研究課題/領域番号 |
23K24002
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補助金の研究課題番号 |
22H02739 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩渕 好治 東北大学, 薬学研究科, 教授 (20211766)
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研究分担者 |
笹野 裕介 東北大学, 薬学研究科, 講師 (10636400)
山越 博幸 東北大学, 薬学研究科, 助教 (30596599)
長澤 翔太 東北大学, 薬学研究科, 助教 (50846425)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | ハイブリッド触媒 / 酸化触媒 / 不斉合成 / フェノールカップリング / ペプチド合成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、申請者らが独自に発展させてきた有機ニトロキシルラジカルの化学と遷移金属のレドックス特性の統合を鍵として、穏和な条件下、空気中の分子状酸素を触媒的に活性化して、有機分子の高選択的酸化反応を進行させ得る精密電子伝達系を構築することを目的とする。本研究の推進により、多官能性複雑分子の効率的構築を可能とする革新的方法論が誕生するとともに有機ニトロキシルラジカルと遷移金属のレドックス特性を統合する学術フロンティアを開拓する。
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研究実績の概要 |
本研究は、「有機ニトロキシルラジカル-遷移金属協奏触媒システム」に潜在する、未踏の合成化学的機能性の開発を機軸として、常温・常圧で空気中の分子状酸素を触媒的に活性化して、①アルコールおよび②フェノールの高化学選択的酸化を基点とする高次分子変換法の創出を企図して3年間の計画研究として実施するものである。以下、項目毎に2年目までの研究実績の概要を記す。 ①多座配位型AZADOを網羅的に合成し、N-保護 vic-アミノアルコールと第一級アミンとの空気酸化的縮合によるペプチド合成反応を検討した。その結果、Stahlらによって報告されていたABNO-Cu触媒を凌駕する合成効率を発揮する多座配位型AZADO-Cuハイブリッド触媒システムを見出すことに成功した。種々のアミノ酸由来のN-保護 vic-アミノアルコールを用いて基質適用性を検証した結果、本触媒システムは幅広い官能基許容性を示し、多様なジペプチド誘導体の合成に適用可能であることを確認した。また、上述した酸化的ペプチド縮合反応の検討の途上において、予期せず見出した酸化的ペプチド切断反応について検討を進め、その切断部位を特定することが出来た。 ②クロムサレン錯体と有機ニトロキシルラジカルの協奏触媒系による分子内脱芳香族的フェノールカップリング反応の不斉反応への展開と触媒機構の解明を目指した検討を行った。その結果、不斉フェノールカップリング反応の生成物の絶対立体化学を決定することに成功し、これより基質特異性とリガンドー不斉収率の相関に関する知見を統合して、本分子内脱芳香族的不斉フェノールカップリング反応の触媒機構モデルを構築した。また、本触媒システムの合成化学的有用性の拡張を企図して分子間フェノールカップリングへの適用を行い、効率的なレスベラトロール型スチルベノイドの空気酸化的二量化反応を開発することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①1-ヒドロキシメチル2-アザアダマンタンを基点として、多様な多座配位型AZADOを合成し、種々の銅塩共存下で、N-保護 vic-アミノアルコールと第一級アミンとの空気酸化的縮合によるペプチド合成反応を検討した。その結果、常温・1気圧の酸素雰囲気下で、Stahlらによって報告されたABNO-Cu触媒を凌駕するペプチド縮合効率を発揮する多座配位型ABNO-Cuハイブリッド触媒システムを開発することに成功した。本ハイブリッド触媒システムは、種々のアミノ酸由来のN-保護 vic-アミノアルコールおよび第一級アミンを許容し、多様なジペプチド誘導体の合成に適用可能であることを確認した。また、上述した酸化的ペプチド縮合反応の検討の途上において、予期せず見出したオキソアンモニウム塩による酸化的ペプチド切断反応について検討を進め、その切断部位のアミノ酸残基を特定することに成功した。 ②独自に見出したクロムサレン錯体とニトロキシルラジカルの協奏触媒系による分子内脱芳香族的フェノールカップリング反応の不斉反応への展開と触媒機構の解明を目指した検討を行った。その結果、本反応の酸化活性種が四価クロムイオン錯体であることを強く示唆する知見を得るとともに、不斉フェノールカップリング反応の生成物の絶対立体化学を決定することに成功し、前年度までに得ていた知見と統合して、本分子内脱芳香族的不斉フェノールカップリング反応の触媒機構モデルを構築した。また、本触媒システムの合成化学的有用性を拡張するべく分子間フェノールカップリングへの展開を図った。種々検討の結果、p-アルケニルフェノール類が本ハイブリッド触媒システムの良好な基質となることを見出し、これより効率的なレスベラトロール型スチルベノイド誘導体の空気酸化的二量化反応を開発することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
3年間の計画研究の2年目までに得られた知見を受けて、研究計画と内容の一部を修正しつつ、所期に掲げた目的を達成するための検討を行う。 まず、①酸化的ペプチド縮合反応の開発については、多座配位型AZADO-Cu協奏触媒の構造ー活性相関情報に基づいて、ニトロキシルラジカルと遷移金属イオンのレドックス連携のさらなる向上を目指した構造最適化を行うとともに、従来法によるペプチド縮合反応では困難となっている立体的に嵩高い第二級アミンとの効率的な縮合を視野に入れた、基質適用性の拡大を企図した検討を行う。また、初年度に見出した予期せぬペプチド切断反応について、酸化的ペプチド縮合反応の開発と緊密に連携しつつ新規ペプチド精密修飾法としての可能性を追究する。 一方、②触媒的空気酸化的精密フェノールカップリング反応の開発については、2年目の研究で構築した反応機構モデルをもとに、多座配位型AZADOと種々の遷移金属イオンとのレドックスの連携を機軸として、電子豊富な複素環を含む種々のフェノール類の酸化的カップリング反応への適用を図り、触媒効率、化学・位置およびエナンチオ選択性を精査して、有機ニトロキシルラジカル-遷移金属ー酸素分子が形成する電子伝達システムの合成化学的活用性を開発する。さらに、本触媒反応系の合成化学的機能性の追究という観点から、生合成模倣型の生物活性ヒガンバナアルカロイド骨格の構築ならびにp-アルケニルフェノール類の精密二量化反応に挑戦して、本反応の有用性の実証を目指す。 研究代表者・岩渕は本研究を統括する。分担者・笹野は多座配位型AZADO触媒反応の開発を、長澤は触媒的フェノールカップリング反応の開発を、山越は二量体天然物の全合成研究をそれぞれ担当する。また、研究室に在籍している大学院生5名、学部生4名が研究協力者として実験を担当する。
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