研究課題
基盤研究(B)
多くの運動性の光合成微生物は光走性(光源方向へ(正)、あるいはその逆方向(負)へ移動する性質)を示す。光合成生物にとって光は重要なエネルギー源だが、強すぎる光は活性酸素種(Reactive oxygen species, ROS)の産生をはじめとする光障害を引き起こす毒でもある。本研究は、モデル緑藻クラミドモナスが正の光走性を示すのが細胞内ROS量が多いときであるという意外な発見を端緒に、その制御分子機構と生理的意義を明らかにすることを目的としている。
我々は緑藻クラミドモナスの光走性の正負が細胞質の活性酸素種(ROS)量に応じて調節されることを明らかにした。これを可能にする分子機構は何か?そして、この制御機構には光合成生物にとってどのような生理的意義があるのか?これらの問題を、解明することが本研究の目的である。本年度は以下の3つの実験を柱に研究を遂行した。①2022年度に同定した、負の光走性を強く示す変異株の原因遺伝子はある種のキナーゼであるとわかった。そのターゲットの第一候補である光受容体のリン酸化状態を検証した。Phos-tagによるクラミドモナス全細胞タンパク質サンプルのリン酸化状態検証実験の条件検討を重ねた結果、この光受容体はターゲットではないことがわかった。今後リン酸化プロテオームなどを視野に入れたターゲット検証を行う。②ROSシグナルの可視化を試みたが、いくつかのセンサータンパク質がどれも発現誘導できなかった。先行研究で開発されたものを購入したものだが、発現ベクターのDNA配列には問題がなく、いまのところ原因がはっきりしない。今後導入条件検討を重ねるとともに、別のセンサーを使うことを検討する。③光走性が生残性に与える影響を、「野生株」「正の光走性しか示せない株」「負の光走性しか示せない株」「非運動性株」を用いて、致死的な強光下に日陰を設置して検証した。その結果、意外なことに株間で生残性の違いに大きな違いは見られなかった。今後光条件を再検討して、光走性の生理的意義を再検証する。
2: おおむね順調に進展している
ROSの可視化実験だけが多少滞っているが、他は当初予定していた実験がほぼ計画通りに、一部は計画より早く進行しており、総じて順調であると言える。
ROSシグナルの可視化については、予定していた先行研究で開発されたセンサータンパク質だけでなく、別のセンサーの導入も検討する。そのほかは2023年度に行った実験の延長を行うことで計画が進むと期待できる。
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