研究課題/領域番号 |
23K24032
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補助金の研究課題番号 |
22H02769 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小幡 史明 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40748539)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | ショウジョウバエ / 排出 / 代謝恒常性 / 炎症 / 代謝 / 尿細管 / 自然免疫 / 排出物 / 老化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ショウジョウバエを用いた研究により、排出によって保たれる個体レベルの代謝恒常性の分子機構を明らかにすることを目的としている。ショウジョウバエの排出器官であるマルピーギ管に着目し、その組織恒常性機構とその破綻による全身性の代謝生理異常について解析した。その結果、マルピーギ管で炎症が起こると、特定の抗菌ペプチドによる細胞傷害が起きることを見出し、その詳細な分子機構を解明した。さらにタンパク質摂食量に応じて、排出されるアミノ酸プロファイルが変化すること、そもそも排出されるアミノ酸に特異性があることを見出した。
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研究実績の概要 |
本研究では、ショウジョウバエ遺伝学を用いて、全身的な代謝恒常性維持に資する腎尿細管からの排出機構を解明する。尿細管から排出される老廃物を網羅的に定量し、その排出を制御する機構を明らかにする。今年度においては、排出物の網羅的定量を行った。その結果、排出物中の代謝物プロファイルを作成した。特にアミノ酸については、排出されるものとされないものを分類することができ、さらに栄養摂取量に応じてより排出される様になる特異的なアミノ酸プロファイルを発見することができた。次年度以降はその生理的意義やメカニズム解明を進めたい。また、排出物中のミネラル分をICP-MSにより定量することも試み、予備的ではあるがいくつかの金属分については定量結果を得ることができた。 さらに、排出器官であるマルピーギ管の炎症によって臓器障害が起こること、そのメカニズムとして単一の抗菌ペプチドが関わることを発見した。また、そのメカニズムが、腸がんモデルに見られるマルピーギ管傷害にも関わることを示唆するデータを得た。さらに成虫において時期特異的に排出器官を傷害するための新しい系を構築した。これにはマルピーギ管に特異的に発現する遺伝子のプロモーター配列に、薬剤依存的にGal4活性を誘導できるGeneswitchシステムを応用した。新たに作出したショウジョウバエでは、薬剤投与によってマルピーギ管にアポトーシスによる細胞死を誘導することが可能となり、これにより排出器官不全による個体の生理状態を可視化することに成功した。またマルピーギ管に発現するトランスポーターの機能解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常な若齢個体における排出物中の代謝物(老廃物)を液体クロマトグラフィータンデム質量分析計 (LC-MS/MS)を用いて高精度に定量する系をアップデート・分析条件の最適化をおこない、さらに丁寧に記述を行った。また代謝物に加えて、いくつかの金属元素についても分析を行い、広範な排出物のプロファイリングを行った。さらに、栄養条件を変化させた場合に排出物プロファイルがどう変化するかを解析した。また、摂食後吸収効率による変化を否定する目的で、ショウジョウバエ個体に直接アミノ酸カクテルをインジェクションすることで、そこから排出されるアミノ酸を網羅的に定量した。これらの排出物プロファイルがマルピーギ管の機能不全によりどう影響されるかを解析する目的で、マルピーギ管に特異的に発現する遺伝子のプロモーター配列に薬剤依存的にGal4活性を誘導できるGeneswitchショウジョウバエを新たに作出した。これにより、マルピーギ管にアポトーシスを誘導し、臓器の機能障害を誘導した。次年度はこのショウジョウバエを用いた解析を中心に行う予定である。 一方、マルピーギ管にImd経路活性化を起こした際に起こる排出障害を起こす遺伝子を遺伝学的にスクリーニングし同定した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、排出物プロファイルがマルピーギ管の機能不全によりどう影響されるかを解析し、論文としてまとめることを目標とする。炎症誘導モデルに加え、アポトーシス誘導モデルにより、マルピーギ管に細胞傷害を誘導した個体の排出物や生理変化をより詳細に解析する。次に、マルピーギ管に発現する特定のトランスポーターの機能解析を進め、その排出への影響や、生理状態・寿命への変化を詳細に解析する。これにより排出を担う因子とその生理機能を解明する。 昨年度は、マルピーギ管にImd経路活性化を起こした際に起こる排出障害を起こす遺伝子を遺伝学的にスクリーニングし、特定の抗菌ペプチドの重要性を発見することができた。当該抗菌ペプチドは、シグナルペプチド配列を持たない唯一の抗菌ペプチドであり、細胞傷害を起こす原因となっている可能性を突き止めている。次年度は、その機能解析を中心に、炎症性マルピーギ管傷害の分子機構解明をさらに進め、論文として発表する。また海外学会や国内学会でその成果について発表する予定である。
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