研究課題/領域番号 |
23K23963
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補助金の研究課題番号 |
22H02700 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮下 英明 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50323746)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2026年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 遠赤色光 / 藻類 / 光合成 / アンテナ色素タンパク質複合体 / サンゴ骨格 / 順化 / アンテナ色素複合体 / 共生 / トランスクリプトーム / 藻類マット / トランスクリプトーム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、波長700 nm以上の光が優勢する環境の新たな酸素発生型光合成微生物生態像を浮かび上がらせることを目標に、1)遠赤色光のみを利用して光合成生育する真核藻類の多様性を明らかにする、2)それら藻類が遠赤色光を光合成に利用する仕組みを解明する、3)それら藻類の光合成作用スペクトルを明らかにする、また、4)遠赤色光捕獲アンテナ色素-タンパク質複合体およびその遺伝子を解明する、さらにそれらの情報を利用して、5)自然環境における藻類の遠赤色光利用状況を明らかにする手法を開発するものである。
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研究実績の概要 |
①遠赤色光利用藻類の多様性の解明:昨年度に引き続き、共同研究先より造礁サンゴを入手し、骨格内に共生する藻類の分離を行った。R5年度は、少なくとも5種の形態の異なる藻類の株化に成功しつつある。 ②遠赤色光利用の仕組みの解明:遠赤色光下で培養した単細胞緑藻Neochloris sp. Biwa 5-2株に誘導される長波長吸収は、細胞破砕によって消失し、分離されたチラコイド膜には観察されなかった。このため、誘導された長波長吸収は光合成アンテナの誘導ではなく細胞構造由来であると考えた。このような現象はこれまでに全く報告がなく、この現象の生物学的意味については今後詳細な検討が必要である。 ③遠赤色光利用の効率の解明:白色光と遠赤色光でそれぞれ培養したNeochloris sp. Biwa 5-2株の作用/励起スペクトルを測定したところ、遠赤色光の利用効率は、ほぼ同じであった。遠赤色光を利用する光合成の仕組みが、遠赤色光培養によって誘導されたものではなく、白色細胞にも備わっている仕組みであることがわかった。 ④FR-LHCタンパク質と遺伝子の解明:造礁サンゴ骨格内から分離したPhaeophila. dendroidesを遠赤色光照射下で培養した際に誘導される遠赤色光捕集アンテナ(FR-LHC)を分離しその特性解析を試みた。0.8%のβDMで可溶化した場合、LHCII三量体よりも小さいサイズの複合体として分離された。またこの複合体が、遠赤色光照射下においてチラコイド膜に蓄積される約26 kDaのタンパク質をサブユニットとするタンパク質複合体であることがわかった。さらにこの26 kDaのタンパク質は、緑色植物において報告されている既報のFR-LHCとは、分子量や蛍光特性が異なることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
造礁サンゴ骨格内から分離したPhaeophila. Dendroidesにおける遠赤色光順化については、予定された以上の成果を得ている。また、Neochlorisの遠赤色光順化研究においてはこれまでに全く報告のない現象を見出すことにも成功している。それは、遠赤色光順化によって光合成とは関係のない遠赤色光吸収が誘導されることである。これらの成果は、遠赤色光を利用して光合成生育可能な真核藻類の光合成、およびそれら藻類の環境中での挙動を明らかにするうえで重要な成果である。一方で、サンゴ骨格内に共生する藻類が予想以上に多様であったため、当初予定していたサンゴ骨格内以外の遠赤色光が優勢する環境中から微細藻類を分離については、保留状態になっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画時点ですでに分離されていた遠赤色光下で光合成生育できる藻類の光合成の仕組みについては、計画通りに進めてゆく予定である。また、サンゴ骨格内から分離した藻類についても、株化に成功次第、遠赤色光下におけるそれらの光合成の仕組みについて解明してゆく予定である。 一方で、当初計画していたサンゴ骨格内以外の当初予定していたサンゴ骨格内以外の遠赤色光が優勢する環境中から微細藻類を分離については、当面保留とし、本研究によって分離された藻類ならびに本計画時点ですでに分離されていた藻類株とともに光合成の仕組みの解明とアンテナタンパク質の同定をおこない、天然環境下における遠赤色光に依存した光合成の活性の解明に注力することとしたい。
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