研究課題/領域番号 |
23K23918
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補助金の研究課題番号 |
22H02655 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
朝比奈 欣治 滋賀医科大学, 実験実習支援センター, 准教授 (40345294)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 肝臓 / マクロファージ / 中皮細胞 / 線維化 / 腹腔 / グリソン鞘 / 炎症 / 腹水 / 筋線維芽細胞 / 中皮 |
研究開始時の研究の概要 |
腹腔内の臓器や腹壁の表面は一層の中皮細胞により覆われており、腹腔は中皮により囲まれた袋とみなすことができる。腹腔内にはマクロファージが浮遊しており、臓器表面の中皮と相互作用していることが推測される。本研究では、肝臓表面の中皮細胞と腹腔マクロファージの相互作用を解析し、肝臓の創傷治癒に腹腔マクロファージが関わっていること、中皮の形態変化と肝疾患が関連することを明らかにする。
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研究実績の概要 |
腹腔内の臓器や腹壁の表面は一層の中皮細胞により覆われており、腹腔は中皮により囲まれた袋とみなすことができる。申請者はこれまで肝臓表面の中皮細胞の分化能とその役割について独自の研究を進め、肝臓が傷害を受けると筋線維芽細胞に分化し、線維化に関わることを明らかにしてきた。また、肝臓表面は腹腔内に暴露していることから、肝臓表面の中皮細胞は、腹腔内に浮遊しているマクロファージと相互作用するとの着想に至った。本研究では、1) 肝臓表面の線維化部位に動員される腹腔マクロファージの機能、2) 腹腔マクロファージと肝臓中皮細胞の相互作用、3) 肝臓表面に形成される線維化と腹腔へのアルブミン漏洩に関する研究を3年間行い、これらの細胞が肝線維化治療の標的になりうるか、新しい知見を得ることを目的とした。マウス腹腔内にchlorhexidine gluconateを投与すると肝臓表面が線維化する。これまでに、マウス腹腔内に浮遊している大型マクロファージを単離し、レシピエントの腹腔内に移植する実験により、肝臓表面の線維化領域に動員されることを明らかにした。肝臓への動員に伴い腹腔マクロファージはその性質を変化させ、肝臓の線維化や炎症反応を促進した。以上の結果は、腹腔内のマクロファージが肝臓の創傷治癒に関わることを示唆しており、腹腔は肝臓の治療標的になるうる可能性が高い。本研究により肝臓中皮の機能と腹水形成の関係が明らかとなり、将来的に腹腔を標的とした新しい肝疾患治療の創造に繋がることが期待される。また、本研究成果の波及効果として、肝臓だけでなく腹腔内の腸管や、胸腔内の肺や心臓など中皮に覆われた他の臓器の線維化に対する治療方法の開発研究にも貢献しうる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1) 肝臓表面の線維化部位に動員される腹腔マクロファージの機能、(2) 腹腔マクロファージと肝臓中皮細胞の相互作用、(3)肝臓表面に形成される線維化と腹腔へのアルブミン漏洩の解析を3年間行い、腹腔マクロファージや中皮細胞が肝疾患治療の標的になりうるかどうか新しい知見を得ることを目的とする。2年目は、予定どおり(1)の研究を中心に、(2,3)の研究についても解析を進めた。(1)の実験では、腹腔より大型マクロファージをTIMD4抗体により単離後、蛍光標識し、chlorhexidine gluconateにより肝臓表面に線維化をおこしたレシピエントマウス腹腔内に移植した。その結果、大型腹腔マクロファージは、傷害を受けた肝臓表面に接着すること、肝臓表面の線維化領域に動員されること、その性質を大きく変化させることを見出した。また、腹腔内の大型腹腔マクロファージを除去すると、chlorhexidine gluconateによる肝臓表面の線維化が軽減した。以上の結果より、大型腹腔マクロファージは肝臓表面の線維化領域に動員され、肝臓の線維化を促進することが明らかとなった。この研究成果は、肝細胞研究会にて発表し、FASEB Journal誌にて報告した。(2)の実験では、腹腔マクロファージおよび肝臓表面の中皮細胞を単離し、それぞれの細胞が発現する遺伝子の変化をRNA-seqにより解析し、細胞間相互作用に関連する候補遺伝子を同定した。(3)の実験では、chlorhexidine gluconateによる肝臓表面の線維化領域を解析し、傷害により中皮細胞のバリア機能が損なわれる結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
実験(1)において提案した研究は終了し、その成果をFASEB Journal誌に発表した。実験(2)腹腔マクロファージと肝臓中皮細胞の相互作用について、標識した腹腔マクロファージを肝臓中皮細胞と、直接共培養、インサートを用いた共培養、培養上清を用いた培養、をそれぞれ行う。直接共培養では、マクロファージと中皮細胞をMACSにより単離し、それぞれの性質を解析する。これまでに、中皮細胞が腹腔マクロファージの性質を維持する因子、腹腔マクロファージが中皮細胞を維持する因子、傷害を受けた中皮細胞が腹腔マクロファージを動員する因子、細胞間接着を促進する因子をRNA-seqにより明らかにしてきた。今年度は、これら候補因子を解析し、細胞間相互作用を明らかにし、論文として発表する。実験(3)肝臓表面に形成される線維化と腹腔へのアルブミン漏洩について、中皮細胞の筋線維芽細胞への分化、中皮細胞によるコラーゲン産生、中皮の構造変化を明らかにしており、現在、論文投稿を準備している。さらに静脈経由で蛍光標識-アルブミンを注入することで、マウス肝臓表面からのアルブミン漏洩を測定し、肝傷害に伴う中皮のバリアー機能の低下を明らかにする。
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