研究課題/領域番号 |
23K24052
|
補助金の研究課題番号 |
22H02790 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
出口 芳春 帝京大学, 薬学部, 教授 (40254255)
|
研究分担者 |
萩原 将也 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 理研白眉研究チームリーダー (00705056)
久保 義行 帝京大学, 薬学部, 教授 (20377427)
功刀 浩 帝京大学, 医学部, 教授 (40234471)
川端 健二 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬資源研究支援センター, プロジェクトリーダー (50356234)
黒澤 俊樹 帝京大学, 薬学部, 助教 (90839466)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
|
キーワード | 血液脳関門 / 3次元培養チップ / ヒトiPS細胞由来脳毛細血管内皮細胞様細胞 / ヒト脳脊髄液関門細胞 / トランスポーター / ヒト不死化脳脊髄液関門細胞 / ヒトiPS細胞 / 血液脳関門モデル細胞 / 血液脳脊髄液関門モデル細胞 / マイクロフィジオロジカルシステム / 3次元チップ / ヒトiPS細胞由来脳関門細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、ヒト脳関門を反映したin vitro 3次元脳関門チップを創製し、その品質と臨床上の有用性を明らかとすることである。本研究では、in vivoのBBBを反映する細胞をヒトiPS細胞から分化誘導し、さらにMDR1を過剰発現させた細胞の作製する。BCSFBに関してはヒト脈絡叢上皮細胞から樹立されたHIBCPPを用い、機能性タンパク質の網羅的発現解析および主要トランスポーターの機能を解析する。また、BBBとBCSFB細胞を同時に評価できる3次元脳関門チップを作製する。この脳関門チップを用いた薬物の脳移行性評価を実施し、ヒトの臨床データとの一致性および予測精度を検証する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒト脳関門を模倣したin vitro 3次元脳関門チップを創製し、その品質と臨床上の有用性を明らかとすることである。2022年度はMDR1(P-gp)遺伝子を組み込んだレンチウイルスを未分化ヒトiPS細胞(IMR90-4)に導入後、分化・誘導プロセスの最適化によってP-gp発現ヒトiPS細胞由来脳毛細血管内皮細胞様細胞(P-gp/hiPS-BBB細胞)を得た。 P-gp遺伝子導入未分化ヒトiPS細胞(P-gp/hiPS細胞)およびmock/hiPS細胞におけるP-gp mRNAの発現はmock/hiPS細胞と比較して約450倍の上昇がみられた。一方で、未分化マーカーのnanogとoct3/4の発現は各細胞間で有意に変化しなかった。次にこれらの未分化細胞を分化・誘導後のP-gp/hiPS-BBB細胞の機能を評価した結果、密着結合性はTEER値として2000Ω・cm2以上であった。さらに、得られた細胞の輸送機能を評価するにあたり、各種ABCおよびSLCトランスポーターのmRNA発現量を解析しP-gp/hiPS-BBB細胞とmock細胞で比較した。その結果、P-gp遺伝子に関してはmock細胞に比べてMDR1/hiPS-BBB細胞で約1000倍の上昇を示した一方で、その他のトランスポーター分子の遺伝子に関しては両細胞間で大きく変化しなかった。 マイクロフルイディック3次元BBBチップに関しては、今年度はOrganoPlate 3-lane (MIMETAS社製)のデバイスを用いてmock/hiPS-BMECsを中心に細胞の生育状況、ゲル層への接着、密着結合性にすいて検討した。その結果、これら検討項目のどれもがトランスウェルデバイスでの培養と同様であり、かつ毛細血管様3次元立体構造を形成させることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ヒト脳関門を反映したin vitro 3次元脳関門チップを創製し、その品質と臨床上の有用性を明らかとすることである。2022年度はヒトiPS細胞由来脳毛細血管内皮細胞様細胞(hiPS-BBB細胞)にMDR1(P-gp)遺伝子を搭載したレンチウィルスベクターを導入し、分化・誘導プロセスの最適化によってMDR1遺伝子の発現量のみが高い高品質のP-gp/hiPS-BBB細胞を得ることに成功した。また、3次元マイクロフルイディックデバイスに関して、OrganoPlate 3-lane (MIMETAS社製)のデバイスを用いて細胞の接着性、生育状況、3次元立体構造の形成等について検討し、ヒトiPS-BBB細胞を用いた研究では世界で初めて3次元立体構造の形成に成功した。 本研究の計画の1つにヒトiPS細胞から血液脳脊髄液関門(BCSFB)を作製することがあった。当初の計画は十分な文献調査で構築されたものの、ヒトiPS細胞からBCSFB細胞への分化・誘導が困難であった。この件について研究分担者と十分に協議した結果、3次元脳関門チップの構築には方法の見直しが必要であることが判明した。BCSFBの代替細胞であるHBCPP細胞を使用することにし、石川博博士(筑波大学)およびDr. Horst Schroten(マンハイム大学)との間でMTAを取り交わし日本人女性の側脳室脈絡叢における乳頭腫から樹立されたBCSFB細胞のHIBCPP細胞を入手した。今後はP-gp/hiPS-BBB細胞とHIBCPP細胞を用いて脳関門チップ(脳関門マイクロフィジオロジカルシステム)を構築することにした。
|
今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、BBB薬物輸送機構の新規解析法の開発やペプチド輸送機構の解明などに加え、ヒト不死化脳毛細血管内皮細胞(hCMEC/D3細胞)を活用して多様な薬物の輸送機構を解明した実績を有する。このことから近年、hiPS-BBB細胞に関する研究にも着手し、これが優れたBBB代替細胞となる可能性を報告した。この新しい試みは国際的に高い評価を受けている。本課題研究ではヒトBBB代替細胞の性能の向上およびヒトBCSFBの代替細胞の機能評価、およびこれらを統合し、ヒト臨床および創薬に有益な脳関門デバイスを構築することである。 今後の研究の推進方策として、本年度に作製したP-gp/hiPS-BBB細胞を用いた薬物の輸送機能解析、マイクロフルイディック3次元立体構造を形成させた条件下での輸送機能を評価する。さらには脳脊髄液関門モデルとしてHIBCPP細胞の機能評価を行うとともに、この細胞がヒトBCSFBモデルとして適切であるかの評価を行う。最終的にはP-gp/hiPS-BMECsとHIBCPPを統合した脳関門モデルの作製を目標とする。最終的には、本研究課題で構築した脳関門モデルを用いてヒト脳内濃度の予測を試みることに加え、ヒト臨床検体(血液およびCSF)との相関性を検証する。
|