研究課題/領域番号 |
23K24050
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補助金の研究課題番号 |
22H02788 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
松永 民秀 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (40209581)
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研究分担者 |
岩尾 岳洋 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (50581740)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | ヒトiPS細胞 / 腸管上皮細胞 / ヒトiPS細胞由来腸管オルガノイド / 陰窩絨毛様構造 / 腸肝軸 / MPS / 小腸-肝臓連結デバイス / 腸管オルガノイド / 乳酸菌 / 陰窩-絨毛様構造 / ヒトIPS細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
生体を模倣した生理学的モデル構築のためにMPS(生体模倣システム)技術が注目されている。しかし、優れたモデル構築には細胞と培養系が共に最適化されることが必須である。ヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞は薬物透過試験等の評価系として優れている。一方、腸管オルガノイドは生体に近い機能と構造を有するが、薬物の吸収評価や腸内細菌との共培養は困難である。そこで、ヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞の利便性と腸管オルガノイドの機能性の両方の特性を併せ持った培養系を構築し、腸内細菌や免疫細胞との共培養等を可能にするデバイス開発により腸と肝との臓器間相互作用(腸肝軸)のin vitroモデルを構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
改良法にて分化誘導したヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞(hiSIECs)は、既存法と比較して小腸の薬物代謝酵素の遺伝子発現が上昇し、CYP3A4等の高い活性が認められた。また、栄養素吸収に関与する遺伝子の発現も増加した。さらに、RNA-Seqによる遺伝子発現解析を実施した結果、栄養素の吸収に関与する遺伝子の発現が従来法より高まっている可能性が示唆された。 閉鎖系の三層デバイスにおいて課題が明らかになったことから、新たなデバイスを設計した。試作品はアクリルを用いて切削加工した。PETとCOPを基材とする多孔質膜等の検討において、どちらもヒトiPS細胞由来二次元腸管オルガノイド(hi2DIO)の培養が可能であったが、耐久性よりPETが有用であった。モデル細胞としてCaco-2細胞とHepG2細胞を播種、培地を灌流したが細胞の剥離は認められなかった。一方、多孔質膜のデバイス本体からの剥離や表面張力による液面の上昇、TEER測定用電極の挿入等の新たな課題も明らかとなったため、設計の改良を行い、その試作品を作製した。 hi2DIOと乳酸菌について、共培養の条件等の検討を行った。グルコース不含ハンクス平衡塩溶液において、細胞の機能も低下せず乳酸菌の過剰増殖も認められなかった。そこで、予備実験としてセルカルチャーインサートにhi2DIOを播種し、乳酸菌と共培養した結果、TEER値、タイトジャンクションマーカー、小腸マーカー等変化がなく、乳酸菌の菌数も大きな変化が認められなかった。また、腸管の炎症モデルとしてTNF-αとIFN-γを添加したところ、TEER値低下、ルシファイエローの透過性上昇、小腸マーカーのvillin1やMUC2等のmRNAの低下が認められたが、乳酸菌との共培養においてはそれらの低下が有意に抑制された。以上の結果より、本共培養系は生体のモデルとして有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規培養法にて作製したhiSIECsの機能解析を行った。また、当初予定していた閉鎖系の三層デバイスについては、試作品の検討において細胞を播種して接着が確認できた。しかし、灌流を開始することで細胞の剥離が認められるなどいくつかの課題があることが判明し、その改善には多くの時間を要することが予想された。そこで、新たに基本設計からやり直すことにしたが、今年度中に試作品を作製することができた。また、新たに設計したMPSの試作品を用いて細胞の接着、多孔質膜の選定並びに灌流試験も行った。新たに設計したデバイスでは培地の灌流実験においても細胞の剥離は認められなかった。一方、表面張力による液面の上昇など改善点が明らかとなり、改良した試作品も作製した。また、通常のセルカルチャーインサートを用いた検討ではあるが、デバイスの設計と並行して乳酸菌とhi2DIOとの共培養の条件を確定することができた。さらに、hi2DIOを用いた腸管の炎症モデルに対する乳酸菌の効果に関する検討において、生体と同様な効果が認められた。本結果は、乳酸菌の評価においてhi2DIOはモデル細胞として有用な細胞であることが明らかとなった。新たに作製したデバイスにhi2DIOによる陰窩-絨毛様構造の形成が確認できた。以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の検討においてhiSIECsの機能解析が終了したことから、本細胞を試作品の改良型新規デバイスに搭載して検討を行う。また、hi2DIOと乳酸菌との共培養については、培養条件を決定することができたことから、2024年度は腸球菌について検討を行う予定である。具体的には、乳酸菌と同様複数の培地等で培養し、菌の異常増殖が見られない培地について検討すると共に、hiSIECsあるいはhi2DIOと共培養可能な培地の更なる検討を行う。腸球菌の場合、いくつかの培地を用いた予備的な検討において過剰増殖がみられ、培地の選択が難航することが予想された。そこで、培地の選定が困難な場合は、菌の増殖制御において腸管からの吸収が少なく静菌作用を有する抗菌薬等の利用を試みる。各条件が確定した後に、試作品の改良型新規デバイスを用い、善玉菌として乳酸菌、悪玉菌として腸球菌を用いて腸管上皮のバリア機能に対する作用について検討する。また、腸管バリア機能と肝細胞(PXB-cells:ヒト化マウス由来ヒト初代肝細胞)に対する影響について検討を行い、腸と肝臓の臓器間相互作用(腸肝軸)in vitroモデルの構築について評価する予定である。
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