研究課題/領域番号 |
23K23980
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補助金の研究課題番号 |
22H02717 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
大塚 稔久 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40401806)
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研究分担者 |
萩原 明 東京理科大学, 創域理工学部生命生物科学科, 准教授 (70402849)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | アクティブゾーン / CAST / ELKS / 液―液相分離 / 近位依存性ビオチン標識 / プロテオミクス |
研究開始時の研究の概要 |
神経伝達物質は、学習や記憶、情動などの脳高次機能に必須の役割を果たす。しかし、伝達物質放出量の調節が、いかにシナプス伝達の強度とその可塑性をコントロールし、最終的に個体レベルでどのように表現されるのか、その本質は未だ明らかになっていない。本研究では、伝達物質放出の位置とタイミングを決定する構造体であるアクティブゾーンに着目した包括的研究を推進する。特に、アクティブゾーン構成分子CAST/ELKSが担う液-液相分離機構およびアクティブゾーン分子群の多様性に着目し、アクティブゾーンにおける分子複合体の動態制御機構の全容解明を目指す。
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研究実績の概要 |
CASTとELKSは、それぞれαA、αB、βA、βBなどのスプライシングアイソフォームが存在すると推測されている。CAST/ELKSの液-液相分離には、N末端とC末端に存在する天然変性領域が重要な役割を果たすと推測されるが、CAST/ELKSのβフォームは、N末端の224残基(ELKS)から350残基(CAST)が欠損している。そこで、これらのスプライシングアイソフォームにおける液滴形成を観察した結果、CASTはすべてのアイソフォームで液滴形成が観察されたが、ELKSではβBフォームにおいて液滴を形成しなかった。CAST/ELKSの液滴形成結果は、天然変性領域の中でアミノ酸配列が比較的単調なLow complexity region (LCR)の分布と一致しており、CAST/ELKSの液-液相分離におけるLCRの重要性を示唆する。一方、RIM1およびMunc13-1の発現では、単独の場合は液滴を形成しなかったが、CASTとELKSと共に発現させることで液滴を形成した。液滴流動性の評価においては、CAST/ELKS依存的な物性変動を示した。一方、液滴形成不全のELKS βBフォームは、RIM1とMunc13-1の液滴形成を誘導しなかった。これらの結果は、RIM1とMunc13-1の液ー液相分離がCAST/ELKSとの分子間相互作用に大きく依存することを示唆する。 アクティブゾーンの多様性と構造基盤を明らかにするため、マウス脳組織においてCAST/ELKS近位依存的ビオチン標識によるプロテオーム解析を行い、634因子を同定した。同定因子では、アクティブゾーン構成因子群のほか、シグナルやプロテオスタシス関連因子が含まれ、さらに、CASTとELKS特異的な因子群が同定された。これらの結果はCAST/ELKSの機能的差異を支持する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の計画通り進展しており、現在論文を作成している。
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今後の研究の推進方策 |
CAST/ELKSが介在する液-液相分離においては、概ねそのメカニズムや意義が明らかになりつつある。CAST/ELKSのdouble floxマウスから海馬ニューロンを培養し、Cre recombinaseの発現によるターゲッティングを試みる。CASTとELKSの欠損によるアクティブゾーン構成因子、RIM1、RIMBP2、Munc13-1を含むその他のシナプス因子の発現量および局在変動を解析する。さらに、CAST/ELKSのスプライシングアイソフォームの発現により、変動したその他のアクティブゾーン因子の回復を解析する。さらに、電気生理学的解析、pH感受性蛍光タンパク質を用いたエンドサイトーシス/エクソサイトーシス解析、グルタミン酸放出の可視化などを組み合わせることにより、構造と機能の相関性を中心に解析する。これらの研究により、CAST/ELKSが主導する液-液相分離がアクティブゾーンアッセンブリーに及ぼす意義が明らかになると予想される。 一方、Rab3はニューロンの中でもっとも豊富な小胞タンパク質である。CAST/ELKSとRab3の相互作用は、親和性が低く、免疫沈降およびプルダウンアッセイでは検出が難しいが、CAST/ELKSとの液滴形成においては定量的解析が可能である。液滴形成を観察し、RIM1-Rab3-CAST/ELKSとの相互作用の分子メカニズムを解明する。 CAST/ELKS近位依存性ビオチン標識によるプロテオーム解析では、生物情報学に基づき、Gene ontologyを連携したエンリッチメント解析および相関関係解析など統計的手法を用いることで機能的分化に焦点を絞って解析する。
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