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B3転写因子による乾燥ストレス応答において機能するペプチド受容シグナルの制御機構

研究課題

研究課題/領域番号 23K23913
補助金の研究課題番号 22H02650 (2022-2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2022-2023)
応募区分一般
審査区分 小区分44030:植物分子および生理科学関連
研究機関東京理科大学

研究代表者

高橋 史憲  東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 准教授 (00462698)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
キーワード環境応答 / 植物ホルモン / タンパク質リン酸化 / 転写調節
研究開始時の研究の概要

植物ホルモン「アブシジン酸(ABA)」は、乾燥ストレス耐性獲得の要となる重要なホルモンである。申請者は、根から葉に乾燥ストレス情報を伝え、葉でのABA合成におけるキー酵素であるNCED3の発現を制御し、ABAを介した乾燥ストレス耐性獲得を制御するペプチド-受容体による長距離シグナルを明らかにしている。またNCED3の発現を制御するB3転写因子を報告している。本研究では、ペプチド-受容体の下流で機能するB3転写因子に着目し、転写因子をリン酸化するキナーゼの探索やリン酸化修飾による転写活性化機構、相互作用因子による転写調節を解析し、乾燥ストレス応答における細胞内の多段階的な分子制御機構を解明する。

研究実績の概要

乾燥ストレス応答におけるペプチド-受容体の下流で機能する細胞内分子制御機構の解明を目的として、ABA合成酵素の発現を制御するB3転写因子に着目し、その機能解析を行った。本年度は、B3転写因子がストレス依存的およびペプチド-受容体依存的に受けるリン酸化修飾部位のアミノ酸置換を行った過剰発現植物体を用いて解析を進めた。これまでの解析から、B3転写因子は3箇所のアミノ酸部位にリン酸化修飾をうけることを明らかにしている。それら各部位にリン酸化修飾を模倣するアスパラギン酸修飾、脱リン酸化修飾を模倣するアラニン置換を行ったコンストラクトを、シロイヌナズナ葉肉細胞から単離したプロトプラストに導入し、細胞内局在を解析した。その結果、アスパラギン酸、またはアラニンへのいずれの修飾置換を行ったコンストラクトにおいても、B3転写因子は常に核に局在することを明らかにした。またこの局在は、bam受容体変異体から単離したプロトプラスト内においても、同様の傾向を示すことを明らかにした。この結果は、B3転写因子の細胞内局在は、リン酸化修飾によるものではなく、他の核移行制御因子によってストレス依存的、およびBAM受容体シグナル依存的に制御されている可能性を示唆する。次に、リン酸化修飾部位のアミノ酸置換を行った過剰発現植物体を用いて、コントロール条件および乾燥ストレス処理条件下における、ABA合成酵素の発現変動を解析した。その結果、リン酸化修飾を模倣するアスパラギン酸修飾変異を3箇所、置換を行ったB3転写因子では、ABA合成酵素遺伝子の発現が、コントロール植物と比較して上昇していることを明らかにした。したがって、B3転写因子がうけるリン酸化修飾は、細胞内局在ではなく、転写活性化能を制御するために必要であることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

B3転写因子は3箇所のアミノ酸部位にリン酸化修飾をうけることを明らかにしている。それら各部位にリン酸化修飾を模倣するアスパラギン酸修飾、脱リン酸化修飾を模倣するアラニン置換を行った過剰発現植物体を用いて解析を行った結果、B3転写因子の細胞内局在は、リン酸化修飾によるものではなく、他の核移行制御因子によってストレス依存的、およびBAM受容体シグナル依存的に制御されていることを明らかにできた。この結果は、本年度の重要な研究成果の一つである。また、これら過剰発現植物体を用いて、コントロール条件および乾燥ストレス処理条件下における、ABA合成酵素の発現変動を解析した結果、リン酸化修飾を模倣するアスパラギン酸修飾変異を3箇所、置換を行ったB3転写因子では、ABA合成酵素遺伝子の発現が、コントロール植物と比較して上昇していることを明らかにできた点が、次年度につながる成果である。特に、リン酸化修飾部位のアミノ酸配列から、B3転写因子をリン酸化するタンパク質リン酸化酵素は、複数の因子群が存在することが考えられるため、B3転写因子の転写活性化能は、BAM受容体の下流において複雑で多段階的な制御を受けていると考えられる。これらの結果を踏まえて、現在、候補となるタンパク質リン酸化酵素にGFPやGST、MBPといった様々なタグを付加させた過剰発現植物体、および大腸菌を用いたタンパク質精製を進めている。さらにラジオアイソトープを用いないin vitroキナーゼアッセイ実験系の確立も行っている。さらにB3転写因子と候補タンパク質リン酸化酵素群との、直接的な結合を解析するための、プルダウンアッセイ実験系、および共免疫沈降法を用いた結合解析のための準備も計画通り進めている。

今後の研究の推進方策

B3転写因子がリン酸化修飾を受けるアミノ酸部位の周辺配列解析から、複数の候補タンパク質リン酸化酵素群を見出している。現在、これら候補因子群の過剰発現植物体、およびin vitroキナーゼアッセイ実験系で用いるタンパク質を大量精製することに成功している。今後は、これら精製タンパク質を用いて、非ラジオアイソトープ実験法により、B3転写因子をリン酸化するタンパク質リン酸化酵素の同定を進める。またリン酸化修飾部位に様々な変異を導入したB3転写因子過剰発現植物体の作成も進んできていることから、これら植物体を用いて、ABA合成酵素の発現を介したABAの蓄積、気孔の閉鎖、乾燥ストレス耐性の獲得に関わる網羅的な遺伝子発現変動やストレス耐性獲得テストを、順次行っていく予定である。更に、前年度、野生型およびbam受容体変異体バックグラウンドで、B3転写因子を過剰発現させた植物体を用いて、網羅的なプロテオーム解析を行い、B3転写因子に、乾燥ストレス依存的、およびBAM受容体依存的に結合する因子群の同定も進めている。現在、これら候補因子の過剰発現植物体の作成も進めている。今後は、これら植物体を用いて、B3転写因子との相互作用をin vitro、in vivo両方の系を用いて解析を進める。また、今年度の解析結果から、これら候補結合因子群は、B3転写因子の細胞内局在の制御に関わることを示唆するデータを得ていることから、プロトプラストや、候補因子群の過剰発現植物体を用いて、B3転写因子との細胞内相互作用、およびストレス依存的、CLEペプチド処理依存的な細胞内局在変化を解析する。bam受容体変異体バックグラウンドでの過剰発現植物体も作成していることから、ストレス依存的に加えて、CLEペプチド-BAM受容体依存的な細胞内制御機構も明らかにできる。

報告書

(2件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (19件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 13件、 招待講演 1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] Peculiar properties of tuber starch in a potato mutant lacking the α-glucan water dikinase 1 gene <i>GWD1</i> created by targeted mutagenesis using the CRISPR/dMac3-Cas9 system2023

    • 著者名/発表者名
      Ohnuma M、Ito K、Hamada K、Takeuchi A、Asano K、Noda T、Watanabe A、Hokura A、Teramura H、Takahashi F、Mutsuro-Aoki H、Tamura K、Shimada H
    • 雑誌名

      Plant Biotechnology

      巻: 40 号: 3 ページ: 219-227

    • DOI

      10.5511/plantbiotechnology.23.0823a

    • ISSN
      1342-4580, 1347-6114
    • 年月日
      2023-09-25
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Constitutively active B2 Raf-like kinases are required for drought-responsive gene expression upstream of ABA-activated SnRK2 kinases2023

    • 著者名/発表者名
      Soma Fumiyuki、Takahashi Fuminori、Kidokoro Satoshi、Kameoka Haruka、Suzuki Takamasa、Uga Yusaku、Shinozaki Kazuo、Yamaguchi-Shinozaki Kazuko
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 120 号: 24

    • DOI

      10.1073/pnas.2221863120

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Accumulation of Phosphorylated SnRK2 Substrate 1 Promotes Drought Escape in Arabidopsis2023

    • 著者名/発表者名
      Katagiri Sotaro、Kamiyama Yoshiaki、Yamashita Kota、Iizumi Sara、Suzuki Risa、Aoi Yuki、Takahashi Fuminori、Kasahara Hiroyuki、Kinoshita Toshinori、Umezawa Taishi
    • 雑誌名

      Plant And Cell Physiology

      巻: 65 号: 2 ページ: 259-268

    • DOI

      10.1093/pcp/pcad146

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] iChIP, a screen method to isolate transcriptional complexes on a specific promoter in planta, identified novel regulatory factors of ABA biosynthesis2024

    • 著者名/発表者名
      佐藤 輝,藤本 聡,藤田 美紀,高橋 史憲,桑田 啓子,松永 幸大,篠崎 和子,篠崎 一雄
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 乾燥ストレス応答に関わる新規膜タンパク質の機能解析2024

    • 著者名/発表者名
      大谷 晴香,井上 和奏,鈴木 健裕,堂前 直,高橋 史憲
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Accumulation of Phosphorylated SnRK2 Substrate 1 Promotes Drought Escape in Arabidopsis2024

    • 著者名/発表者名
      片桐 壮太郎,神山 佳明,山下 昂太,青井 勇輝,高橋 史憲,木下 俊則,梅澤 泰史
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Analysis of the regulatory mechanism of Arabidopsis CAMTA transcription factors in response to rapid temperature decrease2024

    • 著者名/発表者名
      弓倉 和也,橋本 紫光,高橋 史憲,溝井 順哉,篠崎 一雄,篠崎 和子,城所 聡
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Long-distance signaling under dehydration stress conditions2023

    • 著者名/発表者名
      Otani H,Inoue W,Maeya J,Suzuki T,Dohmae N,Shinozaki K,Takahashi F
    • 学会等名
      Taiwan-Japan Plant Biology 2023
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Functional analysis of novel membrane protein mediating dehydration stress response2023

    • 著者名/発表者名
      Otani H,Inoue W,Maeya J,Suzuki T,Dohmae N,Shinozaki K,Takahashi F
    • 学会等名
      Taiwan-Japan Plant Biology 2023
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 高温ストレス応答を制御するシグナル伝達機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      古橋 真由子,高橋 史憲
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 乾燥ストレス応答性転写因子と相互作用する因子群の機能解析2023

    • 著者名/発表者名
      前谷 純樹,高橋 史憲
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] シロイヌナズナのストレス応答性転写因子の翻訳後制御に関わるプロテインキナーゼの同定2023

    • 著者名/発表者名
      中澤 透子,杉本 蒼,高橋 亮輔,船守 晴帆,高橋 史憲,中道 範人,木下 俊則,篠崎 一雄, 篠崎 和子,溝井 順哉
    • 学会等名
      第64回植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 植物の概日時計転写因子における低温ストレス特異的分解機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      大川 直輝,高橋 史憲,溝井 順哉,篠崎 一雄,篠崎 和子,城所 聡
    • 学会等名
      第64回植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] イネの高温ストレス応答を制御するシグナル伝達機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      古橋 真由子,小川 大輔,米丸 純一,高橋 史憲
    • 学会等名
      第64回植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 乾燥ストレス応答に関わる新規膜タンパク質の機能解析2023

    • 著者名/発表者名
      大谷 晴香,井上 和奏,鈴木 健裕,堂前 直,高橋 史憲
    • 学会等名
      第64回植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 乾燥ストレス応答性転写因子と相互作用する因子群の機能解析2023

    • 著者名/発表者名
      前谷 純樹,中山 貴琉,高橋 史憲
    • 学会等名
      第64回植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [図書] 分泌性ペプチド群によるストレス情報伝達の解明2024

    • 著者名/発表者名
      大谷晴香, 井上和奏, 高橋史憲
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      北隆館
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [図書] 浸透圧ストレス応答に関わる分泌性ペプチド群の機能解析2024

    • 著者名/発表者名
      大谷晴香, 井上和奏, 高橋史憲
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      北隆館
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [図書] アグリバイオ2022

    • 著者名/発表者名
      高橋史憲
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      北隆館
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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