研究課題/領域番号 |
23K23902
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補助金の研究課題番号 |
22H02639 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿部 光知 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20343238)
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研究分担者 |
賀屋 秀隆 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80398825)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | シロイヌナズナ / 花成 / フロリゲン / FT / FD |
研究開始時の研究の概要 |
植物の栄養成長から生殖成長への相転換(花成)は、フロリゲン(FTタンパク質)によって促進される。フロリゲンを介した花成制御機構は、葉における「環境情報の感知とFTの産生」及び茎頂での「FTの受容と花芽形成の開始」、そして両者を繋ぐ「FTの輸送」の各素過程から成り立つ。分子的理解の進展がみられる「産生」及び「受容」に対し、「輸送」過程の理解は進んでいない。本研究課題では、独自の in vivo フロリゲン複合体可視化手法を活用し、「FT輸送機構」と「内的外的環境要因」との連関を解明し、フロリゲン機能の本質である輸送の分子基盤を明らかにする。
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研究実績の概要 |
植物の栄養成長から生殖成長への相転換(花成)は、花成ホルモン・フロリゲン(FTタンパク質)によって促進される。フロリゲンを介した花成制御機構は、葉における「環境情報の感知とフロリゲンの産生」及び茎頂での「フロリゲンの受容と花芽形成の開始」、そして両者を繋ぐ「フロリゲンの輸送」の各素過程から成り立つ。本研究課題では、研究代表者が新たに見出した「フロリゲン輸送障壁」に注目し、独自の可視化手法を活用することによって、フロリゲン機能の本質である細胞非自律性の分子基盤を明らかにすることを目指す。そのために、本研究課題では 研究項目1 : FT輸送経路の検証とFT輸送マシナリーの同定 研究項目2 : FT輸送障壁制御に関与する内的外的環境要因の解析 研究項目3:ゲノム編集技術を用いた篩部伴細胞におけるFT輸送制御機構の解明 を計画する。申請者独自の可視化手法ならびに、既報のFT輸送制御配列に関する知見を活用し、茎頂におけるFT輸送経路/マシナリーの詳細な解析を実施する。加えて、植物体内外からの環境要因が「フロリゲン輸送障壁」を制御する分子機構についても、その詳細な理解を目指していく。現在までに、フロリゲン可視化系統シロイヌナズナを用い、花成誘導後の茎頂においてFTタンパク質が原形質連絡を介して茎頂内部へと輸送されていることを示すことに成功した。今後、環境情報との連関を含め、更なる解析を加えることによって「フロリゲン輸送障壁の実体」に迫る計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和5年度は、「研究項目1: FT輸送経路の検証とFT輸送マシナリーの同定」を中心に研究を実施し、pSUC2::S-FT; gFD::L-FD、pSUC2::S-FT; pHSP::L-FD等のフロリゲン可視化系統シロイヌナズナを用い、「いつ」「どこを通って」FTが輸送されているのかを明らかにした。現在までに栄養成長期茎頂で観察される輸送障壁の実態に関して、FT輸送と原形質連絡機能との連関が明らかになりつつある。今後、環境要因による制御機構に関して更なる解析を加えることによって、栄養成長期茎頂基部で観察される「フロリゲン輸送障壁の実体」に迫る計画である。 「研究項目2 : FT輸送障壁制御に関与する内的外的環境要因の解析」に関しては、現在までに低温環境によるFT輸送の遅滞をはじめ、促進的に働く環境要因も含め複数の候補要因を同定している。「研究項目1」で明らかにした原形質連絡機能との連関を含め、今後の研究の進展に繋げていく。 また、研究項目3として、篩部伴細胞におけるFT輸送制御に関与するfe-1変異体にも注目した。研究分担者である賀屋准教授を中心に、FT輸送制御候補遺伝子のプロモーター領域に存在するFE結合配列(既報)をゲノム編集によって欠失させた植物を作出した。また、FTプロモーターに存在する日長依存的な花成誘導に必須なcis-エレメントに関して、ゲノム編集により塩基レベルでの変異導入に成功した。これまでに、CONSTANS結合配列における1塩基変異が強い花成遅延表現型をもたらすことから、FT転写制御配列に対する解析も研究対象に加えていくことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、「研究項目1: FT輸送経路の検証とFT輸送マシナリーの同定」と「研究項目2 : FT輸送障壁制御に関与する内的外的環境要因の解析」で得られた研究成果を関連づけることで、研究成果をまとめ、論文発表に取り組む。これまでの研究成果によって明らかになったFT輸送制御に関わる原形質連絡機能に注目し、低温シグナルをはじめとする内的外的環境要因とFT輸送制御機構との関わりを明らかにする。また、研究項目1に関しては、既報のFT輸送制御配列の情報をもとにアミノ酸配列に変異を導入した、変異型FTの可視化も大きな成果を生んでいる。現在までに、構造的に関連のない少なくとも二つの輸送制御ドメイン(領域)を同定している。原形質連絡を介した輸送マシナリーとの関わりも含め、さらなる解析を進めていく計画である。研究項目3に関しては、引き続きゲノム編集シロイヌナズナを作出するとともに、作出した植物を用いて分子的な制御機構を評価する計画である。
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