研究課題/領域番号 |
23K23865
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補助金の研究課題番号 |
22H02602 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 群馬大学 (2024) 大阪大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
二村 圭祐 群馬大学, 未来先端研究機構, 教授 (00462713)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | RNAスプライシング / 転写 / 癌 / 遺伝子発現制御 / 遺伝子発現 / 腫瘍 |
研究開始時の研究の概要 |
複数の転写プロセスの精緻な制御によりmRNAは合成される。スプライシング因子の高発現によって異常なスプライシングバリアントが合成され、癌は高悪性化する。一方で、スプライシング因子の摂動がスプライシングパターンを著変せず、遺伝子発現プロファイルを大きく変換する例がある。しかし、スプライシング因子が転写を直接制御するかは不明である。本研究では、腫瘍増悪化過程におけるスプライシング因子による転写制御という新規な概念を確立する。本研究は、転写プロセスが連続反応ではなく、各反応が相互に調節することで遺伝子発現を一体的に制御することを提唱し、転写研究の新たな学術的基盤形成に資することを目的とする。
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研究実績の概要 |
複数の転写プロセスの精緻な制御によりmRNAは合成される。スプライシング因子の高発現によって異常なスプライシングバリアントが合成され、癌は高悪性化する。一方で、スプライシング因子の摂動がスプライシングパターンを著変せず、遺伝子発現プロファイルを大きく変換する例がある。しかし、スプライシング因子が転写を直接制御するかは不明である。本研究では、腫瘍増悪化過程におけるスプライシング因子による転写制御という新規な概念を確立する。本研究は、転写プロセスが連続反応ではなく、各反応が相互に調節することで遺伝子発現を一体的に制御することを提唱し、転写研究の新たな学術的基盤形成に資することを目的とする。これまでに転写制御因子はスプライシング制御に関与することは知られているが、スプライシング因子が転写を直接制御するかは不明である。申請者らはこれまでの研究においてスプライシング因子SF3B2がアンドロゲンレセプターARのpre-mRNAに直接結合し、選択的スプライシングを制御し、去勢抵抗性前立腺癌を増悪化することを見出してきた。SF3B2の高発現は去勢抵抗性前立腺癌のみでなく他の腫瘍においても予後不良因子であるが、前立腺癌以外の腫瘍ではARを発現していない。そこで、本年度において頭頸部腫瘍に着目し、SF3B2の高発現が腫瘍を増悪化する機序の解明に取り組んだ。その結果、SF3B2がクロマチンに結合し、クロマチン制御因子CTCFの活性を増加させることで、転写を活性化することを見出した。これにより腫瘍細胞の増殖が亢進することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
去勢抵抗性前立腺癌の高悪性化因子として申請者らが同定したスプライシング制御因子SF3B2が頭頸部腫瘍において、その高発現が予後不良につながる機序の解明に取り組んでいる。その結果、SF3B2のCUT&Tag解析を行った結果、SF3B2はクロマチンに結合することがわかった。SF3B2の形成する複合体を精製し、質量分析計によってSF3B2が相互作用する因子を同定した。その結果、SF3B2はクロマチン構造を制御する因子であるSMC1Aと相互作用することがわかった。さらにSMC1Aはコヒーシンの構成因子であり、クロマチン制御因子CTCFと相互作用することが知られている。そこで、SF3B2がSMC1AやCTCFと同じクロマチン領域に結合するか検討した。SMC1AとCTCFのChIPseqを行った結果、これらの因子とSF3B2の結合領域は重なる部分があるということがわかった。さらにSF3B2を高発現させて、SMC1AとCTCFのChIPseqを行ったところ、SF3B2の高発現によってこれらの因子のクロマチンへの結合量が増加することがわかった。またそれに伴い、近傍遺伝子の転写が増加することがわかった。これらの結果からSF3B2が転写を制御する機能を持つことを見出した。また、SF3B2のRNAへの結合領域を簡潔に同定可能な方法の開発にも取り組んでいる。RNA編集活性があることが知られている酵素のリコンビナントタンパク質を4種類作製したが、いずれの酵素もDNAのみに編集活性を示した。現在、酵素の改善を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きRNA編集酵素を利用したRNA結合部位同定法の開発を進める。一方で、これまでの研究からSF3B2がクロマチン構造制御因子と相互作用し転写を制御することを見出した。そこで、SF3B2がクロマチンの高次構造を制御するか検証する。そのために、連続的にDNAバーコードを付加することで、複合体に含まれるDNAの末端に同一のバーコードを付加するSPRITE法を用いる。この方法とDNAバーコード付加抗体を組み合わせることで、クロマチン構造とタンパク質の結合位置情報を同時に取得可能な方法になると考える。この方法を開発することで、SF3B2複合体がクロマチン高次構造をどのように制御するか明らかにすることを目指す。
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