研究課題/領域番号 |
23K24070
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補助金の研究課題番号 |
22H02808 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48030:薬理学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷内 一彦 東北大学, 先端量子ビーム科学研究センター, 研究教授 (50192787)
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研究分担者 |
吉川 雄朗 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70506633)
中村 正帆 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (80734318)
原田 龍一 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (60735455)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 分子イメージング / ヒスタミン / ヒスタミン分解酵素 / ヒスタミンN-メチル転移酵素 / モノアミン酸化酵素B / ヒスタミン代謝酵素 阻害薬 / 新規ナルコレプシー治療薬 / ヒスタミン神経系 / ヒスタミン代謝酵素 / 阻害薬 / ナルコレプシー / 過眠症 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒスタミン・システムは現在まで多くの薬理学研究の対象であり、H1、H2受容体拮抗薬の開発者はノーベル医学生理学賞を受賞し、創薬により人類に多大な貢献をしている。ヒスタミン神経系は重要な学術的研究テーマであり、ヒスタミンH3受容体拮抗薬はナルコレプシー治療薬として欧米で承認されている。しかしヒスタミン系にはまだ解決されていない幾つかの重要な課題が残っている。本研究は、解決すべき重要な課題について組織特異的遺伝子ノックアウトマウス、光遺伝学などの最先端基礎研究を用いてヒスタミン系の薬理学研究の新しい展開を図り、さらに分子イメージング研究を融合させてヒスタミン神経系の創薬研究を実現することである。
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研究実績の概要 |
ヒスタミン代謝酵素(HNMT)阻害薬がナルコレプシーモデルマウスにおける入眠発作を抑制することを今まで明らかにしてきた。今年度はHNMT阻害薬の入眠発作抑制作用をナルコレプシー治療薬として既に欧米で承認されているピトリサントと比較した。HNMT阻害薬はピトリサントと比較し優位に入眠発作の回数を減少させることが確認でき、HNMTが薬物標的として妥当であることを示すことができた。さらにHNMT阻害薬の覚醒作用、睡眠減少、入眠発作抑制作用の機序について検討を行った。HNMT阻害薬による覚醒量の増加とノンレム睡眠量の減少はヒスタミン1型受容体を介したものであるが、レム睡眠と入眠発作の抑制にはヒスタミンH1受容体およびH2受容体は関与していないことが示された。そのため、HNMT阻害薬がどのように入眠発作、またはレム睡眠量を減少させたかについては今後の検討課題の一つとなった。また、HNMT阻害薬を臨床応用する場合、末梢組織におけるヒスタミン量を高め、そのことが副作用につながる可能性が考えられた。そこで、マウスにHNMT阻害薬投与後、胃および皮膚におけるヒスタミン量について検討したが、変化は認められなかった。また胃や皮膚においてはヒスタミンの代謝産物であるメチルヒスタミンの量が極めて低く、これらの臓器においては異なる除去機構が機能している可能性も考えられた。これらに加え、新規HNMT阻害薬創薬研究は継続しており、スクリーニングにより新たな候補化合物を複数得ることができた。一部は脳内ヒスタミン量を増加させることを確認しており、臨床応用可能な薬剤の創生に繋げたい。またヒスタミン系を標的とした新規中枢作用薬開発のための分子イメージング研究も実施した。Flexibleリンカーとrigidリンカーについて標識合成を行った結果、rigidリンカーの方が標識効率が高く、脳への移行の可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒスタミン増加効果を有するピトリサントは2016年により欧米で使用されているナルコレプシー治療薬である。本年度はHNMT阻害薬とピトリサントの薬効についてナルコレプシーモデルマウスを用いて検討を行い、その結果HNMT阻害薬がより強い薬効を有することを示すことができた。またHNMT阻害薬の作用機序についても検討を行い、覚醒やNREM睡眠に対してはH1受容体を介して行うことが新たに示された。一方でREM睡眠や入眠発作に対してはH1受容体やH2受容体は関わっていないことが確認されたため、今後新たな課題としてメカニズム解析に取り組んでいきたい。 またHNMT阻害薬が末梢組織のヒスタミン濃度に与える影響に対しても検討を行い、胃や皮膚におけるヒスタミン濃度に対しては影響を与えないことが確認された。今回については急性単回投与の結果であることから慢性的にHNMTを阻害した系において追加で確認を行いたいと考えている。 HNMT阻害薬のスクリーニングについても継続して実施し、新たな化合物を見いだすことができた。これらの薬物動態や薬効についても分子イメージング等を用いて検討を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
HNMT-flox:CAG-CreEsr1マウスの解析を行い、HNMTの機能解析を推進する。特に、末梢臓器においてHNMTがヒスタミン代謝にどの程度関与しているかについて明確にすることはHNMT阻害薬の副作用について考えるために極めて重要な要素であると考えている。今年度までに得られた新規HNMT阻害薬の候補化合物に関して、まず有効性を示すため脳室内投与を行い、脳内ヒスタミン量を増加させるかについて検討を行う。実際に脳内ヒスタミン量を増加させた化合物に関しては、ナルコレプシーモデルマウスの脳室内に投与し、入眠発作を改善させるかについて検討を行う。また、ヒット化合物の新規探索、現行の化合物の構造展開については引き続き行い、新規HNMT阻害薬の開発につなげる予定である。またヒスタミン増加によるREM睡眠や入眠発作の減少がH1受容体やH2受容体非依存性に生じることが確認された。これらについて更に研究を継続することでHNMT阻害薬による治療効果についての分子メカニズムがより詳細に解明されることが期待される。
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