研究課題/領域番号 |
23K23904
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補助金の研究課題番号 |
22H02641 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 宗隆 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50202130)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 植物器官新生・再生 / 脱分化 / RNAプロセシング / 核小体 / ミトコンドリア / 細胞活動基盤拡充 / 植物ホルモン / TOR経路 |
研究開始時の研究の概要 |
植物器官の新再生に際して、あるいはそれに先行する脱分化に伴って起きる劇的な細胞の活動基盤の拡充について、その仕組みと意義を、大規模なRNAプロセシング(プレmRNAスプライシング、プレrRNAプロセシング、ミトコンドリアRNAプロセシング)の発動に着目して解き明かす。そのために、シロイヌナズナのプロセシング因子の温度感受性変異体や、トレニアの直接シュート再生系を含む様々な組織培養系を駆使して、器官新再生時のプロセシングおよび関連現象の動態、プロセシング因子の協調的発現制御、プロセシング事象内・事象間相互関係による協働を追究していく。
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研究実績の概要 |
植物器官の新生・再生を支える細胞の活動基盤の拡充について、RNAプロセシングの発動に着目し、以下の解析を行なった。 シロイヌナズナのカルス誘導系、維管束分化誘導系(VISUAL)、トレニアの直接シュート再生系において、脱分化に伴うrRNA生合成の活性化をEU取り込みによって捉えるとともに、核小体の発達を定量的に記載した。また、各培養系で植物ホルモン条件間の比較や組織間の比較から、核小体発達に関わる要因の一端を明らかにした。さらにTOR阻害剤・活性化剤を用いた実験により、どの培養系においても核小体の発達にTOR経路が関与することを示した。シロイヌナズナでは、プレrRNAプロセシング不全が引き起こす核小体ストレス応答についても研究を進め、DNA損傷応答との対比により、応答経路の特徴づけを行った。このほか、トレニアのシュート再生の遺伝学的解析に向け、突然変異を誘発したトレニアから自殖系統群を樹立した。 ミトコンドリアのRNAプロセシングに関しては、シロイヌナズナの温度依存的側根帯化変異体を用いた解析から、ミトコンドリアRNAの編集やポリA分解が正常な側根原基形成に重要であること、RNA編集とポリA分解が密接に関連することなどがわかっていた。本年度はこの関連をさらに追究し、ccb3 mRNAの特定箇所の編集不全がポリA分解を抑制してccb3の大域的なRNA編集レベルを低下させることや、これらのプロセシングの異常はチトクロムcの減少の結果として成長・発生に影響することを明らかにした。また、RNA編集の温度感受性変異体の一つrrd2に関し、新たにサプレッサー変異体を単離して、MutMap解析により原因変異の候補を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、シロイヌナズナのカルス形成、カルスからのシュート再生、維管束分化、トレニアの直接シュート再生を実験系として、器官新再生や脱分化に際して細胞活動基盤の充実に関わると考えられる基本的なRNAプロセシング(プレrRNAプロセシング、プレmRNAスプライシング、ミトコンドリアRNAプロセシング)と細胞内構造変化(核小体の発達、ミトコンドリアの増強、細胞質の充実など)の関係、RNAプロセシング間の関係を解析していくことを計画している。特定の新再生・脱分化現象あるいは特定のRNAプロセシングについて掘り下げる個別の解析のほか、全ての現象・事象を横断するような体系的調査も計画の重要な柱である。このうち前者の個別解析は、一部で遅れているものの、予想以上に進んでいる面もあり、全体としては着実に前進している。後者の体系的調査は昨年度まで停滞していたが、計画を見直して解析対象とする現象を整理し、とくに脱分化に的を絞ったことで進展し始め、例えば核小体の発達についてはかなりデータが揃ってきている。総合すると、研究は概ね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現象・事象横断的な体系調査については、トレニアの直接シュート再生、シロイヌナズナのカルス形成/カルスからのシュート再生、シロイヌナズナの維管束分化の3つを対象に、脱分化時の核小体発達の調査をまず完遂する。ついで、これを軸としてRNAプロセシング、シグナル伝達などに範囲を広げて解析を行ない、俯瞰的な分析に十分なデータを集積する。これまでの研究から脱分化において重要な役割を担うことが示されたTOR経路については、植物ホルモンとの関係を含め、とくに重点的に解析していく。 プレrRNAプロセシングやミトコンドリアRNAプロセシングの個別解析は、当初の計画に沿って進める。また、器官新再生・脱分化に伴うミトコンドリアの動態を観察し、プレrRNAプロセシング活性化、ミトコンドリアRNAプロセシング活性化、核小体発達、ミトコンドリア増強の相互関係の解析に着手する。その他、シロイヌナズナのシュート再生にはたらくATA結合タンパク質関連因子BTAF1の解析を再始動すること、プレmRNAスプライシングと他の事象との関わりについてスプライシング関連変異体を用いた解析を行うことも予定している。
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