研究課題/領域番号 |
23K24005
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補助金の研究課題番号 |
22H02742 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
平野 圭一 金沢大学, 薬学系, 教授 (40633392)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2022年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | ホウ素 / 含ホウ素芳香環 / ジボリル化 / ヒドロホウ素化 / 含ホウ素環状化合物 / ボラート / ケイ素 / 反応開発 / 物性創発 / ヘテロ環 / 創薬 / 治療 |
研究開始時の研究の概要 |
低分子医薬品やバイオイメージング試薬をはじめとする機能性分子は、炭素(C)、水素 (H)、窒素(N)、酸素(O)の有機化学によって構築されてきました。本研究では、これらの代表的な元素と様々なヘテロ元素を組み合わせた全く新しい分子を設計・創出するための新しい化学反応の開発に取り組み、新しい薬や材料を生み出すことを目指します。
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研究実績の概要 |
医薬品の基本骨格であるベンゼン環をヘテロ元素を含む芳香環アナログで置き換える戦略は、薬剤の体内動態および生理活性をチューニングするうえで有効な戦略であり、近年、大きな注目を集めている。代表者は、特にホウ素に着目した反応開発と物質創製に取り組んでおり、本研究では炭素―炭素二重結合と、ホウ素―窒素単結合の幾何的および電子的等価性に注目した。すなわち、ベンゼン環の炭素―炭素二重結合をホウ素―窒素単結合で置き換えることによって「分子の形を変えずに、電子的性質(極性)のみに摂動を加える」戦略である。 研究代表者は、隣接位にアルキン官能基を有するアニリドアニオンに対して、ジボロンを加えることで、ジボロンのアート錯体化をトリガーとしたB-B結合の開裂、ボリルアニオンのアルキンへの付加、生じるビニルアニオンの環化の一連の化学プロセスによるBN芳香環の合成反応を設計し、前年度までに本反応が高い収率にて進行することを見出していた。本年度は、その適用範囲を検証するとともに、生成物の多様化研究を行い、二重環化反応によるπ共役系の拡張ならびに、環外部のホウ素部位を鈴木―宮浦カップリング反応にて炭素官能基化できることを示し、論文にて発表した。また、検討の過程でジボロンの代わりに他のホウ素試薬を用いることで、インターエレメントホウ素化反応が進行し、さらにBN分子構造を多様化できることを見出した。また、カルバニオンによるアート化によってもホウ素含有芳香環を多様化できることを併せて見出し、その最適化検討および基質一般性の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホウ素含有多様化研究に関しては、論文報告したジボリル化によるBN環合成に成功した。上述のように、次なる展開に進んでおりこれも今年度中に論文報告できる見込みである。また、カルバニオンによるアート化を基盤としたホウ素含有芳香環合成反応に関しても、同様に今年度中に論文報告の予定である。 励起状態利用によるボリル化研究に関しては、予期せず、ホウ素化とは別の興味深い現象が見つかっている。今年度は、この新規反応をさらに掘り下げるとともに、現在、さらに探索中であるホウ素分子合成手法も見いだせるように検討を進める。 ケイ素環合成反応に関しては、研究代表者等が以前に報告した7員環シラン試薬を基盤とした反応開発を計画していたが、報告した試薬の合成法の問題で試薬の反応性のチューニングを行うことは困難であり、様々な反応開発へのon demandな利用が不可能であった。昨年度に、7員環シラン試薬の収束的合成法を見出し、その多様化に向けた足がかりを構築済みである。今年度は、様々は7員環シラン試薬を実際に合成することでその一般性を検証し、合成したシラン試薬を用いたケイ素環状化合物の合成に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)インターエレメントホウ素化反応によるBN環合成:すでに最適反応条件を見出しているため、今年度は適用範囲を検討するとともに、機能性材料、医薬品骨格のベンゼンおよびナフタレンをBN環で置換する検討を行う。合成体の機能の調査を独自におよび共同研究にて行う。 2)インターエレメントホウ素化によるホウ素含有芳香環合成:すでに最適反応条件を見出しているため、今年度は適用範囲を検討する。生成物は、置換基の電子的効果・立体的効果により色調を大きく変えることが可能であると予想されるため、理論計算による分子設計を織り交ぜ、環境応答性のマルチカラー蛍光色素を創出する。 3)励起状態利用によるホウ素化反応:はじめに想定していた反応基質では予想外の非ホウ素化反応が進行した。本反応は非常に興味深い現象であるため、その反応機構を理論計算化学および分光学により解明し、一般化を目指す。また、ホウ素化反応に関しては照射光波長あるいは反応基質を変更することで提案概念が実現可能かどうかを検証する。 4)含ケイ素化合物合成:独自のケイ素試薬骨格の多様化に向けた新規合成法を昨年度に見出した。今年度は、その方法に則り、試薬構造の多様化を行う。さらに、得られた様々な試薬を用いてケイ素環状化合物の合成に取り組む。
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