研究課題/領域番号 |
23K23877
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補助金の研究課題番号 |
22H02614 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 耕三 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (00304452)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 癌 / 細胞・組織 / 染色体 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、染色体異数性を示すがん細胞では、紡錘体上での染色体の往復運動(オシレーション)が減弱しており、これが染色体不安定性の一因であることを明らかにした(J Cell Biol 2021)。本研究では、この染色体オシレーションの減弱の原因を明らかにする。また染色体オシレーションの制御に重要なモーター分子Kif18Aは、紡錘体形成にもはたらき、異数性細胞の増殖に重要であることが報告されている。そこでKif18Aのこの2つの機能の関連について解析し、正常2倍体細胞と異数性がん細胞での作用の違いを解明する。本研究の成果は、がん細胞の染色体不安定性の成因の理解に寄与するものと考えられる。
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研究実績の概要 |
1. がん細胞特異的なKif18A阻害への感受性の原因の検討 正常2倍体細胞(RPE-1細胞(網膜色素上皮細胞)、MCF10A細胞(乳腺上皮細胞))・異数性がん細胞(MDA-MB-231細胞、HCC1806細胞(乳がん細胞))で、Kif18Aの機能を阻害剤(BTB-1, AMG650)やsiRNAによって抑制し、細胞増殖に与える影響を調べた。その結果Kif18Aの機能の抑制による細胞増殖は、異数性がん細胞でより強く抑制されることがわかった。またこれらの細胞の細胞分裂期でのKif18A阻害の効果を、ライブセルイメージングにより検討した。その結果、Kif18A阻害により、細胞分裂期の時間の延長と染色体分配異常・多極紡錘体の増加が認められたが、これらはいずれも異数性がん細胞でより顕著であった。これらの結果より、異数性がん細胞特異的にKif18A阻害による増殖抑制、紡錘体形成・染色体分配異常が見られることを確認した。 2. 4倍体細胞でのKif18A阻害の影響の検討 HCT116細胞のKif18A遺伝子にCRISPR/Cas9法によりAID (auxin-inducible degron)タグを付加した細胞を作成し、オーキシン依存性に短時間でKif18Aの発現が抑制されることを確認した。さらに作成した細胞をサイトカラシンBで処理して細胞質分裂を阻害することにより、4倍体化した細胞を作成した。これらの細胞でKif18Aの発現を抑制し、細胞分裂期への影響をライブセルイメージングにより検討した。その結果、細胞分裂期の時間の延長と染色体分配異常・多極紡錘体の増加が認められたが、これらはいずれも4倍体細胞でより顕著であった。この結果より、多倍体細胞特異的にKif18A阻害による紡錘体形成・染色体分配異常が見られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究により、1. がん細胞特異的なKif18A阻害への感受性の原因の検討、2. 4倍体細胞でのKif18A阻害の影響の検討、の両方で進捗が見られた。1.については、正常2倍体細胞と異数性がん細胞で、Kif18Aの機能を阻害剤で抑制することにより、異数性がん細胞特異的にKif18A阻害による増殖抑制、紡錘体形成・染色体分配異常が見られることを確認できた。2.については、Kif18A遺伝子にAIDタグを付加したHCT116細胞と、これを4倍体化した細胞を作成し、Kif18Aの発現抑制の影響を観察することで、多倍体細胞特異的にKif18A阻害による紡錘体形成・染色体分配異常が見られることを確認できた。これらの結果は、異数性・多倍体がん細胞特異的なKif18A阻害の細胞増殖・紡錘体形成・染色体分配への影響を示すものであり、その背景にある原因を明らかにする足がかりとなる本研究課題における重要な進捗と考えられる。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1. Kif18Aの紡錘体形成と染色体オシレーション制御の分子機構の解明 RPE-1細胞と、MDA-MB-231細胞に種々のKif18A 変異体 (欠失変異体およびモーター活性部位・リン酸化部位などの変異体)を発現させ、内在性のKif18Aの発現を抑制した際の、紡錘体形成・染色体オシレーションを調べる。これにより、それぞれの機能に関与する部位を特定する。またKif18Aの過剰発現の影響についても調べ、なぜ異数性がん細胞のみで紡錘体形成異常が起こるのかを明らかにする。 2. Kif18A阻害によるがん細胞の増殖抑制効果の検討 がん細胞において、Kif18Aを種々の濃度のKif18A阻害剤により阻害し、コロニーアッセイ及びCCK-8アッセイにより増殖抑制効果を検討する。これにより、染色体不安定性の程度とKif18A抑制による増殖抑制効果との関連を解析する。また乳がん由来のオルガノイドにおける、Kif18A阻害剤による増殖抑制効果を検討することにより、生体内のがんに近い状態でのKif18A抑制の効果を調べる。また乳がん由来のオルガノイドにKif18A阻害剤を加えたときの紡錘体形成・染色体分配への影響を、ライブセルイメージングにより観察し、通常の2次元培養でのKif18A抑制の効果と比較することにより、生体内に近い3次元環境下でのKif18A抑制効果を明らかにする。種々のKif18A阻害剤の効果を比較し、増殖抑制効果や紡錘体形成・染色体分配への影響の違いを検討する。
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