研究課題/領域番号 |
23K24129
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補助金の研究課題番号 |
22H02867 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
久堀 智子 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20397657)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | ユビキチン / レジオネラ / オルガネラ / エフェクター / ユビキチンリガーゼ / 液胞 / 細菌感染 / ミトコンドリア |
研究開始時の研究の概要 |
病原細菌レジオネラは感染宿主細胞の膜輸送系を操作し、増殖のニッチとなる固有の液胞を構築する。このプロセスは細胞小器官の膜動態に関わる様々な宿主タンパク質を制御することによって達成される。本研究課題では宿主 Rab GTPase のひとつである Rab10 に着目し、ユビキチンリガーゼを含むレジオネラの持つ多様な酵素群がどのように働いて Rab10 の細胞内局在を変えていくかを解析し、レジオネラ酵素群の多層的な作用が生み出す細菌の感染戦略を解き明かすことを目指した。
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研究実績の概要 |
昨年度までの研究成果として、レジオネラユビキチンリガーゼ群が、宿主細胞の膜輸送系を制御する GTPase のひとつである Rab10 のユビキチン化に寄与することを明らかにした。作用するユビキチンリガーゼの中でこれまで役割が未知であった SdcB は感染後期にレジオネラ液胞に集積することから、感染後期において Rab10 の局在制御に重要な働きを持つことが示唆された。この結果を受けて、今年度は Rab10 の局在における SdcB の働きと、SdcB の機能をさらに上流から制御するレジオネラエフェクターの探索とその役割の解析に重点を置き、研究を進め、以下の結果を得た。 1)SdcB を含むレジオネラユビキチンリガーゼの協調的作用により Rab10 はユビキチン化され、その結果レジオネラ液胞に係留されることが示された。 2)レジオネラの持つ MavC がトランスグルタミナーゼ活性により SdcB に特殊なユビキチン修飾を施すことを明らかにし、修飾部位の同定に成功した。 3)SdcB が MavC によって修飾されるとユビキチンリガーゼとしての活性を失い、その結果、感染後期の Rab10 のユビキチン化を介したレジオネラ液胞への係留が解除され、液胞から乖離することが示された。 これらの結果から、レジオネラは多様なエフェクタータンパク質の作用を時間空間的にコントロールすることで、Rab10 の感染初期の液胞への係留と感染後期におけるその解除という巧妙な操作を実現していると考えられた。本研究成果は、増殖ニッチを確立するために、数多くのエフェクタータンパク質を多層的に作用させる病原細菌の感染戦略の一端を明らかにしたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
レジオネラエフェクター群が作用する対象として同定された Rab10 の細胞内動態の解析が大きく進展し、ユビキチン修飾とレジオネラ液胞への係留との関係性が明らかとなり、さらに上層に位置する新たなレジオネラエフェクターの特定、及びその機能解明を達成できた。これらの結果はレジオネラエフェクター群の機能の多層性がもたらす感染戦略の分子基盤を示したものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
レジオネラ液胞の成熟化過程において、細胞内のオルガネラ膜成分を取り込んでいくためにレジオネラエフェクターがどのように作用するかに着目した解析へと発展させていきたい。特に、感染後期に液胞の成熟化に関与すると想定しているミトコンドリアとの相互作用に重点をおく。具体的には、 (1)SdcB が相互作用するタンパク質群を網羅的に解析し、ミトコンドリアタンパク質の有無を検証する。 (2)ミトコンドリアタンパク質、小胞体とミトコンドリア融合に関与する細胞内制御因子などを対象とし、SdcB の活性に依存した局在変化や活性の変化などを解析する。 (3)これらの解析結果を Rab10 の働きとの関連性において検証する。 これらの解析を通じて、液胞の成熟化過程においてミトコンドリア膜成分を利用するという仮説の検証、およびその分子メカニズムの解明への足がかりとする。
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