研究課題/領域番号 |
23K24006
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補助金の研究課題番号 |
22H02743 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
南條 毅 京都大学, 薬学研究科, 助教 (30817268)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
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キーワード | N-クロロアミド / ペプチド / Late-Stage官能基化 / 縮合 / N-ハロゲン化 / 化学修飾 / 有機触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
非タンパク質構成アミノ酸や大環状骨格等を含有する特殊ペプチドは低分子と抗体医薬の利点を併せ持つ第三の医薬品候補として注目を集めている。その中で、N-メチルアミノ酸のようにアミド窒素上に置換基が導入された誘導体は代表的な特異構造であるが、ペプチド鎖に対して直接置換基導入できる実用的手法はこれまで皆無であった。筆者はペプチド主鎖を構成するアミドの N-ハロゲン化を駆使したペプチドの化学修飾技術の実現を目指すとともに、N-ハロペプチドという合成例の無い未知の化学種の性質を精査し、医薬品としての応用可能性も模索する。
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研究実績の概要 |
主鎖アミドのN-ハロ化を経由した新しいペプチドの化学変換法「N-ハロペプチド法」の確立を目指して、本年度はその基盤技術となるペプチドの触媒的N-クロロ化反応条件を最適化を行った。また、簡便に調製できるようになったN-クロロペプチドを足掛かりとした非天然型特異構造の導入も種々検討し、デヒドロアミノ酸や側鎖クロロ化体といった既存法では合成が困難・煩雑な非天然型アミノ酸残基の形成に利用できることを明らかにした。さらに、シクロスポリンAのような大環状骨格を持つペプチドへの適用も試み、Late-Stageでのデヒドロアミノ酸構造の導入にも成功した。これらの成果は「N-ハロペプチド法」が構築済みのペプチド鎖に利用できる一般性の高い化学修飾法として極めて有用であることを示している。 さらに本法を長鎖・大環状のオリゴペプチドに対して利用するために、複数反応し得るアミドを含有するペプチドにおける位置選択性についても調査した。その結果、上述の検討で確立したキヌクリジンを用いる触媒条件では立体的に空いている部分が優先的にN-クロロ化されることが明らかとなった。一方で、水酸基を有するセリンやトレオニン側鎖が存在すると、その近傍のアミド選択的にN-クロロ化が進行することも明らかとなった。さらに、必ずしも立体障害によって位置選択性が支配されるわけでは無く、用いる求電子的塩素化剤によっては従来のキヌクリジン触媒条件から選択性が変化するという興味深い現象も観測した。これらの知見は触媒による位置選択性の制御に向けた大きな足掛かりとなることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の根幹にかかわるペプチド主鎖アミドのN-クロロ化条件を確立するとともに、得られたN-クロロペプチドを利用したその後の変換法についてもいくつか実現した。また当初検討予定になかったチオアミド化反応についても、作用させる試薬を工夫することで良好に進行することを見出し、次年度以降反応条件の最適化、基質適用範囲の検討を進める予定である。加えて、長鎖オリゴペプチドでの反応の位置選択性の検討において、反応が周辺の立体効果のみならず、複数の要因によって支配されていることも明らかとなり、これらの知見は触媒による位置選択性の制御に向けた大きな足掛かりとなることが期待される。以上の結果を総合すると、本年度の検討は概ね順調に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の予備的検討によって、アミドを複数含有するオリゴペプチドにおいてキヌクリジン触媒条件により、立体的に空いている部分が優先的にN-クロロ化されることが明らかとなった。また、水酸基を有するセリンやトレオニン側鎖が存在すると、その近傍のアミド選択的にN-クロロ化が進行することも明らかとなった。さらに、必ずしも立体障害によって位置選択性が支配されるわけでは無く、用いる求電子的塩素化剤によっては従来のキヌクリジン触媒条件から選択性が変化するという興味深い知見も得た。一方で、依然としてこれら反応の選択性は十分とは言えず、本年度は基質の立体障害や官能基により敏感な触媒・試薬を設計・合成し、選択性の改善を目指す。また同時に多点認識部位を組み込むことで高次の反応位置制御が期待される新触媒の開発も検討予定である。さらに未だ不明なアミドのN-クロロ化の反応機構を明らかにすべく、種々の実験・理論計算を実施し、キヌクリジン存在下極めて円滑にアミドのN-クロロ化が進行する要因を明らかにするとともに、本知見をアミドの他のN-官能基化に応用できないかも併せて検討する。加えて、N-クロロペプチドは求核性リン化合物により活性化することが可能で、その後適切な反応条件に付すことでアミドのバイオイソスターへ簡便に変換できることも既に見出している。本手法についてさらに詳細に検討し、チオアミドといった有用官能基の導入の基質一般性を明らかにするとともに、さらに大きな長鎖・環状オリゴペプチドに利用できるよう、試薬・反応条件の改良を進める予定である。
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