研究課題/領域番号 |
23K23958
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補助金の研究課題番号 |
22H02695 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
工藤 岳 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (30221930)
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研究分担者 |
和久井 彬実 公益財団法人花と緑の銀行, 中央植物園部, 研究員 (00914128)
和田 直也 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (40272893)
甲山 哲生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (50793379)
矢吹 哲夫 北星学園大学, 経済学部, 客員教授 (50275484)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 高山植物 / 遺伝的多様性 / 気候変動 / 環境適応 / 生物間相互作用 / 種子食害 / フェノロジー / 送粉系 |
研究開始時の研究の概要 |
寒冷環境にある高山生態系は、地球温暖化により最も深刻な影響を受けると予測されている。しかし温暖化影響の脆弱性は、同じ種であっても地域によって異なる可能性がある。中部山岳域に分布する高山植物は、北海道に生育する同種植物とは異なる歴史的経緯を持ち、遺伝的な多様性が低いことが多くの種で示されてきた。本研究は、「遺伝的多様性が低い集団は、環境適応能力が低いのか?」という設問に対して、歴史的背景の異なる高山生態系で種間比較により解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
初年度は、大雪山と立山の調査地で調査プロットの設定ならびに試験的なサンプリング、ターゲット植物の結実率と種子食害率の試行調査を行った。 大雪山調査地では雪解け傾度に沿った調査区でハクサンボウフウ、ヨツバシオガマ、コガネギクのマーキングを行い、結実率と種子食害率の計測を行った。ハクサンボウフウはチョウ目幼虫による種子食害を受けており、食害圧は開花が7月中下旬に起こる場所で特に高く、それ以降に開花する場所では低かった。ヨツバシオガマは開花の早い場所ではチョウ目幼虫の食害を受け、遅い場所ではハエ目幼虫の食害を強く受けていた。一方でコガネギクは、どの場所でもハエ目幼虫の食害を受けていたが、その程度は低かった。 立山調査地では調査区の設定を行い、調査区全体を50m四方の約500区画に分け、空間遺伝構造のための葉のサンプリングをハクサンボウフウ、ヨツバシオガマ、コガネギク、ミヤマリンドウ、ミヤマキンバイの5種で行った。昨年度は133区画からのサンプリングをすることができた。数回ドローンを飛ばして、調査区全体の写真撮影を試行的に行った。さらに、ハクサンボウフウ、ヨツバシオガマ、コガネギクの果実のサンプリングを数地点で行い、種子食昆虫のサンプリングを行った。 大雪山と立山で採取した果実食昆虫についてはDNA抽出を進めており、遺伝子による種同定を行う準備を進めている。また、採取した種子は重量計測を行い、冷温処理を行った後、発芽実験を進めている。 研究成果は日本生態学会大会ならびに地区大会で5題の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北アルプス立山の調査地に新たに調査区を設定し、空間遺伝構造解析に向けた葉のサンプリングを開始した。また、ドローンによる残雪分布や開花状況の空間スケールの計測を始める体制を構築できた。立山での試行的なターゲット種のサンプリングにより、大雪山同様、種子食昆虫による食害が生じていることが確認できた。今年は初年度であり、調査区全体の雪解けパターンが不明であったが、ひとシーズンを通した調査により大まかな傾向を確認することができたので、次年度は具体的な調査プロットを設置し、大雪山での調査と比較可能なデザインでの研究が開始できる。 大雪山では計画通りのフィールド調査を行ない、雪解け時期の異なる個体群間で結実率と種子食害率のデータが取得できた。その結果、種子食害率は種間、ならびに同種個体群間で大きく変異することが確認できた。経年調査を続けることで、種子食害圧の季節変動をより定量的に解析できることが示された。 採取した種子の生育実験に向けた発芽実験に取りかかることができた。順調な発芽が確認できれば、異なる地域で採取した種子の実生を同一環境で生育させることで、発芽・成長特性の可塑的変異と遺伝的変異の解析に取り組むことができると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
大雪山調査地では、雪解け傾度の沿った調査プロットをさらに1セット増設することにより、開花時期の違いによる繁殖性質、結実成功、種子食害圧の影響について、反復したデータの収集が可能となり、経年変化と合わせてより普遍的な解析を試みる。昨年度行うことができなかったポリネーターの観察も行うことで、送粉サービスの季節変動と結実成功への影響を解析する。また、ポリネーターの訪花頻度や種子食害昆虫によるダメージ強度が個体群の密度や個体の形態形質とどのように関連しているのかを選択圧勾配解析により明らかにする。さらに、遺伝マーカーを用いた種子食害昆虫の種同定を行い、種子食害昆虫がスペシャリストなのかジェネラリストなのかを検討する。 立山調査地では、定期的なドローンによる写真撮影をベースとしたGIS解析を行うことで、雪解けパターンや開花進行を面的スケールで定量化する。雪解け進行に応じてターゲット種の調査プロットの設定を行い、開花時期の勾配に沿った形態形質、結実成功、種子食害率の解析のためのデータ収集を行う。大雪山と同様、ポリネーターの観察、種子食害昆虫の種同定を行い、地域間で季節進行に伴う送粉成功と食害圧の変化を地域間で解析する。また、空間遺伝構造解析のための葉のサンプリングを継続し、採取した葉のDNA抽出に取りかかる。 採取した種子は重量計測を行い、地域間や雪解け傾度に沿った場所間比較を行い、発芽実験とその後の成長解析を共通圃場で開始する。
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