研究課題/領域番号 |
23K23884
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補助金の研究課題番号 |
22H02621 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 厚 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (00264606)
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研究分担者 |
仁田 亮 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40345038)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 微小管 / 細胞極性 / MTCL / ゴルジ体 / 樹状突起 / 極性 / droplet / 液液相分離 / 脳疾患 / MTCL2 / 小胞輸送 / 小脳顆粒細胞 / 神経細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
私たちの身体は、筋肉細胞・神経細胞・免疫細胞など多様な形と働きを持つ約300種類の細胞から出来上がっています。これらの細胞がそれぞれに固有の働きを示すためには、細胞内の構造や物流を支える微小管という「細胞骨格線維」をそれぞれ固有に配置し組み立てることが必要です。私たちは、細胞内の物流センターであるゴルジ体を足場にしながら、微小管の集合構造をコントロールする新たなしくみ、タンパク質を見出しました。本研究では、この仕組みを分子レベルで解明することを通じて、ヒトの身体が出来上がる仕組みの基本原理、および、その異常に起因する疾患の発症原因の研究を進めています。
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研究実績の概要 |
1)「MTCL2が小脳顆粒細胞の樹状突起伸長を促進する機構の解明」-- 小脳顆粒細胞・樹状突起が多極性化する過程ではゴルジ体がそれまでの双極性に伸長していた樹状突起の根元から核の上部に移動することを発見した。そしてこの過程では、「核を囲む微小管cage」が発達するとともに、MTCL2がゴルジ体とこの微小管cageとの結合を媒介していることを示す結果を得た。これらは「MTCL2が樹状突起の根元からゴルジ体を隔離することによって、樹状突起の伸長を多極化させている」という全く予想されていない可能性を示唆する結果であった。 2)MTCL2と同様にゴルジ体に局在する微小管制御タンパク質「MTCL1の微小管結合・安定化メカニズムの生化学的解明」を大きく進めることに成功した。MTCL1が有する2つの微小管結合領域のうちC末端側領域の精製タンパク質は、切断因子を反応させた微小管側面の損傷部位に集積し、その部位からの微小管の脱重合を阻害することを発見した。一方、天然変性領域であるN末端側微小管結合領域の精製タンパク質は単独で液液相分離によるdropletを形成し、その内部にチューブリンを集積させる能力を有することが明らかとなった。MTCL1はこれら2つの微小管結合領域の物理化学的特性を統合することによって、損傷を受けた微小管を保護する役割を果たしている可能性が示唆された。 3)MTCL1、MTCL2とは分子中央のコイルドコイル領域のみに相同性を示し、微小管結合領域を持たない「変わり種のMTCLメンバー、MTCL3」に関する研究が思わぬ展開を見せた。MTCL3のC末端側の特定のアミノ酸変異がヒト幼児の脳発達・機能障害に見られるという情報がテキサス大の共同研究者からもたらされたことをきっかけに始まった国際的な共同研究の中で、これらの変異が「MTCL3の細胞内におけるdroplet様の凝集物形成を促進する」ことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の申請では、MTCLタンパク質のうちMTCL2に特に注力して研究を進める予定ではあったが、「MTCL2が小脳顆粒細胞の樹状突起伸長を促進する機構の解明」という課題以外は、研究担当学生の卒業や研究の困難さなどに起因して大きな展開は作り出せなかった。ただ、並行して進めていたMTCL1、およびMTCL3に関する研究において非常に興味深い成果が出て、全体として本申請研究は大きく進展したと言える。
想定していなかった困難や実験事実に遭遇するのは研究を進める上での常である。そうした中で、概要に記したように「MTCLタンパク質の研究」という点で予想以上に順調な結果が種々得られた。この点を踏めて上記のような研究到達度の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
1)「MTCL2が小脳顆粒細胞の樹状突起伸長を促進する機構の解明」 --- ①核上部へのゴルジ体の移動が微小管cageに依存していることを、核膜と微小管の連結を担うとされているLINC複合体の機能阻害実験を行うことによって確証する。②核上部にゴルジ体が隔離されるとなぜ樹状突起の伸長が多方向に変化するのかを明らかにするために、glycosyltransferaseなどのゴルジタンパク質を蛍光タンパク質と融合させたプローブを用いたライブイメージングを進める。また、③ EB3-GFPを発現させた野生型の小脳顆粒細胞を用いて微小管の動態をライブイメージング解析により明らかにし、各発達段階における神経突起/樹状突起内の微小管の方向性や動的不安定性についての基礎データを取る。 2)① MTCL1のC末端微小管結合領域が、切断因子以外によって損傷を与えられた微小管に対しても損傷部位への集積と微小管の安定化を示すのかを確認する。②MTCL1のN末端とC末端領域を短いコイルドコイル領域でつなげたミニMTCL1の精製タンパク質を作成し、これがC末端領域単独よりも高い微小管安定化活性を示すことを明らかとする。 3)① GFPと融合させたMTCL3を用いることによって、MTCL3が形成する凝集物内部の流動性を調べ、この凝集物が実際に液液相分離によって形成されたdropletであるのかどうかを検討する。② これまではHeLa-K細胞で行っていた外来性MTCL3の発現と凝集物形成の解析を神経初代培養細胞に対して行い、脳疾患に対して示唆されているMTCL3の変異およびそれが促進する凝集物形成が、神経細胞の生存や機能にどのような影響を与えるのかを調べる。
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