研究課題/領域番号 |
23K23846
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補助金の研究課題番号 |
22H02582 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 重彦 京都大学, 理学研究科, 教授 (70402758)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 分子シミュレーション / ハイブリッド法 / ロドプシン / 光合成系II / 共有結合型阻害剤 |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質分子は、酵素活性部位における高い触媒反応活性のみならず、タンパク質分子に特徴的な大域的分子ダイナミクスにより、複数の化学現象を相関させる共役性という顕著な分子機能を有している。そこで、本研究では、我々が独自に開発した化学現象とタンパク質ダイナミクスを高精度かつ統一的に記述することができるハイブリッド分子シミュレーション法を用いて、光受容体タンパク質の機能活性化やウイルスタンパク質の薬剤結合に関する理論的研究を行う。特に、複雑に化学的現象が相関する分子機能全体のエナジェティクスを明らかにすることにより、実験的実証に資する理論予測・設計の道を開く。
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研究実績の概要 |
タンパク質分子は、酵素活性部位における高い触媒反応活性のみならず、タンパク質分子に特徴的な大域的分子ダイナミクスにより、複数の化学現象を相関させる共役性という顕著な分子機能を有している。本研究では、我々が独自に開発した化学現象とタンパク質ダイナミクスを高精度かつ統一的に記述することができるハイブリッド分子シミュレーション法である QM/MM RWFE-SCF 法を用いて、タンパク質分子機能に関する以下の理論的研究を行った。 微生物型ロドプシンの光感受性イオン輸送機構:受動輸送をするアニオンチャネル GtACR1 及び能動輸送をするアニオンポンプ NpHR のプロトン状態が異なる複数の状態に対して、光活性化チャネル開構造のイオン配置とタンパク質構造のモデリングを行った。その結果、プロトン化状態の変化に伴う結合塩素イオンの大きな移動、及び新たな塩素イオンの結合を観測した。このようなチャネル内への複数のイオンの結合は、神経細胞のカリウムイオンチャネルなどにも見られており、高いイオン輸送効率に重要な役割を果たしていることを強く示唆している。 光合成系II(PSII)の酸素分子生成及びプロトン排出機構:酸素分子生成サイクル(Kok サイクル)のマンガンクラスター 3 電子酸化状態(S3 状態)の構造モデリングを行った。その際、複数のプロトン化状態の構造モデリングを行うことにより、プロトン移動を伴う酸化状態変化の反応経路モデルを得た。また、分極補正項を計算する手法の開発を行った。 SARS-CoV-2 Mpro の共有結合型阻害剤結合:Warhead 部位が異なる3 個の阻害剤分子候補に関して、共有結合形成前後の QM/MM 自由エネルギー構造最適化を行った。その結果、Warhead 部位の違いにより、阻害状態生成における共有結合エネルギーの寄与が大きく異なることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微生物型ロドプシンの光感受性イオン輸送機構に関しては、本研究で見出したチャネル内の酸性残基のプロトン化状態の変化による塩素イオン配置の変化や新たなイオンの結合は、今後のイオン輸送効率の解明のための自由エネルギープロファイル計算の基礎を成すものであり、研究は順調に進展している。PSII に関しても、最初のプロトン排出を行う重要な状態の構造モデルを得ることに成功し、今後の自由エネルギー計算によるプロトン排出の分子機構の解明や、S4 及び S0 状態のモデリングによる Kok サイクル全体のエナジェティクス解析への道が開かれた。また、SARS-CoV-2 Mpro に関しても、複数の阻害剤分子の構造モデルが得られており、今後の自由エネルギー計算による共有結合形成阻害の分子機構解明への礎が築かれた。 一方、当初予定していた HIV プロテアーゼの薬剤耐性の研究に関しては、人的リソース不足の問題で若干進展が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
微生物型ロドプシンの光感受性イオン輸送機能:GtACR1 及び NpHR に対して、イオン輸送のエナジェティクスを明らかにする。これまでの計算で得られた複数の異なるチャネル内酸性側鎖のプロトン化状態に対して、アンブレラサンプリング自由エネルギー法を用いて、チャネル内におけるイオン移動の自由エネルギープロファイルを計算する。また、実験で用いられているいくつかの変異体に対して QM/MM RWFE-SCF 法を用いて自由エネルギー構造最適化計算を行う。 光合成系II(PSII)の酸素分子生成及びプロトン排出機構:S1 及び S2 状態に対して、マンガンクラスターの酸化還元電位、及びプロトン化状態を決定するために、分極補正項を計算する手法の開発を継続して行い、それを用いて自由エネルギーを計算する。また、S4 及び S0 状態の複数のプロトン化状態に対して自由エネルギー構造最適化を行う。 HIV プロテアーゼの薬剤耐性:QM/MM RWFE-SCF 法を用いて、天然基質分子のペプチド加水分解反応の中間状態と終状態の自由エネルギー構造最適化を継続して行い、反応にかかわる準安定状態の構造モデルを得る。さらに、それらの準安定状態間の遷移状態を決定し、Bennett acceptance ratio (BAR)法により反応の自由エネルギープロファイルを得る。 SARS-CoV-2 Mpro の共有結合型阻害剤結合:Warhead 部位が異なる3 個の阻害剤分子候補に関して、これまでに計算で得られた自由エネルギー最適化構造に対して、BAR 法を用いて決定された共有結合前後の構造の間の自由エネルギー差を計算し、それぞれの薬効に対する共有結合と非共有結合の役割を解析する。また、水中の阻害剤構造を QM/MM自由エネルギー構造最適化計算により求め、共有結合生成前の結合自由エネルギーの計算を行う。
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