撮影し、単粒子解析法を用いて細胞内のタンパク質の構造を解析する方法を確立することを目的としている。 FIBは試料を非常に薄く切削できるが、通常の方法では高分解能な情報を得るには不十分であるため、昨年度に続き、楔形試料の切削の条件を検討した。特に自動切削と組み合わせた場合の1試料の作成時間、FIB装置からクライオ電子顕微鏡まで移送する際の力学的な安定性の注意し、実験を行なった。 酵母を用いて切削を行ったところ、手前が薄く、奥が厚い楔を作ることでクライオ電子顕微鏡で撮影するに耐える均一で薄い試料の作製に成功した。電子線トモグラフィーの一般的な試料作成手段に従うと、横幅がおおよそ20 umよりも大きな試料の場合は力学的に強度が足りず、しばしば試料の移動の際に崩落するが、楔形試料だと幅50 um程度まで安定であることを確認した。この広さの試料の場合、単粒子解析に使う領域は倍以上となり撮影効率が劇的に改善する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
奥が薄く、手前が厚い楔形試料だと薄い部分がきれいにならず、撮影効率が悪かったが、楔の形を逆にすることで、均一で薄い試料の作製の成功率が劇的に改善した。また、切削の方法の改善と楔試料の幅の検証を行ったところ、通常の倍位以上の幅の試料であっても力学的には安定で、移動の際に破損することがなくなった。得られた楔を使って単粒子解析を現在進めており、いくつかの問題点を改善しながら順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では試料作成が全ての鍵を握っており、そのための条件検討は長い時間を要することが予想される。クライオ電子顕微鏡による撮影は多くの部分が自動化され、1日に6,000-10,000枚の画像が撮影できる。2022年度段階では楔を作成することができたが、1楔に対して15箇所程度しか画像を撮影することができなかった。しかし、2022年度の装置のアップデートによって自動化が進み、1度に作製できる楔の数は変わらないが、人的なコストを削減することに成功した。2023年度のアップデートによって作業できる時間が18時間から48 時間に大幅に延長されたこと、幅を倍以上に拡張できることによって、クライオ電子顕微鏡での撮影速度に耐えうるグリッドを1回のFIB利用によって可能になると期待している。2024年度は単粒子解析によって細胞中での蛋白質粒子の高分解能構造解析に挑む。
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