研究課題/領域番号 |
23K23868
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補助金の研究課題番号 |
22H02605 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2024) 東京大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
栗原 志夫 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 客員研究員 (60455342)
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研究分担者 |
蒔田 由布子 前橋工科大学, 工学部, 教授 (80443026)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 光応答 / 翻訳変化 / 転写開始点 / 翻訳開始点 / リボソームプロファイリング / 光受容 / NMD / 遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝子から転写された mRNA はタンパク質へと翻訳される一方、用を終えたmRNA や異常な mRNA は選択的に分解される。加えて翻訳も分解もされずに保存されるmRNA も存在する。しかし、植物が成長するにつれて変化する mRNA の「翻訳」か「分解」か「保存」かの運命決定のメカニズムは不明な部分が多い。本研究では、成長段階で変化する転写・翻訳開始点に依存的な mRNA 運命決定の解明を目指す。本研究から、植物が成長していく過程において個々の遺伝子の発現が多様性に富んで活躍することを示す成果が得られると確信する。
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研究実績の概要 |
植物は暗所で発芽し、光を受けて形態形成を変化させながら成長する。その成長につれて変化する mRNA の「翻訳」か「分解」か「保存」かの運命決定のメカニズムは不明な部分が多い。先行研究によって、暗所で発芽したシロイヌナズナ幼苗が青色光を受容すると、複数の遺伝子において転写開始点と翻訳開始点の位置変化が起こることがわかった。本研究では、成長に伴い変化する転写・翻訳開始点に依存的な mRNA 運命決定の解明を目指すことを目的とした。 本年度では、暗所で発芽したシロイヌナズナ幼苗を青色光下に露光させてから0、3、24時間後のCAGE、RNA-seq、Ribo-seq(モノソームプロファイリングとダイソームプロファイリング)、TI-seqの解析によるシークエンスデータを取得してきた。さらに、ISO-seq解析を行い、完全長転写物の検出も行ってきた。それらの粗データをシロイヌナズナゲノムにマッピングを行い、ゲノムブラウザを用いて視覚的に検査することによって、各データの信頼性を確認した。 ISO-seqデータから、271か所のORFを二つ以上もつポリシストロニックリードスルーmRNAを転写するゲノム部位を同定した。それらの一部は、upf1-1変異体において野生型植物よりも多く検出された。さらに、それらのゲノム部位のうち158か所において、遺伝子間スプライシングが検出された。リードスルー転写や遺伝子間スプライシングは青色光の照射に応答して検出される傾向がみられた。シークエンスデータの解析から、ポリシストロニックmRNA上に存在する2つ目のORFがほとんど翻訳されていないことがわかった。これらの結果から、ポリシストロニックmRNAは、1つ目のORFの終止コドンと2つ目のORFの翻訳状態が運命決定因子となり、NMDによって分解されることがわかった。この研究成果を、原著論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
暗所で発芽したシロイヌナズナ幼苗(野生型とNMD欠損変異体であるupf1-1)を青色単色光下に露光させてから0時間後、3時間後、24時間後のCAGE、RNA-seq、Ribo-seq(モノソームプロファイリングとダイソームプロファイリング)、TI-seqの各解析によるシークエンスデータを取得できた。さらに、ISO-seq解析を行い、完全長転写物の検出も行ってきた。それらの粗データをシロイヌナズナゲノムにマッピングを行い、データの信頼性を確認することができた。一部のデータから、複数のポリシストロニックmRNAが翻訳依存的にNMDによって分解されることを明らかにすることができた。つまり、当初の予定通り研究が進んだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
暗所で発芽したシロイヌナズナ幼苗を青色単色光下に露光させてから0時間後、3時間後、24時間後のCAGE、RNA-seq、Ribo-seq(モノソームプロファイリング)、TI-seqの各解析によるシークエンスデータを取得してきた。そこでは野生型植物とRNA品質管理機構NMDの機能欠損変異体であるupf1-1についてデータを取得した。今後は、これらのデータを精査することによって転写開始点、翻訳開始点、RNA蓄積量および翻訳量をゲノムワイドに明らかにし、成長に連れて起こる転写開始点の変化に連動して翻訳開始点が変化する遺伝子群を同定していく。また、上記と同時に同一サンプルから取得したRibo-seq(ダイソームプロファイリング)によって得たシークエンスデータを解析することで、リボソームの停滞位置と可能であれば成長に伴うそれらの変化をゲノムワイドに同定する。そして、mRNA量と翻訳量の変動とリボソームの停滞の関係性を調べていく。upf1-1変異体では、翻訳開始点に従う終止コドンの位置によって、NMDの標的となる転写物の蓄積の増加が見られると考えられる。そこで、翻訳領域、翻訳開始点とNMDの3者の関係性についても明らかにしていく。上記に記載した判断をより確信的にするために、Nanoporeシークエンシングによる全長転写物のシークエンスデータを取得し、どの両開始点情報がどの転写物に由来するのかを推定していく計画である。
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