研究課題/領域番号 |
23K23947
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補助金の研究課題番号 |
22H02684 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 京都大学 (2023-2024) 愛媛大学 (2022) |
研究代表者 |
今田 弓女 京都大学, 理学研究科, 助教 (80818948)
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研究分担者 |
森本 元 公益財団法人山階鳥類研究所, その他部局等, 研究員 (60468717)
松井 健二 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90199729)
井上 侑哉 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (90802504)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 生物間相互作用 / 適応進化 / 胞子 / VOC / 植物繁殖生態学 / コケ / 生態形態 / 捕食 / ミソサザイ / 巣の防衛 / フェノロジー / 進化 / 被食防衛 / 胞子体 / 揮発性物質 / 色解析 / 営巣行動 |
研究開始時の研究の概要 |
森林生態系においてコケがどんな役割を果たしているかはほぼ未知である。だが近年、コケはかつて信じられていたよりも多様な節足動物や鳥と深く関わっていることが明らかになってきた。このようなコケを取り巻く多様な生物間相互作用は、足元に広がるミクロな"未知生態系"である。本研究は、コケが動物といかに関わりつつ適応進化してきたかにせまる。さまざまな空間スケールと栄養段階を横断し、地表付近や樹幹でおこなわれる受精・胞子の形成といった、コケの繁殖や分散などの重要な側面における動物との関係を突き止める。さらに、色や匂いによるコミュニケーションといったコケと動物との相互作用に介在する機構を解き明かす。
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研究実績の概要 |
本研究では、コケと節足動物・鳥類との関係を端緒として、コケが生物多様性の創出や維持に果たしてきた役割の解明に取り組んできた。また、コケの繁殖と分散を介した生物間相互作用を通じていかに適応進化してきたかを、種間比較法、動物行動学的手法、植物形態学的解析、化学分析などの多角的アプローチで検証してきた。 1年目は、森林性鳥類の採餌と営巣におけるコケ類の利用と、胞子を介した動物との関係と胞子体の適応進化に関わる課題に取り組んだ。 コケを主要な巣材とするミソサザイを対象に、天敵相と巣材のコケの構成種への選好性を調査してきた。結果として、巣材にはおもにハイゴケ目に属する多様なセン類が使われていたが、コケ種の構成は巣ごとに異なり、特定種のコケを好む傾向はみられなかった。本調査の副次的な成果として、ミソサザイによる巣の防衛行動が観察された。本種の営巣行動や天敵に対する巣防衛の数少ない例として、調査結果は国際誌に投稿準備中である。オオルリの営巣行動についても並行して調査を進め、胞子体を収集する行動についての知見が得られた。 一方、セン類胞子体の食害に関わる動物相と食害率を調査するため、中国地方、紀伊半島、東北地方にて野外調査を実施し、約300サンプルを採取し、コケの種同定およびその食害率の算出を行なってきた。現時点ですでにコケの胞子体の全国的な食害率の傾向が明らかになりつつある。本研究の成果についても、現在、投稿準備中である。コケの胞子と動物との関係における匂いの介在について、胞子体特有の匂いがあるか、また、それに対して動物が誘引されるかを、匂い捕集、GC-MS分析、バイオアッセイといった手法によって調査してきた。現状では、胞子体特有の匂いの存在やそれに対する動物の誘因性については未だ安定した成果は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は、コケと鳥の関係についての調査に重点を置き、四国全域でオオルリやミソサザイの巣の探索を行い、多くの進展があった。また本調査によって、本研究の主眼とはやや異なる、鳥の繁殖生態といった側面についても予期しない発見が得られた。 コケ胞子体の調査については、日本各地から十分量のサンプルが採取できており、現在はそれらの種同定と解析を行なっている段階である。コケ胞子体の匂い分析については、まだ明瞭な結果は得られていないものの、一定の新知見が得られており、匂い捕集方法の改良とバイオアッセイの実施に向けて必要な設備は整っている。 コケの分類学的調査、鳥類の行動調査、胞子食節足動物の探索など、長時間を要する調査を数多く実施し、それらの多くについて野外調査としては期待以上の成果が得られたと言える。今後のコケの種同定と解析にはさらに時間が必要だが、計画立案時点での構想に沿う形で、期待以上の成果が得られていると考えている。ただ、1年目は探索的なフィールド調査に大きな時間を投入したため、得られた成果をそれぞれの枠組みに位置付け、論文発表するまでには至っていない状況である。 以上を総合的に鑑みて、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の4月に研究代表者が所属変更(異動)したことに伴い、新たな調査地の探索や研究環境の整備に当初の計画に含まれていない時間と資金の投入を新たに組み込む必要が生じている。本研究はフィールドワークを主体としており、さまざまな動物の生態調査を含んでいるため、とくに2年目の春には、京都周辺において調査地の探索を入念に行って、新拠点で充実したフィールド調査を行うことが研究を進展させる上で鍵になると考えている。また、現所属にある光学機器などの設備を利用した実験・解析にも取り組むことを予定している。とくに微分干渉顕微鏡による微小節足動物の観察、分光光度計による色解析を実施するため、準備中である。加えて、本研究課題に関して得られた1年目の成果について、現在、複数の論文を投稿予定である。
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