研究課題/領域番号 |
23K24011
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補助金の研究課題番号 |
22H02748 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
小林 祐輔 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (90509275)
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研究分担者 |
浜田 翔平 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (00833170)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
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キーワード | ハロゲン結合 / カルコゲン結合 / ニクトゲン結合 / 糖鎖修飾 / グリコシル化 / 水中反応 / ペプチド / 中分子創薬 / 糖鎖 |
研究開始時の研究の概要 |
ハロゲン結合およびカルコゲン結合が反応剤の構造・機能にもたらす効果を検証する。下記の項目①~④により、反応剤分子設計の新概念を確立し、未踏の水中分子変換を達成する。 ①種々のオルト位置換基を有するヨードニウムイリドの立体構造と反応性の評価 ②種々の置換基を有するベンゾチアゾールの立体構造と反応性の評価 ③アミドの水中N-グリコシル化反応の開発 ④チアゾール環連結型ペプチドカップリング反応の開発と応用
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研究実績の概要 |
中分子ペプチド創薬が近年注目されており、抗腫瘍・感染症などの幅広い領域での応用が期待されている。しかし、これまでに得られたヒット化合物の多くは体内動態に改善の余地があり、臨床試験に適応可能な候補化合物をより高い確率で得るためには、ペプチドの代謝安定性や細胞内移行性を解決する新たな技術・方法論の開発が必要である。技術開発が立ち遅れている最大の理由は、ペプチド鎖を連結・修飾するための水系溶媒中で実施可能な反応が限られていることに起因する。そこで、申請者はハロゲン結合やカルコゲン結合などの水系溶媒中でも有効な相互作用を活用した新規反応剤を開発し、これまでに報告のないペプチド連結法・ペプチド修飾法を目指した。 ハロゲン結合およびカルコゲン結合が反応剤の構造・機能にもたらす効果を検証すべく、下記の項目1)~4)により、反応剤分子設計の新概念を確立し、未踏の水中分子変換を達成する。1)種々のオルト位置換基を有するヨードニウムイリドの立体構造と反応性の評価、2)種々の置換基を有するベンゾチアゾールの立体構造と反応性の評価、3)アミドの水中N-グリコシル化反応の開発、4)チアゾール環連結型ペプチドカップリング反応の開発と応用 項目1)~2)では、種々の置換基を有する超原子価ヨウ素反応剤やベンゾチアゾール反応剤を合成し、ハロゲン結合やカルコゲン結合がそれらの立体構造や反応性に与える影響を実験化学、計算化学の両面から解析する。項目3)では難易度の高いアミドの水中N-グリコシル化反応を達成し、ハロゲン結合による基質認識の威力を示す。項目4)では、これまでに報告されている手法では合成が困難であるチオペプチド天然物群の合成および活性評価を行い、開発した方法論の有用性を示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ハロゲン結合を利用した反応開発 種々のオルト配向性官能基を有するヨードニウムイリド(カルベン等価体)を合成し、チオアミドとの反応性を評価した。その結果、オルト位にニトロ基やスルホニル基などの電子求引性の配向性官能基を導入した場合に、水系溶媒中での縮合反応が進行し対応するチアゾール環が収率良く得られることがわかった。また、ペプチドの修飾を視野に入れ、β-ケトアミド由来のヨードニウムイリドの合成も試みているが、こちらについてはまだ合成できておらず別法での合成を現在も検討している。水系溶媒中での反応性、官能基許容性や高希釈条件での反応についても精査を行う。また、合成できたヨードニウムイリドのX線結晶構造解析および計算化学(NBO解析)によって、配向性官能基とヨウ素原子の相互作用について分子内ハロゲン結合が存在することが明らかとなった。 2)カルコゲン結合を利用した反応開発 様々な配向基および脱離基を有するベンゾチアゾールを合成し、システイン保護体との反応性を評価した結果、リン酸緩衝液(pH=8.0)で反応が進行することがわかった。ベンゾチアゾール環の2位の置換基については、メタンスルホニル基やパラトルエンスルホニル基などが有効であった。X線結晶構造解析および計算化学(NBO解析)については、まだ行えていないため、今後結晶化および計算による解析を進める。また、チオペプチド天然物の合成を指向し、得られた付加体については、酸化条件および脱離条件を検討して温和な条件でのデヒドロアミノ酸(Dhaa)への誘導化を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
1)2)については上述の課題が解決でき次第、論文化を目指す。2023年度は、ハロゲン結合を利用したN-結合型糖鎖の効率的合成について検討を行う。N-結合型糖鎖は糖タンパク質の生物活性発現に重要な役割を果たしているが、その化学合成は挑戦的な課題である。糖供与体をルイス酸触媒で活性化することによって、アミドを直截的にN-グリコシドへ変換できることが申請者の報告を含め数例のみ報告されている。しかし、用いるアミド分子が大きくなるほど溶解性・収率が低下してしまうなどの課題が残る。また、糖供与体としてGlcNAc誘導体を用いる場合(X = NHAc)、安定なオキサゾリジン中間体を形成してしまうため、アミドの直接的な導入の報告はこれまでに皆無である。この方法の最大の課題は、厳密な脱水条件下で実施しなければ最終的に加水分解体が得られてしまう点である。このような背景のもと、申請者はこれまでに利用してきたハロゲン結合相互作用を活用することで水中でも実施可能なN-グリコシル化反応を達成する。すなわち、糖供与体として1-メルカプト糖を用い、アミド源として超原子価ヨウ素反応剤であるN-アシルイミノヨージナンを用いて検討を行う。
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