研究課題/領域番号 |
23K24047
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補助金の研究課題番号 |
22H02785 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
齋藤 秀之 熊本大学, 病院, 教授 (40225727)
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研究分担者 |
成田 勇樹 熊本大学, 病院, 助教 (40614665)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 尿毒症物質 / 急性腎障害 / 慢性腎不全 / 腎線維化 / 心腎連関 / 硫酸転移酵素 / 尿管結紮 / 間質性線維化 / 間質線維化 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性腎臓病等の腎疾患時には、多様な尿毒素が血液や臓器中に高濃度に蓄積する。特にインドキシル硫酸は、蓄積臓器において酸化ストレスを誘因することで組織障害を惹起するだけでなく、尿毒症に付随した心血管系合併症のリスク因子であることが実証されている。尿毒素の除去治療としては人工透析もしくは経口吸着炭投与しか手段がないが、尿毒素除去には限界があり、尿毒素の蓄積を根源的に抑制する治療薬はない。本課題では、インドキシル硫酸の産生責任酵素 Sult1a1 の欠損動物を用い、腎機能障害・間質性線維化並びに心疾患の病態形成・進展における インドキシル硫酸の毒性学的役割を究明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、心腎連関(腎臓もしくは心臓が障害を受けると互いの臓器間で連鎖的に障害が惹起される病態現象)の介在因子としての硫酸抱合型尿毒素インドキシル硫酸の産生責任酵素 Sulfotransferase (Sult)1a1 の欠損動物を用い、腎機能障害・間質性線維化を典型とする慢性腎臓病(CKD)並びに心疾患の病態形成・進展におけるインドキシル硫酸(IS)及び Sult1a1 の毒性学的役割を究明すること、尿毒症及び心腎連関の薬物療法に基づく抑制を企図した創薬標的酵素としての可能性について検証することを目的とし、以下の研究を実施した。 1) 腎機能障害評価のためのマーカー測定並びに組織学的検査を実施し、尿管結紮誘発腎障害及び線維化形成におけるSult1a1欠損の影響について精査を行った結果、尿管結紮処置に伴う急性腎障害後に間質性線維化が顕著に亢進し慢性的な腎不全へ遷移する、いわゆるAKI-CKD transition所見が観察された。腎組織線維化形成に関与する種々の因子(TGF-β, PAI-1, Col1a1等)の発現変動について、Sult1a1欠損マウスと対照マウス間で比較を行った結果、線維化関連因子がインドキシル硫酸の腎組織蓄積と相関して変動することが判明した。 2) 心腎障害を同時にきたす病態モデルとして高血圧誘導性心不全マウスを作製して検討を行った。雄性 C57BL/6J 対照マウス並びに Sult1a1欠損マウスに片腎摘処置を行い、浸透圧ポンプを用いてアンギオテンシンIIの持続投与を行った。同時に生理食塩水を飲水させ、4 週間後に腎機能、IS 濃度および心臓障害を評価した。結果、Sult1a1欠損マウスにおける血清中 IS 濃度の低下に伴い、心肥大及び線維化の進展抑制が観察され、IS が腎障害に伴う心不全病態形成に連関因子として関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドキシル硫酸(IS)産生責任酵素 Sulfotransferase (Sult)1a1 の欠損マウスを用い、腎機能障害・間質性線維化を典型とする慢性腎不全(CKD)、並びに心疾患の病態形成・進展過程におけるIS及び Sult1a1 の毒性病理学的役割を分子的に究明することを企図した研究を展開した。結果、本酵素の活性・機能がISの産生・蓄積に主要な役割を担っていること、尿管結紮処置により誘発した急性腎障害後の腎組織線維化の形成・進展にISが介在因子として寄与していることを酵素欠損マウスを用いて実証することができた。また、高血圧誘発性腎障害・心不全モデルを用いて予備的に検討した結果、Sult1a1欠損マウスにおける血清中 IS 濃度の低下に伴い、心肥大及び線維化の進展抑制が観察され、IS が腎障害に伴う心不全病態形成に連関因子として関与していることが判明し、研究実施計画において想定した成果が概ね順調に進展しつつあることが確認できた。これまでに得られた研究知見を踏まえ、次年度以降は心腎連関の病態形成過程におけるIS並びにSult1a1の毒性学的役割を分子病理学的に解明することを企図し、mRNAシークエンス解析技術を導入して、介在する因子の分子同定等について解析と検証を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
1) Sult1a1ノックアウト(SULTKO)マウスを用い、心腎障害を同時にきたす病態モデルとして 高血圧誘導性心腎病態(ANS)モデルマウスを作成する。雄性 C57BL/6J (WT) 並びに SULTKOマウスに片腎摘処置を行い、浸透圧ポンプを用いてアンギオテンシンIIの持続投与を行う。同時に生理食塩水を飲水させ、4 週間後に血液及び臓器を採取し、腎機能、血液及び腎臓並びに心臓組織中インドキシル硫酸濃度を定量評価するとともに、心臓障害を評価する。 2) 同様の評価手法を用い、SULTKOマウスにおける腎機能変動、Nrf2の活性変化、腎組織障害の進展度並びに腎線維化形成の評価を行う。腎機能評価項目として血清中並びに組織中インドキシル硫酸濃度、腎機能マーカー、腎障害関連バイオマーカー、肝障害マーカーについて比較精査を行う。 3) 心臓(心機能・心組織)の病態評価として、心肥大(心/体重重量比)、心エコー(心機能、心肥大の評価;心室・左室内径中核壁厚、左室内径拡張・収縮期、拡張・収縮末期容積、左室会拍出量、心拍出量、駆出分画)、WGA染色(心筋細胞肥大)を定性・定量解析を実施し、対照マウスとSULTKOマウスにおける比較精査を行う。これらの測定手技については、本院・循環器内科医の指導のもと習得済みであり解析を展開しつつある。心臓組織における線維化形成に関与する種々の因子の発現について、SULTKOマウスと対照マウス間で比較解析を行い、心臓病態形成におけるインドキシル硫酸の病理的役割情報を収集する。さらに、心臓病態形成過程におけるインドキシル硫酸の役割を明らかにすることを目的とし、病態モデルマウスの心組織を用いてmRNAシークエンス解析を実施し、介在因子の分子同定を進めることで、心腎連関の病態形成過程におけるインドキシル硫酸の毒性学的役割の解明を加速する。
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