研究課題/領域番号 |
23K23863
|
補助金の研究課題番号 |
22H02600 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2023-2024) 京都大学 (2022) |
研究代表者 |
三好 知一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (60378841)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
|
キーワード | ゲノム / レトロトランスポゾン / LINE-1 / 自然免疫 / L1 / 転移 / DNA修復 |
研究開始時の研究の概要 |
L1は転写された自身のRNAをDNAに逆転写することでゲノム上を転移するレトロトランスポゾンである。L1の転移は遺伝子破壊などゲノム不安定化を誘導し様々な疾患原因ともなる。しかし、L1の転移プロセスはまだよくわかっていないため、L1が引き起こすゲノム変化の機序もまだ解明されていない。そこで本研究はプロテオミクス解析と遺伝学的スクリーニングの手法を組み合わせてL1の制御因子を単離し、それらの機能解析を積み重ねることで、未解明のL1転移過程を明らかにする。これにより、将来的には転移を人為的に制御する手法の開発や、L1が関与する疾患・ゲノム不安定化の抑制にむけた応用研究にもつながることが期待される。
|
研究実績の概要 |
Long INterspersed Element-1(LINE-1またはL1)は、転写された自身のRNAをDNAに逆転写することでゲノム上を移動(=転移)するレトロトランスポゾンである。L1の転移は遺伝子破壊、染色体欠失や転座などゲノム不安定化を誘導し、様々な疾患原因ともなる。しかし、L1の転移プロセスとその制御因子はまだよくわかっていないため、L1が引き起こすゲノム変化の機序もまだ解明されていない。そこで本研究は、プロテオミクス解析と遺伝学的スクリーニングの手法を組み合わせてL1の制御因子を単離し、それらの機能解析を積み重ねることで、未解明のL1転移過程を明らかにする。本研究では、主に下記3つの研究課題に取り組んでいる。 1.核内におけるL1のゲノム挿入機構の解明 2.細胞質におけるL1複合体制御機構の解明 3.遺伝学的スクリーニングによる転移制御因子の探索 本年度は、1-3において研究成果が得られた。1では、DNA ligaseのノックアウト細胞株が取得されるとともに、その細胞株におけるL1転移頻度が顕著に低下することがわかった。2では、HELZ2 RNAヘリカーゼの機能解明に加えて、HERC5というウイルス抑制因子は標的タンパク質にISG15という小分子を付加してウイルス複製を阻害することが報告されているが、このISG15付加反応を介さずにL1転移を抑制することが示された。さらにL1複合体に含まれる他の自然免疫応答因子群についても網羅的に調べたところ、予想とは反対に転移を促進する因子の存在も示唆された。自然免疫=レトロトランスポゾンの抑制という単純な図式では可能性が浮上してきた。今後もこれらの研究を積み重ねることで、将来的には転移を人為的に制御する手法の開発や、L1が関与する疾患・ゲノム不安定化の抑制にむけた応用研究にもつながることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
L1は、転移に必要なORF1とORF2の2つの蛋白質をコードする。L1は転写後、RNA結合蛋白質であるORF1が細胞質でL1 RNAに結合してribonucleoprotein (RNP)複合体を形成し、その後、逆転写酵素ORF2を伴い核内に移行し、最終的にゲノム内に侵入すると考えられている。これまでに、HeLa細胞から精製したL1 RNP複合体に対するプロテオミクス解析からすでに複数のインターフェロン応答遺伝子産物が同定している。さらにこれらのインターフェロン応答遺伝子産物は、顕著にL1の転移を抑制する機能をもつことがわかった。本年度は、新規に同定したこれらの因子の中から、HERC5および網羅的な自然免疫応答因子の解析に着手したところ、HERC5によるL1抑制のメカニズムが徐々にわかってきたことに加え、未解析であった自然免疫応答因子の中にはL1転移をむしろ促進する因子が存在することも示唆された。また1)核内におけるL1のゲノム挿入機構の解明、および3)遺伝学的スクリーニングによる転移制御因子の探索、においてもそれぞれ着実に進展し、その成果を学会等で報告した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の予定について課題ごとに記す。 1.核内におけるL1のゲノム挿入機構の解明:L1転移を制御する因子、特にDNA修復因子に着目し、それぞれのノックアウト細胞株を作製した。これらの細胞に用いて、生化学的な解析によるL1複合体の解析および転移頻度の測定結果をとりまとめる。 2.細胞質におけるL1複合体制御機構の解明:ORF1pと相互作用する自然免疫応答因子、特にHERC5を中心に解析を進めるとともに、未着手の因子にも解析範囲を広げて、L1と宿主の拮抗関係とその動的制御機構についての理解を深める。 3.遺伝学的スクリーニングによる転移制御因子の探索:これに用いるためのCas9恒常発現株を取得したので、sgRNAライブラリーの導入と候補遺伝子の探索へとつなげる。
|