研究課題/領域番号 |
23K24113
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補助金の研究課題番号 |
22H02851 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
五條 理志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90316745)
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研究分担者 |
横田 貴史 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教授 (60403200)
小坂 仁 自治医科大学, 医学部, 教授 (90426320)
上 大介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80415588)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | ミトコンドリア / 血液幹細胞 / 細胞移植 / ミトコンドリア病 / 遺伝子導入 / ミトコンドリアゲノム異常 / ミトコンドリア置換 / 骨髄移植 / ミトコンドリアゲノム置換 / mRNA transfection / Single cell ddPCR / Mitochondrial DNA / MirC / 血液幹細胞移植 |
研究開始時の研究の概要 |
ミトコンドリア病は現在も根治治療法がない希少難病である。特にミトコンドリアゲノムに変異を有するものは、治療の方法論すらな いのが現状であり、体細胞においてミトコンドリアゲノムに直接介入する方法はなかった。本研究の基盤は内在mtDNAを除去してニッチを作成 し、外来ミトコンドリアの取り込みをマクロピノサイトーシスによって亢進させ、mtDNAを外来のものと置換する技術である(Mitochondrial genome replaced Cell: MirC)。この技術を血液系に表現系を持つミトコンドリア病の根治療法開発のProof of Conceptを本研究にて獲得することを目標として いる。
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研究実績の概要 |
mRNA gene transfectionは、Nucleotideの改変、in vitro transcriptionで作成されたmRNAの精製、Transfection法の検討を行った。mRNA Therapeuticsの発展を踏襲し、Pseudouridineの使用とHPLCによる精製を加えることで、従来の方法で認められたIL-1, IL-6, TNF-αなどの炎症性サイトカインの分泌が抑制された。また、Transfectionは、NucleofectorからCAR-T療法でmRNA transfectionにおいてInnate immunityを抑制していると報告のあるMaxCyte社製Electroporatorへの変更による有意な変化を認めることはできず、Nucleofectorを用いた遺伝子導入を基本プロトコールとすることとした。 対象細胞はPeliminaryではc-kit+細胞を用いてNZBマウスを用いて置換されたmtDNAの生着をconventional SNP TaqMan qPCR assay及びsc-ddPCR Heteroplasmy assayで確認したところ、ミトコンドリア共培養から1週間ではドナーゲノタイプが50%を越えており、完全置換された細胞も確認された。遺伝子発現変化をRNA seqを用いて解析した結果は、ミトコンドリア呼吸能に関する発現に変化を認めた。移植実験は現在も進行中であるが、血液系の再構築を行った後に、ドナー由来血液系細胞は置換されたミトコンドリアゲノタイプを維持していることが確認された。このミトコンドリアゲノムの安定性の評価及び、その表現系の変化を2年目の検討課題とする。加えて、置換されたミトコンドリアゲノタイプがホスト細胞にいこうしていることが認められ、その移行メカニズムの検討も今後の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリアゲノム削減が本プロトコールの核心であるが、血液幹細胞への一時的な遺伝子導入をmRNAを用いて行うことは1つの大きな障害であった。実験計画では、1年目にその課題を克服するための実験を行う予定としていた。Nucleofectorを用いるプロトコールを最適化させること、mRNAをPseudouridineを用いること、HPLCを用いることで、細胞への障害性を最小限にして、一時的ミトコンドリアゲノム削減を可能なものにすることができた。1年目の1つの目標はクリアできたと考えている。 もう一つのin vivoにおけるミトコンドリア置換細胞移植の実施とその解析についてである。実験計画では、c-kit+Sca1+Lineage-CD34-CD150+を用いての移植実験を実施し始めるまでを1年目の到達点として設定した。血液幹細胞でのミトコンドリア置換は、そのviabilityに大きな障害をもたらすことが判明し、c-kit+細胞を対象にin vivoでの実験を行った。結果は、生着したドナー細胞内において、置換に用いた外来ミトコンドリアゲノムは生体内でも安定して存在することが確認された。細胞種は幹細胞から前駆細胞に変更したが、置換ミトコンドリアゲノムの安定した存続は目標をクリアするものであった。更に、外来ミトコンドリアゲノムが宿主細胞に移行したことは、最近のミトコンドリアの細胞間移行が様々な分野で発表されている中で、その1つの例示として大きな意味合いを持っており、実験計画は順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリアゲノム置換されたc-kit+細胞を動物に移植することの継続し、ゲノム解析をより詳細に検討することで、その安定性と、ミトコンドリアゲノムの水平移行の現象を観察する。外来ミトコンドリアゲノムの存在が、表現系の変化を及ぼすかどうかに関しては、それを検出するための適切なモデル構築を始め、プロテオミクスとメタボローム解析の予備的なデータ取得実験を行う。 もう一つのミトコンドリアゲノム移行に関しては、in vitroにおいて様々な細胞での組み合わせによる共培養を行い、ミトコンドリアゲノム移行が行われているかどうかを検討する。加えて、様々な外的刺激、ストレス環境下での移行の変化を観察する。翌年の移行の基盤にある分子メカニズムの解析を行うための、素材の取得を行うこととする。
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