研究課題/領域番号 |
23K24041
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補助金の研究課題番号 |
22H02778 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
畠山 浩人 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (70504786)
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研究分担者 |
佐野 誠 (SanoMakoto) 日本大学, 医学部, 研究員 (70339323)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 脂質ナノ粒子 / 腹膜播種 / mRNA医薬 / 腹腔内投与 / 細胞外マトリックス / 間質 / がん治療 / 核酸医薬 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
研究開始時の研究の概要 |
腹腔内におけるがんの転移、腹膜播種は治療が難しく予後が不良である。一つの原因として投与された薬物の送達量が低いことが指摘されている。我々は腹腔内投与することで抗体や脂質ナノ粒子の移行量が、臨床での投与経路である静脈内投与と比較して約10倍送達量が向上することを明らかとしてる。脂質ナノ粒子に腹腔内投与よる核酸医薬分子送達と腹膜播種の制圧を最終的な目的として、移行メカニズムや免疫治療との併用による治療効果を検証し、腹膜播種治療としての有用性を実証する。
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研究実績の概要 |
腹膜播種では細胞外マトリックス(ECM)が増加し間質圧が亢進することで、押しつぶされた虚脱血管が誘導される。血流に乏しく全身投与の薬物の送達が困難で薬物療法の効果が得られない。本研究ではECMの除去を目指しLNPを用いたmRNA医薬の開発を進めている。これまでに腹膜播種マウスに対してイオン化脂質で構成する脂質ナノ粒子(LNP)を腹腔内(ip)投与後、腹膜播種へ効率的に移行すること、内封ルシフェラーゼ発現mRNAが効率的に発現し、LNPの腹腔内投与はmRNA医薬分子の送達経路として有用であることを示した。本年度は以下の項目を検討した。
(1) 腹膜播種移行後のLNP局在評価:LNPを腹膜播種モデルへip投与後の腹膜播種組織中のLNPの組織内局在を蛍光免疫染色で評価した。LNPは主に腹膜播種組織の周囲に分布していた。またLNPが局在する腫瘍微小環境の細胞を同定した。(2) ECM分解酵素mRNA搭載LNPのip投与:ECM分解酵素mRNA搭載LNPを腹膜播種モデルへip投与後の腹膜播種組織中のECM量を蛍光免疫染色で定量した。その結果、ECMが減少することを確認した。ECM分解酵素の発現は内因性の酵素が存在しており判別が困難であった。(3)ECM分解後に全身投与した抗体医薬の腹膜播種への移行評価:ECM分解酵素mRNA搭載LNPを腹膜播種モデルへip投与後に抗体医薬を静脈内投与した。腹膜播種へ移行した抗体医薬の組織内分布を蛍光免疫染色で評価した。未処置のマウスでは、抗体医薬は腹膜播種組織中の血管周囲に分布するのみであったが、マトリックス分解酵素mRNA搭載LNP投与群マウスでは抗体医薬は腹膜播種組織中の血管周囲のみならず組織内へ浸透する領域が観察された。しかし、腹膜播種の中で抗体医薬の移行が改善しない領域も存在していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究計画については予定通り検証が進んだ。細胞外マトリックス分解酵素発現mRNAの送達により細胞外マトリックスの減少や全身投与した抗体医薬の移行量の増加が確認され、LNPの腹腔内投与はmRNAの腹膜播種への送達として有用であり、本研究の治療戦略が機能することが確かめられた。以上より、本課題は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
細胞外マトリックス分解酵素の発現は内因性の酵素が存在しており判別が困難であった。そこで、Hisタグを付加したmRNA配列を検討する。また細胞外マトリックスの分解は組織全域では観られなかったため、細胞外マトリックス分解酵素を分泌型とするmRNA配列を検討する。またLNPの調製条件の変更による粒子径の制御、イオン化脂質の変更による表面電荷の制御、ヘルパー脂質の変更し、腹腔内投与後に腹膜播種組織の浸透に優れたLNPを構築する。これらを基に、腹膜播種組織全体で細胞外マトリックスの分解が誘導できるか検証する。また治療効果が期待できる抗体医薬や抗がん剤の全身投与と組み合わせ抗腫瘍効果がえら得るか評価し、本研究のLNPの腹腔内投与によるmRNA医薬送達戦略が腹膜播種治療に有用であることを示す。
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