研究課題/領域番号 |
23K23948
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補助金の研究課題番号 |
22H02685 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
立田 晴記 九州大学, 理学研究院, 教授 (50370268)
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研究分担者 |
長峯 啓佑 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 研究員 (20817548)
陰山 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (60401212)
熊野 了州 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90621053)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2026年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 種分化 / 生殖隔離 / 配偶行動 / 微生物 / 染色体 / 交雑帯 / 共生微生物 |
研究開始時の研究の概要 |
転座型の染色体変異を有するサッポロフキバッタでは,異なる染色体集団(X0型,XY型)の分布が重なり,一部が交雑する“交雑帯”の存在が近年明らかになった.本研究では未だ解明されていない転座(XY)型系統の誕生と分布変遷の歴史についてゲノムワイド集団遺伝解析による推定をおこなうと共に,交雑帯の遺伝構造変異を生み出した要因について,交配実験と細胞遺伝学的検討,また微生物感染とホロゲノム解析からの解明を試みる.これにより、転座型染色体の誕生から交雑帯の形成に至った進化シナリオを作成・提示し,染色体再編成に端を発する種分化過程の総合的理解を目指す。
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研究実績の概要 |
交雑帯とその周辺部の調査,およびサンプリングはほぼ計画通りに実施できた.採集した標本から生殖腺を取り出し,染色体を確認するための標本を準備した.また共生微生物Wolbachiaに感染したバッタ個体から微生物だけを除去するため,抗生物質を塗布した植物を用意し,それを喫食させて共生微生物が除去できるか確かめた.抗生物質を塗布した植物は数日後に衰弱してしまうこと,また感染微生物除去前後で,共生微生物の選択的除去ができているかを定量PCR法により解析したところ,微生物の除去が十分出来ていないことが判明した.そこで現在は代替法を考案し,実験準備を進めているところである.また実験室内での交配実験に利用する個体群を選定し,室内で越冬させる個体を準備した.またシーズンを通じて野外から成虫を採集し,寄生虫の発生を調査した.寄生虫はシヘンチュウと寄生バエが主なもので,幼虫がある程度大きくなると寄生率が高くなる傾向があった.染色体の調査のため,交雑帯を中心に,北海道内の各地域からバッタ幼虫および成虫を採集し,生殖腺を固定液に浸漬し,プレパラート標本作製と観察に向けた準備を整えた.研究協力者であるポーランドのGrzywacz教授と連絡をとり,標本送付の手続きをおこなった.生殖腺除去後のサンプルについてはDNA分析向けに冷凍保存した.また摂食する餌の種類に応じ,寿命と繁殖にどのような影響があるのか調査した成果を論文化し,投稿した.現在リバイス中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外調査,材料採集については順調に推移している.新たな生息地調査を実施しており,これまで未踏の地において,新たな個体群を交雑帯が存在する地域で発見した.また越冬に必要な温度設定をおこなうための下準備も実施し,ロガーを地表からおよそ5センチ下の地温の計測をおこなった.また主な寄生者はシヘンチュウと寄生バエであることがわかり,寄生者が増加する夏前頃までに飼育用の幼虫を捕獲したほうが良いこともわかった.現在問題となっているのは,バッタの共生微生物を選択的に除去する方法についてで,抗生物質処理水を植物に吸水させ,それをバッタに食べさせた.その結果,抗生物質の摂取がうまく行っておらず,共生微生物の除去がうまく出来ていないことが判明した.そこで現在,植物に展着剤を加えた抗生物質を含んだ水溶液を作製し,それを葉の表面に塗布することで,抗生物質を直接喫食させる方法を検討している.抗生物質の塗布により,植物が弱ってしまわないか,また葉を喫食することでバッタの死亡率が上昇しないかについてデータを取得し,現在結果をとりまとめている.
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き,野外調査を実施し,サンプリングと分布調査を継続する.また採集したバッタ個体からDNAを抽出し,次世代シーケンシング解析を実施することで,交雑帯周辺の集団遺伝構造を解析する.微生物除去実験については,現在検討している方法を活用し,除去が確実に出来ているかどうかをモニタリングする.また現在論文化を進めている複数の実験結果については,順番に論文を完成させ,専門誌に投稿する.
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