研究課題/領域番号 |
23K24016
|
補助金の研究課題番号 |
22H02753 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
浅井 知浩 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (00381731)
|
研究分担者 |
池田 潔 静岡県立大学, 薬学部, 客員教授 (40168125)
米澤 正 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (50469988)
小出 裕之 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (60729177)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
|
キーワード | 脂質ナノ粒子 / mRNA / 抗原提示細胞 / ワクチン / drug delivery system |
研究開始時の研究の概要 |
脂質ナノ粒子(LNP)技術を用いたmRNAワクチンの承認を契機に、感染症のみならず様々な非感染性疾患に対するmRNAワクチン/治療薬の開発が進展すると期待されている。LNP技術は、mRNAワクチンの安定性、体内動態、導入効率、および効果を決定付ける重要な製剤技術である。本研究では、mRNAの導入法の確立が待たれている抗原提示細胞を標的とした新規LNP技術を開発し、個別化がん免疫療法への応用可能性を探求する。抗原提示細胞の物質輸送システムに着目した独創的なmRNAデリバリーシステムを構築し、独自のLNP技術を用いた画期的ながんワクチンの開発を目指した研究を展開する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、これまでに我々が開発したLNP技術を基盤にし、CD169陽性の抗原提示細胞を標的としたmRNAデリバリーシステムに関する研究を行っている。本年度はCD169に結合性を示すα2,3-シアル酸を表面に提示したmRNA/LNP製剤の調製とがんワクチンの開発に関する検討を実施した。LNP は、pH応答性脂質、リン脂質、マレイミド脂質、コレステロールからなる混合脂質を溶解したエタノール溶液とmRNAを含む酸性水溶液をマイクロ流路内で急速混合した後、エタノールを除去して調製した。このLNP溶液にα2,3-シアル酸誘導体を添加し、マイケル付加反応によってα2,3-シアル酸修飾LNPを調製した。HPLC分析の結果、α2,3-シアル酸誘導体が高効率にLNPに結合したことが示された。CD169陽性抗原提示細胞を用いた実験において、LNP表面上のα2,3-シアル酸構造が細胞に認識されるためには、誘導体のα2,3-シアル酸以外の構造も重要であることが示唆されたため、構造の最適化を行った。一方で、がんに対するmRNA/LNPワクチンの開発についての検討を進めた。モデル抗原卵白アルブミン(OVA)をコードするmRNAを封入したLNPを調製し、免疫応答に関する動物試験を実施した。mRNA/LNP製剤をC57BL/6マウスに投与後、抗OVA抗体の誘導を明らかにした。またマウス胸腺腫細胞EL4由来のOVA抗原強制発現株EG7を用い、LNPのがんワクチン開発における有用性について検討した。OVA mRNAを封入したLNPを投与したマウスにEG7細胞を皮下移植したところ、顕著ながん予防効果を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に設計・合成したα2,3-シアル酸誘導体および市販のガングリオシドGM3を修飾した標的化mRNA/LNP製剤の調製方法について検討し、各リガンド修飾LNP(GM3修飾LNP、α2,3-シアル酸修飾LNP)の調製が可能になった。またIFN-αによる刺激でマウス骨髄由来マクロファージのCD169発現が亢進することを示し、CD169標的化LNPのインビトロにおける評価系を構築した。蛍光色素Cy5で標識したmRNAを用い、α2,3-シアル酸修飾LNP とGM3修飾LNPのCD169標的化能を比較したところ、α2,3-シアル酸誘導体の構造最適化の必要性が示唆された。そこでα2,3-シアル酸誘導体の再設計と合成を行い、誘導体の構造を最適化した。一方で、mRNA/LNPワクチンの有効性を明らかにするため、がん予防効果に関する検討を実施した。OVAをコードするmRNAを封入したLNPをC57BL/6マウスに筋肉内投与し、抗OVA抗体の誘導を明らかにした。OVA mRNAを封入したLNPを投与したマウスに対し、マウス胸腺腫細胞EL4由来OVA抗原強制発現株EG7を皮下移植したところ、顕著ながん予防効果が観察された。今後はα2,3-シアル酸誘導体の効果、細胞傷害性T 細胞の活性化、がんの治療効果について検討を進める。α2,3-シアル酸誘導体の構造最適化に時間を要し、当初計画から変更になった点もあるが、予定外の研究成果も含めて着実に成果が出ており、全体としてはおおむね順調に推移していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
CD169陽性抗原提示細胞にmRNAを選択的に送達させることを目的とし、CD169に結合性を示すα2,3-シアル酸を修飾したLNPの開発を継続する。これまでの知見を基にして構造を最適化したα 2,3-シアル酸誘導体をLNP表面に修飾し、CD169陽性抗原提示細胞に対する標的化を行い、がんワクチンの開発と作用機序の解明を進める。これまでの検討でOVA mRNA/LNPの筋肉内投与による特異的抗体の誘導やがん予防効果が明らかになったため、リガンドであるα2,3-シアル酸修飾の有効性、mRNA/LNPの体内分布について詳細な検討を実施し、CD169陽性抗原提示細胞を標的化することの優位性を示す。一方で、がん予防効果に加えてがん治療効果について証明するため、EG7細胞を皮下移植して作成した担がんマウスにOVA mRNA/LNPを投与する。またがんに対する予防効果や治療効果の作用機序について明らかにするため、細胞傷害性T 細胞の活性化について検討を行う。本研究で開発するmRNA/LNP技術を用いたがんワクチンの有効性に関してProof of Conceptの取得を目指す。
|