研究課題/領域番号 |
23K24059
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補助金の研究課題番号 |
22H02797 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
武内 章英 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (90436618)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 神経超長鎖遺伝子 / 高次遺伝子発現ネットワーク制御 / RNA結合タンパク質 / Sfpq / 液-液相分離構造 / 超長鎖遺伝子 / 高次遺伝子発現ネットワーク制御機構 / 液ー液相分離構造 / クロマチン制御 / エピゲノム制御 / 自閉症スペクトラム(ALS) |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類特有の非常に長い遺伝子(超長鎖遺伝子)の発現制御機構は、神経発生や脳の形成・発達期において重要な役割を担っており、さらにその破綻が神経変性疾患の原因となる。本研究では、高等生物に備わった神経超長鎖遺伝子を安定発現させるための高次遺伝子発現ネットワーク制御の分子基盤を明らかにし、脳の発生・発達を制御する遺伝子発現調節機構の包括的な理解、さらに神経難病発症の分子病態解明を行う。
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研究実績の概要 |
哺乳類は特に脳神経系において100kbpから2,000kbpを超える非常に長い遺伝子(超長鎖遺伝子)を多数発現しており、これらは神経発生や脳の形成・発達期において特に重要な役割を担うとともに、その破綻が神経変性疾患や精神疾患の原因となる。我々はこれまでの研究で、RNA結合タンパク質SfpqがRNA上に転写と共役して結合し、さらにSfpq同士および他のRNA結合タンパク質と共に標的RNAに連続的に結合することで、長いRNAを安定化しながら、転写の活性化因子である CDK9 を局所に呼び込み安定的に転写を活性化・持続させるメカニズムを明らかにしてきた。本研究では、高等生物に備わった神経超長鎖遺伝子を安定発現させるための高次遺伝子発現ネットワーク制御の分子基盤を明らかにし、脳の発生・発達を制御する遺伝子発現調節機構の包括的な理解、さらにALS発症の分子病態解明を目的とする。 本年は、超高解像度イメージング等を用いた解析により、Sfpqが核内に液―液相分離構造をベースにしたメッシュ様構造を形成することを明らかにした。Sfpqは核酸上に制御複合体を形成しうることから、このRNA上の複合体をRNA-histone構造と命名しさらに解析を進めた。Sfpqの形成する転写制御複合体が液―液相分離構造を主体とすることから、Sfpqと相互作用する分子群を共免疫沈降、さらに近接分子依存性ラベリング法による免疫沈降の両方を行い、精製タンパク質を質量分析法することにより相互作用分子の網羅的な同定に成功し、神経特異的なRNA依存性の高次遺伝子発現制御複合体の構成分子を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は以下の2つにつき研究を実施した。 1) 液-液相分離構造の制御機構の解析 Sfpqの形成する核内構造を解析するため、共焦点顕微鏡および超高解像度イメージング等を取り入れた解析を行い、Sfpqが核内に液-液相分離構造をベースにしたメッシュ様構造を形成することを明らかにした。 2) 神経特異的なRNA依存性の高次遺伝子発現の制御複合体構成分子の網羅的な同定 さらにSfpqが核内に液-液相分離構造をベースにして形成する遺伝子発現制御複合体の解析を行った。RNA依存性の高次遺伝子発現制御複合体内の相互作用分子の網羅的な同定のため、当初計画した免疫沈降法を行った。また学会等で得た情報から、液-液相分離構造の構成分子の同定には免疫沈降法だけでは不十分であるということが近年徐々に言われるようになってきたことから、分子の出入りが自由で相互作用の弱い分子群の集合体である液―液相分離構造の解析に適した新手法である近接分子依存性ラベリング法を用いた免疫沈降を新規に取り入れることにした。実験系のセットアップや予備実験等による検討の後に近接分子依存性ラベリング法を用いた免疫沈降を実際に実施し、精製したタンパク質を質量分析することにより網羅的な相互作用分子の同定に成功した。2つの手法を組み合わせることで、Sfpqを中心とした遺伝子発現制御複合体の構成分子を明らかにすることができた。 一連の研究の結果から、当初予想していなかった神経特異的なRNA依存性の高次遺伝子発現制御複合体の全容とその制御メカニズムが明らかになりつつあり、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、同定した高次遺伝子発現制御複合体が予想に反しかなり大きな複合体であることが判明し、相互作用分子も各種の次元の異なる遺伝子発現制御因子を含んでいることが明らかとなった。今後これらの構成因子のGene Ontology解析、さらに個々の分子の機能につき詳細なデーターベース解析を行い、相互作用解析からこれらの分子群の機能解析を行うことで高次遺伝子発現制御複合体と制御メカニズムの全容解明を目指す。高次遺伝子発現制御複合体による遺伝子発現制御メカニズムの解析は、RNA-seqによるmRNAの発現やスプライシング制御解析、ChIP-Seqによるエピゲノム・クロマチン制御解析により行う。さらにSfpqの構造解析から、核内の液―液相分離構造をベースにしたメッシュ様構造の形成に必須なドメインを同定し、高次遺伝子発現制御において同定したドメインがどのような機能を果たすのかを明らかにすることにより、核内の遺伝子発現制御複合体の構造と機能の関係を明らかにする。今後さらに、液-液相分離構造の制御機構の解析のためにSfpqのドメイン欠損体の作成とその結果引き起こされる液-液相分離構造の異常の解析と、Sfpqのドメイン欠損体による遺伝子発現制御異常を同時に解析することで、RNA依存性の高次遺伝子発現制御複合体の構造と機能の関係を明らかにする。
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