研究課題/領域番号 |
23K24043
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補助金の研究課題番号 |
22H02780 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
赤沼 伸乙 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (30467089)
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研究分担者 |
泉尾 直孝 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (50722261)
細谷 健一 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (70301033)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 血液網膜関門 / 細胞膜透過ペプチド / 受容体 / トランスサイトーシス |
研究開始時の研究の概要 |
網膜は外部からの物質到達が非常に困難な組織である。この困難さのために、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性症、緑内障などの網膜疾患時には、網膜へと薬物を送達する技術が限られている。本研究では、循環血液から網膜への薬物移行を制御する血液網膜関門に存在する固有の細胞膜透過ペプチド (CPP) 輸送機構が、網膜疾患治療に有効な抗体を始めとした高分子医薬品の網膜デリバリーへの有効性を決定付けることを目的としている。
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研究実績の概要 |
これまでに内側血液網膜関門 (inner BRB) におけるangiopep-2を付加した低分子 (5/6-carboxyfluorescein, FAM)やタンパク質 (緑色蛍光タンパク質, GFP) がinner BRBを透過することが示唆された。2023年度においてはinner BRBと共に網膜、特に視細胞への薬物分布を制御する外側血液網膜関門 (outer BRB) におけるangiopep-2およびその付加化合物の輸送を担う分子実体を解明し、その輸送機構の同一性を明らかにすることを目的とした研究を実施した。ラットRPE細胞株であるRPE-J細胞におけるGFP取り込みはangiopep-2を付加することで有意に上昇したことから、angiopep-2付加によってouter BRBにおけるcargoの輸送が亢進することが示唆された。その輸送機構を明らかにするためangiopep-2を125I標識し、そのin vitro輸送を解析した。RPE-J細胞における[125I]angiopep-2の輸送は、エンドサイトーシス阻害剤によって有意に阻害されたことから、その輸送は膜動輸送様式であることが示唆された。さらにその輸送は、low density lipoprotein receptor-related protein (LRP) およびtoll-like receptor (TLR) の基質を共存させることで有意に阻害されたことから、outer BRBにおけるangiopep-2輸送にLRPとTLRが少なくとも一部関与することが示唆された。これら関与分子はinner BRBにおいてangiopep-2およびその付加体の輸送に関わるものとは異なることも示唆され、網膜内の各種細胞へのcargoの送達をコントロールする上での基礎となる知見と期待される。本研究成果は2024年度に開催される日本薬剤学会第39年会にて発表予定であり、現在投稿論文として成果をまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Inner BRBと協調的に網膜への薬物分布を制御するouter BRBにおいてもangiopep-2付加化合物・薬物の移行を促す機構が存在することが本研究を通じて明らかとなり、循環血液から網膜への中・高分子薬物の送達をCPPを利用して実現するための基礎が築かれてきたものと期待される。研究実績の概要項では詳述していないものの、outer BRBにおけるその輸送機構のinner BRBにおけるものとの同一性について考察は進めており、分子的視点を基とした透過ルートの決定付けは進むものと期待される。それに加えて、ストレプトゾトシン投与型糖尿病モデルラットや眼球内へのNMDA投与による緑内障モデルラットの作出にもすでに成功していると共に、これらラットからの網膜毛細血管単離を行うための連続ナイロンメッシュろ過法もすでに研究代表者は確立している (J. Control. Release 343, 434-442 (2022))。本年度の解析を通じて、angiopep-2およびその付加体の輸送を担う機構について、一部明らかになったことから、本分子について発現変化を検討することで、その有用性が実証されると期待される。 以上の点から、投稿論文などを介して未だ発表がなされていない成果はあるものの、全体として研究は順調に進んでいることから、"(2)おおむね順調に進展している"と評価される。
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今後の研究の推進方策 |
Angiopep-2付加体が病態時において網膜への薬物送達を可能とするかを機能的に明らかにするため、関与分子発現解析に加えて、[125I]angiopep-2および蛍光物質-angiopep-2複合体の末梢投与の網膜移行性を評価する。このangiopep-2関門透過ルートの有用性は、penetratinを始めとした他のCPPを用いた輸送解析結果と比較することで示す予定である。本解析に加えて、ヒト細胞株を用いた分子発現・輸送解析を実施することで、ラットin vivo・in vitro解析結果を基にした薬物送達戦略のヒトへの応用性を明らかにする。また、angiopep-2付加による巨大分子送達の将来的な可能性を示すため、angiopep-2標識したextracellular vesiclesを調製し、その輸送がcontrol vesiclesと比べて亢進しているかを解析する予定である。以上の解析を通じ、本知見の創薬応用に向けた基盤が構築されること、そして網膜への薬物送達に向けた血液網膜関門angiopep-2認識型透過ルートの有望性が提示されることが期待される。
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