研究課題/領域番号 |
23K24029
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補助金の研究課題番号 |
22H02766 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
齊藤 達哉 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (60456936)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 微粒子 / 炎症 / サイトカイン / 細胞死 / 自然免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
現代の日本では、医療・栄養水準の向上により多くの国民が長寿を享受しています。一方で、環境汚染、過剰な栄養摂取や高齢化など、現代ならではの要因による疾患が問題になっています。国民が長きにわたり健康な生活を営む社会を実現するためには、微粒子による健康問題を解決することが不可欠です。これらの疾患の発症には、刺激性を有する微粒子を感知した免疫系を介して誘導される炎症が深く関わっていることが知られています。本研究では、微粒子が炎症を介して健康被害を引き起こすメカニズムを解明することで、新たな標的に対して働く抗炎症薬の開発基盤を整えることを目指します。
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研究実績の概要 |
現代の日本では、医療・栄養水準の向上により多くの国民が長寿を享受している一方で、環境汚染物質による呼吸器障害や過剰な栄養摂取による生活習慣病など、現代ならではの要因による疾患が顕在化してきている。これらの疾患の発症には、微粒子などを感知した自然免疫機構を介して誘導される非感染性の炎症が深く関わっている。本研究では、微粒子が炎症を誘導することにより健康被害をもたらすメカニズムおよび当該炎症を阻害する化合物に関する研究を行った。R5年度は、イメージングベースの化合物ライブラリースクリーニングを実施し、プライマリーマウスマクロファージにおいて、Srcファミリーキナーゼ(SFK)阻害剤であるDasatinib がシリカ粒子によるIL-1alphaとIL-1betaの放出を同時に阻害すること、その効果はシリカ粒子によるファゴリソソームの障害を妨げることに起因すると推測されることなどを明らかにした。リン酸化SFKの量がToll-like receptor刺激により上昇することから、SFKはTLRによるマクロファージのライセンシングに関わると推測される。また、シリカの粒子によりマウスにおいて肺障害を引き起こすモデルを用いて、Dasatinib を投与することにより、炎症が抑制され、組織障害が和らぐことを明らかにした。これらの成果をまとめて原著論文として報告した(Pan et al. 2023)。一方で、サイズのきわめて小さなシリカ粒子やプラスチック粒子は、貪食能が高いマクロファージなどの白血球だけでなく、貪食能が高いとは言えない細胞種、例えばケラチノサイトからのIL-1alphaの産生を誘導することを見出した。さらに、マクロファージやケラチノサイトを用いて、微粒子刺激に応じて細胞外に放出されるタンパク質を質量分析により包括的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微粒子が誘導するマウス肺障害モデルにおいて、炎症の誘導に関わる機構の存在を示した。また、微粒子による炎症を抑制する化合物を同定し、論文として報告した(Pan et al. 2023)。
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今後の研究の推進方策 |
(1)サイズの極めて小さいシリカやプラスチックの粒子が、貪食能の高いとは言えないケラチノサイト、上皮細胞、線維芽細胞などを刺激し、パイロトーシスを誘導するメカニズムを明らかにする。また、マクロファージ以外の免疫系の細胞の反応性についても検証する。好中球、マスト細胞などの顆粒球を想定している。さらに、当該細胞死応答が微粒子による組織損傷に関わるか否かを明らかにする。 (2)これまでの研究で、マクロファージやケラチノサイトを用いて、微粒子刺激に応じて細胞外に放出されるタンパク質のプロテオームを質量分析により明らかにしている。今年度は、ドメイン等の構造や過去の論文を参考に、当該放出タンパク質の中から炎症を制御する可能性がある分子をピックアップし、実際に微粒子による組織障害に関わるか否かを検証する。具体的には、当該分子のリコンビナントタンパク質を作製したり、当該分子を欠損する遺伝子改変マウスを作製したりすることにより、微粒子による炎症への関与を検証する。また、当該メディエーターの放出に関わる分子機構を明らかにする。NLRP3, Caspase1/11, Gasdermin d, Ninjurin1を欠損する遺伝子改変マウスや、細胞死に関わることが知られている分子に対する阻害剤などを用いて、解析を行う。
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