研究課題/領域番号 |
23K23842
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補助金の研究課題番号 |
22H02578 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
金城 政孝 北海道大学, 先端生命科学研究院, 名誉教授 (70177971)
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研究分担者 |
北村 朗 北海道大学, 先端生命科学研究院, 講師 (10580152)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
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キーワード | 回転拡散運動 / 併進拡散運動 / 相関関数 / 偏光 / 蛍光相関分光法 / 情報伝達 / 回転拡散測定 / 2量体形成 / 偏光測定 / 並進拡散運動 |
研究開始時の研究の概要 |
本申請ではタンパク質の2量体化とそれに与える細胞内微環境の影響を同時に解明するために分子量サイズの変化に敏感で回転拡散測定可能な偏光蛍光相互相関分光装置(Pol-FCCS)の新規構築を行う。特に細胞内微環境を反映する細胞内分子混雑状態がタンパク質の2量体形成と機能へ与える影響を明らかにし,さらに細胞内で相互作用するタンパク質の相互作用の定量的手法の開発を通して研究を発展的に進める。
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研究実績の概要 |
細胞情報伝達には多くのタンパク質が関与している。その中でも2量体化して細胞質から核へ移行し,情報を伝達する仕組みは,STAT3やNF-κB,各種のステロイドホルモン受容体などの転写因子に多く存在している。しかし「2量体化」と「移行」の間には相反する要因がある。それは2量体化することで構造的には安定化すると考えられているが,2量体化することで分子量が大きくなれば,移行するためには多くのエネルギーが必要であり,また輸送時間がかかることから,情報伝達では不利になる。このようにタンパク質が2量体化をする理由については不明なことが多く,実体はあまりよくわかっていない。
特に核内受容体の一つであるグルココルチコイドレセプター (GR)は,細胞情報伝達分子として糖代謝のみならず,免疫制御・抗炎症作用から精神的な情緒まで広く関与している。GRのシグナル伝達の最終段階はDNAに結合する転写活性にあるが,そのDNAに安定に結合した最終形態ではなく,その前段階のホモならびにヘテロ2量体形成が核内受容体の多様な機能を支える要因として注目が集まっている。 本研究ではGRの2量体化量とそれに与える細胞内微環境の影響を同時に解明するために分子量サイズの変化に敏感で回転拡散測定可能な偏光蛍光相互相関分光装置(Pol-FCCS)の新規構築を行う。次に細胞内微環境を反映する細胞内分子混雑状態がGRの2量体形成と機能へ与える影響を明らかにし,さらに細胞内でGR2量体化量と相互作用するタンパク質の相互作用解析等を通してたんぱく質2量体かの意義を解明するため研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当研究室で自作した偏光蛍光相関分光装置(正立型Pol-FCS)を改良して細胞測定が可能な倒立型-2波長偏光蛍光装置を構築中である。既設のPol-FCS装置は検出器2台を用いた2 channel 型であるため,初段で蛍光の偏光成分を二つに分け,次にハーフミラーで分けていた部分にダイクロイックミラー(DM)を装着し短波長側と長波長側に分け,相互シグナルとして検出する構成とした。この光路設計で波長の異なる蛍光成分を検出し,且つ,アフターパルス成分を除くことが可能となる。但し,縦成分,横成分偏光それぞれ2色蛍光を検出することで,最低4台の検出器とデジタル相関器が2台必要なったため,検出器2台と相関器1台を購入した。 既設のPol-FCS装置は,2台のAvalanche Photon Detector(APD)検出器を利用していたため,蛍光を集光レンズによって光ファイバーに集光させる必要があり、毎測定前に光ファイバー端面の位置を微調整する煩雑な手間を要した。新規の装置は,検出器をAPDからMPPC(Multi-Pixel Photon Counter、浜松ホトニクス)に変更した。MPPCは光子の検出効率は~40%とAPD(~70%)に準ずる高感度であり、受光面が広いため蛍光をほぼ損失せず検出することが可能となった。 検出した蛍光シグナルは相関器により解析され,自己相関関数は回転拡散を含む三次元自由拡散を仮定した理論式 G(τ)として並進拡散 G_T (τ)と蛍光粒子の明滅(ブリンキング)を表す G_B (τ)の二成分にさらに,回転拡散成分を加えた式G_R (τ)を用いて解析可能であることを確認した(詳細な式はここでは省略)。 進捗状況はやや遅れている。主な理由は,購入予定の検出器が昨今の半導体不足のために生産量が極端に少なくなり,入手困難であったため。年度末近くに購入した。
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今後の研究の推進方策 |
偏光蛍光相互相関システムの高度化 蛍光の偏光成分を分けるには,二つの手法がある。現状の初段に縦横偏光を分けてから,蛍光を分けるか,2色の蛍光を分けてから縦横偏光を分けるか,である。2年目以降は,その二つの手法を比較しつつ,バンドパスフィルター等の光学特性を考慮しより感度よくシグナルが取れる装置に改良していく予定。 光学調整の重要な部分としてFCSでは共焦点系を構築するためにピンホール調整がある。一方で,申請者らが開発した不当分割光ファイバーを用いることで光学調整が不要になる可能性がある。Pol-FCS装置においても,偏波保持光ファイバーを利用して,この可能性を確かめる予定。これを達成することで,装置全体が安定化し,細胞測定の有利なることが想定される。 細胞測定の進展 GFP-mCherrey(ポジコン)やGFP-GRとmCherry-GRを対象として,2量体化したたんぱく質複合体形成をFCCS測定を行い装置の調整を行う。それと並行して,GRの生理的機能差を明確に解析できる細胞種の選定を行う。特にGRの場合には内在性GRが少ないことが知られているN2A細胞を一つの候補とする。
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