研究課題/領域番号 |
23K23936
|
補助金の研究課題番号 |
22H02673 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝幸 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40451629)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
|
キーワード | 骨格 / パターン / 進化 / 遺伝子発現制御 / エンハンサー / 後肢 / 仙椎 / 位置決定 / 多様性 / 遺伝子発現調節 / 骨格パターン / 分子メカニズム / 脊椎骨 / 遺伝子発現 / 脊椎動物 / 進化発生 |
研究開始時の研究の概要 |
近年我々は脊椎動物における種による後肢の位置の違いは将来の脊椎骨になる細胞に発現するGdf11という分泌因子の発現開始タイミングの違いによって生み出されていることを発見した。そこで本研究では、後肢の位置の異なる様々な動物(特にスッポン、マウス、シマヘビに注目 )において、申請者が発見した種に固有のGdf11の発現開始タイミングが誘導される分子メカニズムを同定し、比較することで脊椎動物の後肢の位置の多様性を生み出す実体となる分子基盤を機能的証明を行い解明する事を目指す。
|
研究実績の概要 |
人間を含む四足動物の発生の初期段階では、前後軸が確立されると、胚の体は尾方向に伸長する。このプロセス中に、領域特異的な椎骨の形態形成が発生し、前後軸に沿った四肢の位置が決定される。これまで我々は、Gdf11遺伝子が、Gdf11が発現する後肢と仙椎の位置を決定する解剖学的統合システムとして機能することを報告した。しかしながら、Gdf11 発現誘導の根底にある分子機構は依然として不明であった。2023年度では、Gdf11 発現の制御機構を解明するために、種を超えて保存されている Gdf11 遺伝子座近傍の非コード領域を検索した。その結果我々は、イントロン 1 内の Gdf11 遺伝子のエンハンサーを同定し、これを高度に保存された領域 (HCR) と名付けた。 HCRノックアウトマウスでは、内在性Gdf11の発現レベルが低下し、仙骨-後肢ユニットの位置が後方にシフトした。また、HCR 内の予測される転写因子結合部位に基づいて、Gdf11 の上流の因子も検索した。その結果、FGF シグナル伝達を阻害すると内因性 Gdf11 発現が増加することを発見し、FGF シグナル伝達が Gdf11 発現を負に制御していることが示唆された。ただし、FGF シグナル伝達は HCR 活性を直接調節しなかった。我々の結果は、HCR以外にも種特異的なGdf11エンハンサーが存在すること、そしてFGFシグナル伝達がHCRとは独立してGdf11発現を調節していることを示唆している。これらの結果をまとめて論文に報告した。このHCR領域は種を超えて保存された配列であり、四肢動物における仙椎―後肢ユニットの決定機構の中で種を超えて保存されたプロセスの1つである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はこれまでの研究で、脊椎動物における種による後肢の位置の違いは将来の脊椎骨になる細胞に発現するGdf11という分泌因子の発現開始タイミングの 違いによって生み出されていることを発見した。本研究では、後肢の位置の異なる様々な動物(特にスッポン、マウス、シマヘビに注目 ) において、申請者が発見した種に固有のGdf11の発現開始タイミングが誘導される分子メカニズムを同定し、比較することで脊椎動物の後肢の位置の多様性を生み出す実体となる分子基盤を機能的証明を行い解明する事を目的としている。2023年度はこれまでの予備実験の結果から明らかとなった、種を超えて保存されたGdf11の発現を誘導するエンハンサー領域を同定し、その機能解析を行った結果を論文に報告した。このため、当初の予定通り、まずと、種を超えて保存されたGdf11の発現を誘導するエンハンサーを同定できたため、本研究は概ね順調に進展しているといえる。また今回報告した種を超えて保存されているGDF11のエンハンサー領域HCRの他にももう一つエンハンサー候補領域が存在し、この領域(F 領域)の機能解析も2023年度に行なった。この成果は現在論文準備中であり、2024年度に論文として投稿する予定である。これらの成果も当初の計画通りに進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度までの我々の解析で、種を超えて共通のGdf11のエンハンサー配列であるHCR領域を同定し報告した。2024年度は当初の計画通りにGdf11の遺伝子座の隣のSARNP遺伝子のイントロ内にあるF領域の標的遺伝子破壊マウスの機能解析を行い、論文に報告する。この配列はHCR配列と同様に種間で保存された配列であることからHCRと協調してGdf11の発現の誘導に必須であることが示唆される。そこで2024年度にはこのHCR領域とF領域の両方を標的遺伝子破壊したマウスを作成し、Gdf11の発現がどれだけ減少するかRT―qPCRを用いて調べる。また骨格のパターンを骨染色により解析し、Gdf11のノックアウトマウスの骨格パターンと比較する。骨格のパターンがGdf11のノックアウトマウスと同一になった場合は、Gdf11のエンハンサーがすべて同定できたことになる。これにより種を超えて保存されたGdf11 のエンハンサー領域がこの2つであるかどうかを検討する。また種に特異的なGdf11のエンハンサーであることが示唆されている領域についてマウスでノックインを行い、仙椎―後肢ユニットの位置とGdf11の発現の変化をRT-qPCRとin situ hybrdization法を用いて調べる。これにより種に固有なタイミングでGdf11の発現が誘導される機構の解明を目指す。また種に特異的なGdf11のエンハンサー配列を効率よく同定するためにHistoneH3K27AcのCUT&Tagを行いアクティブなエンハンサー候補領域を同定することを目指す。
|