研究課題/領域番号 |
23K23920
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補助金の研究課題番号 |
22H02657 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
黒岩 常祥 日本女子大学, 理学部, 研究員 (50033353)
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研究分担者 |
永田 典子 日本女子大学, 理学部, 教授 (40311352)
八木沢 芙美 琉球大学, 研究基盤統括センター, 准教授 (70757658)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | シゾン / メダカモ / オルガネラ / ゲノム形態学 / 超微細構造 / 葉緑体 / ミトコンドリア / リソソーム / ペルオキシソーム / オルガネラ分裂装置 / オルガネラ分配装置 / 微細構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、系統樹の基盤に位置する原始紅藻シゾンと極小緑藻メダカモを使用した。 シゾンにおいて行った100%ゲノム解読、オルガネラ分裂装置機構の解析によるゲノム形態情報を基盤に、オルガネラの分裂と分配機構を解明し、その情報が細胞核分裂と細胞質分裂を誘導するしくみの解明を行う。メダカモにおいてもこの研究の過程で100%完全解読を行い、これを基盤に細胞核とオルガネラの構造解析をする。両者の共通性から、真核植物細胞の分裂・増殖の一般性を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究ではオルガネラの細胞当たりの数がほとんど1個と少ない、原始単細胞紅藻Cyanidioschyzon (シゾン)を使った。光の明暗で細胞分裂を高度に同調化させ、これまでの研究によって得られている3ゲノムの完全解読情報や、オルガネラ分裂装置に関する研究成果を基に研究を進めた。 オルガネラ分裂の順序を再確認した。その結果、リソソーム、ゴルジ体、葉緑体、ミトコンドリア、そして最後にペルオキシソームの順に分裂した。まず細胞の下部を占めている葉緑体が亜鈴形になり、分裂装置によって2分裂する。次に数個あるリソソームはそれぞれ分裂後数個ずつミトコンドリア上に結合した。ミトコンドリアもまた亜鈴形になって、分裂装置によって2分裂した。次にペルオキシソームが、ミトコンドリアの分裂面に入り込み分裂した。その結果娘ミトコンドリアの一端が娘ペルオキシソームに結合した。次に葉緑体、ミトコンドリア、ペルオキシソームの3種のオルガネラセットはTOPによって微小管の上を中心体に向かって移動し、細胞核の中心体の一部と結合することが示唆された。これがオルガネラの分裂情報を細胞核極に伝える機構と考えられた。 紅藻シゾンで得られた細胞の分裂、分配に関する基本的な現象の一般性、共通性を解明するには、単細胞の緑藻でも同様な解析を進める必要があった。そこで淡水に棲息する極小単細胞緑藻Medakamo hakoo (メダカモ)を探索し、詳細なゲノム形態学的解析を行った。最後にその研究成果を論文として発表することが出来た(Kato et al. Comm Biology)。 現在得られた微形態やゲノム情報をシゾンと比較しながら解析を進めている。両者の共通性から、真核植物細胞の分裂/増殖の一般性が分かってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シゾンを使ってオルガネラの分裂情報を最終的に細胞核に伝達するしくみを解析中、ミトコンドリアの両極にミトコンドリアの「分配装置」があることが明らかとなった。これまで、オルガネラのうち葉緑体、ミトコンドリア、ペルオキシソームの其々に、分裂の中央部に「分裂装置」(POマシン、MDマシン、PODマシン)を発見しており、これら共生によって生じた3種のオルガネラには中央部を分断する「分裂装置」のほか、分裂後の娘細胞小器官を両極に分配するための「分配装置」があることが示唆された。葉緑体の分配装置の存在についてはこれまで分裂像の両端が両極に引かれている像が得られており、さらなる観察が必要とされる。これは当初の計画以上に進展した成果と考えられる。次にメダカモでも葉緑体に分配装置が発見されれば、この3種のオルガネラの誕生「分裂装置」の進化的意義が解明されるとともに、他の3種のオルガネラ(リソソーム、ゴルジ体、小胞体)との進化的違いが解析できる。この解明を進める。 単細胞緑藻メダカモのゲノム解読が終了し、始原的な単細胞紅藻シゾンと始原的な緑藻メダカモの完全解読ゲノム情報が得られた事になる。両者の比較ゲノム解読により、オルガネラ分裂/増殖機構を基盤にして、植物の形態、機能に関る基本的な機構の情報が得られることになった。
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今後の研究の推進方策 |
単細胞紅藻シゾンの研究から細胞の分裂/増殖において、オルガネラが先ず分裂増殖し、その全ての分裂/増殖の終了情報が、リソソーム、ミトコンドリア、ペルオキシソームの3種のオルガネラ複合体の一端にある娘ミトコンドリアの端から細胞核中心体に伝わり、細胞核分裂と細胞質分裂が開始されることが分かった。このように今回ミトコンドリアでも「分配装置」が見つかったことから、葉緑体にも「分配装置」が存在することが期待される。そこでシゾンとメダカモで葉緑体の「分配装置」の探索をおこなう。3種のオルガネラに分裂装置が発見されれば、その装置に基づく3種オルガネラの進化的意義が解明される。 この他、シゾンの全ゲノムサイズが゛16.5Mbであり、メダカモに近く、遺伝子総数も近いことから、シゾンとメダカモの全ゲノムの比較によって、高率で両種に共通の遺伝子を調べることが出来るので、ゲノム形態解析により、オルガネラの分裂装置や分配装置、細胞核・細胞質分裂に関わる遺伝子情報を解明する(八木沢、永田、黒岩)。これによって植物の基本的な細胞構造と増殖様式が解明されると期待される。
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