研究課題
基盤研究(B)
エクソソームは、タンパク質や脂質などを内包する直径30~100 nmの細胞外小胞であり、それを供給する細胞と受け取る細胞との間で情報伝達(臓器間/細胞間コミュニケーション)の仲介役として働く。エクソソーム内包物が、受け取る側の細胞機能に影響を及ぼし、神経変性疾患などの要因となることが示唆されており、エクソソーム関連因子を標的とした創薬への期待が高まっている。本研究では、超高輝度光イメージングと質量顕微鏡による生体分子イメージングを用いて、細胞レベルと個体レベルでUBL3関連分子の空間的挙動の解明を目指す。将来のUBL3-エクソソーム経路を標的とした薬剤開発に発展させていきたい。
UBL3関連分子の空間的挙動の解明を目指す本研究課題において、1) UBL3関連分子の同定、2) UBL3関連分子の細胞内イメージング、3) マウス個体におけるUBL3関連分子のイメージングと組織形態評価、について成果を得た。1) MGST3のノックダウンにより抑制されるUBL3とα-Synとの相互作用が、過剰な酸化ストレス条件下でも相互作用が抑制されることを発見し、論文報告した(Yan J et al. Biomedicines, 2023)。MGST3の強発現により、UBL3とα-Synの相互作用を強める効果があることなども確かめた。2) 蛍光が非常に安定であるmStayGoldや、pHセンサー蛍光タンパク質であるSRAIなどにUBL3を融合させたものを構築し、共焦点顕微鏡と超解像度顕微鏡でその局在を確認した。mStayGold-UBL3については、安定発現細胞株(MDA-MB-231)を樹立した。3) 質量分析イメージングにより、Ubl3-KOマウスで変動する分子を腎組織と脳組織とで同定した。Ubl3-KOマウスにおいて、腎組織の微細構造について電子顕微鏡解析を行った。Ubl3ノックアウトマウス(Ubl3-KO)と病態関連遺伝子トランスジェニックマウスとの交配マウスを樹立した。神経変性疾患との関連が報告されている分子の発現について免疫染色による観察で検証した。アデノ随伴ウイルスでUBL3をマウス脳で強発現させ、病態関連分子の発現を免疫染色による観察で検証した。
1: 当初の計画以上に進展している
R4年度に構築したSplit-Gluc系を用いて、UBL3とα-Synの相互作用に対するMGST3ノックダウンと酸化ストレスの効果について論文発表したことに加え、さらにMGST3の強発現の効果をRT-PCRや共焦点顕微鏡観察により多角的に検証(論文執筆中)した点が、当初の計画以上であると評価できる。従来の蛍光タンパク質を高度化したmStayGoldなどを用いてUBL3の局在を共焦点顕微鏡観察に加え超解像度顕微鏡でも確認できたことは、当初の計画以上であり、R6年度の細胞生物学的解析の測定基盤の確立という点で評価できる。計画にあったUbl3-KOマウスの腎組織微細構造の電子顕微鏡解析に加え、Ubl3-KOマウスと神経変性疾患モデルマウスとの交配マウスおよびアデノ随伴ウイルス発現系を用いた神経組織学的解析系を確立したことは、当初の計画以上であると高く評価できる。
マーカータンパク質(CD63)との二重蛍光染色や免疫電子顕微鏡により多胞体への局在が示されているUBL3が、他の経路にも分技して存在するかどうかをR5年度に構築したmStayGold-UBL3やSRAI-UBL3を用いて検証する。これにより、UBL3の細胞内挙動を詳細が明らかになることが期待される。また、UBL3による凝集体伝播への効果を検証するために、Hibit発光システムやmStayGoldを用いて凝集体タンパク質を定量的に解析する実験系を構築する。さらに、凝集体のクリアランスを検証するために、ヒト神経芽細胞腫細胞株とミクログリア細胞株との共培養系を構築する。進行性の神経変性疾患では特定のタンパク質の凝集体が伝播していくことが知られている。精製した凝集体タンパク質を野生型マウスとUbl3-KOマウスの頭蓋内に注入する伝播モデルにより、UBL3の凝集体伝播への効果を組織学的に評価する。以上の推進方策により、特に中枢神経組織におけるUBL3の細胞内外の空間的挙動の解明を進める。
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すべて 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 5件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 18件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件) 備考 (2件)
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