研究課題/領域番号 |
23K23838
|
補助金の研究課題番号 |
22H02574 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伊藤 俊樹 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 教授 (30313092)
|
研究分担者 |
及川 司 北海道大学, 医学研究院, 講師 (20457055)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
|
キーワード | 細胞膜 / アクチン細胞骨格 / 細胞融合 / F-BARドメイン / 膜張力 / 破骨細胞 / アクチン / BARドメイン |
研究開始時の研究の概要 |
細胞融合は個体発生や生殖、感染症など多様な生命現象に関与するが、その分子メカニズムはほとんど解明されていない。申請者らは細胞膜を変形するタンパク質群を発見し、膜にかかる張力と膜変形の拮抗作用による、膜浸潤の仕組みを明らかにした。さらに、細胞融合面の細胞膜が、高度に変形した浸潤性の構造をとることを見出した。このことから、細胞膜どうしの融合が、膜にかかる張力で制御されると考えた。そこで本研究では、細胞膜の形状と張力を制御、感知する分子群とそれらの作動原理を明らかにするとともに、独自の分子モデル(二重膜切断)を検証することで、破骨細胞融合を含む細胞融合の共通原理を解明することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
RAW264.7細胞をRANKL刺激し、破骨細胞融合に至る過程をライブイメージングにて観察した。マニュアルトラッキングと画像解析を組み合わせて、細胞融合に至る細胞と単細胞のままとどまる細胞の形態変化を定量評価した。その結果、細胞融合に至る細胞の形態は優位に高い「真円度(circularity)」を示すことが明らかとなった。この結果は、RANKL刺激による細胞膜-アクチン皮層連結(membrane-cortex attachment; MCA)の低下による、細胞膜の物理的な柔らかさが、細胞融合に必要であることを示している。そこで、MCAの形成に関与するezrinの恒常的活性型変異体(MA-ezrin)、細胞膜とアクチン繊維を直接連結する人工遺伝子コンストラクト(iMC)をそれぞれRAW264.7細胞に導入したところ、いずれも細胞膜張力の上昇とともに、細胞融合の低下が観察された。このことから、細胞融合にはMCAの制御が本質的に重要であることが強く示唆された。 次に、MCAの低下により細胞膜の変形とアクチン重合を惹起することが知られているBARタンパク質ファミリーのノックダウン実験を行った。RAW264.7細胞にsiRNAを導入し、RANKL刺激後72時間後の細胞融合を共焦点レーザー顕微鏡で観察し、融合度合を計測した。その結果、複数のBARタンパク質が破骨細胞融合に関与することが示唆された。そのうちの一つの遺伝子はRANKL刺激48時間後から優位に発現上昇がみられ、機能的な重要性が示唆された。現在、これらのBARタンパク質の細胞融合面における分子動態を観察している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞融合における膜張力の重要性を、細胞形態の経時観察と光ピンセットによる実測で裏付けることが出来た。また、膜張力センサーであり、かつアクチン重合制御因子であるBARタンパク質のノックダウン実験により、細胞融合に関与する膜張力センサーを複数同定することに成功した。以上の理由から、本計画は「おおむね順調に進展している」と評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の計画として、細胞融合面におけるBARタンパク質の分子動態を明らかにすることを目指す。これまでの研究から、細胞融合と細胞膜の形状および物性との関連として、(1)細胞膜の微小陥入構造である「ポドソーム」の関与、(2)融合する二つの細胞どうしの細胞膜張力の対称性、が大きな論点となっている。本研究により、細胞膜の微小陥入構造を誘導・認識するBARタンパク質がいくつか同定できた。また、これらの膜曲率関連タンパク質はポドソーム構造にも関与することが知られている。これらのタンパク質が細胞融合面においてどのような分子動態を示すのか、を明らかにすることで、(1)の議論を大きく進展させることが期待される。(2)については、骨格筋細胞において細胞膜張力の「非対称性」が先行研究により提唱されてきた。本研究の成果により、破骨細胞融合においては、細胞膜張力の低下を伴うこと、細胞膜張力の人為的な上昇により細胞融合が阻害されること、が明らかになっている。これは、従来の骨格筋細胞融合におけるドグマに挑戦するものであり、十分な検討を行っていく予定である。
|