研究課題/領域番号 |
23K23990
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補助金の研究課題番号 |
22H02727 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46020:神経形態学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
植村 健 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 教授 (00372368)
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研究分担者 |
徳永 暁憲 福井大学, ライフサイエンス支援センター, 准教授 (70549451)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 神経回路網形成 / シナプス形成因子 / シナプス / 多様性 / 神経栄養因子 / 神経回路形成 |
研究開始時の研究の概要 |
神経細胞同士のつなぎ目であるシナプスには多様性が存在し、神経回路の情報処理に重要な役割を果たしている。シナプスは「シナプスオーガナイザー」と呼ばれる細胞接着分子同士の結合が引き金になり誘導されるが、シナプスの個性が作り出される仕組みは未だ不明な点が多い。本研究では、シナプスオーガナイザーがシナプスの個性を作り出すメカニズムを神経栄養因子の視点から解明し、その調節機構の生理学的意義を明らかにすることを目的とする。シナプスの個性が作り出されるメカニズムについての基礎的知見は、シナプス形成因子の機能破綻に起因する神経発達障害の病態の解明や治療戦略の進展に寄与すると期待される。
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研究実績の概要 |
シナプスオーガナイザーIL1RAPL1、Nlgn1の脳内分布を解析するために、それぞれの受容体にFLAGタグ、HAタグを挿入した遺伝子改変マウスを作成した。Nlgn1についてはシグナルペプチドから3アミノ酸下流に3×FLAGタグを挿入したマウスを作成し、作成したマウスの脳においてFLAG-Nlgn1が正常に発現すること、抗体による検出が可能であることが確認できた。一方、IL1RAPL1についてはIL1RAPL1-PTPδ複合体の立体構造を基にIL1RAPL1の細胞外領域の免疫グロブリン様ドメインIg1とIg2のヒンジ領域にHAタグを導入したマウスを作成した。抗HA抗体を用いたウエスタンブロット、培養神経細胞の染色においてはHA-IL1RAPL1の発現が確認されたが、脳切片を用いた免疫組織学解析ではシグナルを検出することができなかった。神経栄養因子受容体の阻害剤やレンチウイルスでのキナーゼ活性欠損変異体の発現解析から、神経栄養因子によるNlgn1のシナプス形成促進作用には、神経栄養因子受容体のチロシンリン酸化酵素を介したシグナルが関与していることが明らかになった。また、HEK293T細胞にIL1RAPL1、δPTP、神経栄養因子受容体を発現させ、免疫沈降解析を行ったところ、3つの受容体が共沈してくることから、これらの受容体が複合体を形成していることが明らかになった。さらに、HEK293T細胞、初代培養皮質神経細胞でのPTPδ変異体発現系を用いた解析から、神経栄養因子受容体のシグナルをPTPδが調節していることを示唆するデータが得られた。また、Nrxn KOマウスの解析から特定の神経回路において、Nrxnが神経細胞生存と神経伝達物質の伝達に関与していることを明らかにした。さらに、シナプスオーガナイザーによるシナプス形成を促進させる低分子を新たに見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IL1RAPL1の分子局在を明らかにする目的で、IL1RAPL1にHAタグを挿入した遺伝子改変マウスを作成したが、脳スライスでの免疫組織学的解析ではHA-IL1RAPL1の検出には至っておらず、免疫染色の条件検討に加え、タグの挿入位置、タグの種類などを再検討する必要が生じている。その他の実験については概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
IL1RAPL1のタグ挿入についてはHEK293T細胞などの実験系でタグの挿入位置を検討していく予定である。IL1RAPL1-PTPδ複合体で誘導されるシナプスが、神経栄養因子に不応答である理由についての詳細はまだ明らかになっていないが、IL1RAPL1、δPTP、神経栄養因子受容体が複合体を形成すること、神経栄養因子受容体のシグナルをPTPδが調節していることを示唆するデータが得られており、PTPδのチロシン脱リン酸化酵素活性がそれらを制御している可能性を、培養神経細胞ならびに遺伝子改変マウスを作成して解析していく予定である。また、IL1RAPL1、δPTP、神経栄養因子受容体からなる複合体が、どのような結合様式で複合体を形成しているかを、生化学的に解析していく予定である。
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