研究課題/領域番号 |
23K24131
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補助金の研究課題番号 |
22H02869 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
垣内 力 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (60420238)
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研究分担者 |
寺尾 豊 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50397717)
古田 和幸 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (50644936)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | コアゲノム / 2-チオウリジン / 陽イオン性界面活性剤 / 枯草菌 / 糖転移酵素 / 潜在的病原性 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに代表者は、病原性因子の多くが非病原性の細菌に保存されていること、ならびに、非病原性大腸菌から高病原性の大腸菌変異株が得られることを発見した。これらの結果は、非病原性細菌が潜在的な病原性機能を有することを示唆している。本課題では、グラム陰性とグラム陽性のモデル細菌遺伝子リソースと代表者の病原性評価系を連携させ、細菌コアゲノム上の潜在的病原性に関わる遺伝子群を網羅的に同定し、細菌の潜在的病原性の分子基盤を解明する。中長期的には、潜在的病原性を標的とした新規感染症治療薬への展開を志向するとともに、細菌学の普遍的課題である病原性細菌の進化に関する新たな原理解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、大腸菌遺伝子欠損株ライブラリーから、陽イオン性界面活性剤である臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)に耐性を示す株を探索した。その結果、3909株の中から75株のCTAB耐性株を同定した。この中に、tRNAの2-チオウリジン合成に関わる遺伝子の欠損株が複数含まれていた。そこで、2-チオウリジン合成に関わる遺伝子の一つであるtusAについて、その欠損がCTAB耐性を引き起こすメカニズムの解析をおこなった。tusA欠損株はCTAB以外の陽イオン性界面活性剤や抗菌ペプチドであるプロタミンにも耐性を示した。この結果から菌体表層の電荷が変化している可能性を考え解析したところ、tusA欠損株は野生株と比較して菌体表層が負に帯電していることが明らかになった。次に、tusA欠損株ではtRNAの2-チオウリジンが喪失し翻訳に影響が出ていると考え、翻訳における終止コドンの読み飛ばしとコドンの読み枠のずれの頻度を検討した。tusA欠損株では、野生株に比べて、これらの翻訳の異常頻度が低く、翻訳における忠実度が変化していることが示唆された。さらにRNAシークエンスの結果、tusA欠損株では、野生株に比べ、運動性や翻訳に関わる遺伝子の転写産物量が増加していた。 以上の結果から、tusA遺伝子の欠損によりtRNAの2-チオウリジン合成能が失われた結果、菌体表層の負電荷が大きくなり、陽イオン性抗菌物質への大腸菌の耐性化が導かれることが示唆された。菌体表層の負電荷の増加は、菌体表層での陽イオン性抗菌物質の吸着量を増大させ、陽イオン性抗菌物質の内膜への到達を妨げていると推定している。また、菌体表層の負電荷の増大は、翻訳の変化を引き金とする様々な遺伝子の発現変化によって引き起こされたのではないかと推測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌の遺伝子欠損株ライブラリから陽イオン性界面活性剤(CTAB)に対する耐性株を探索し、CTAB耐性を示す複数の遺伝子欠損株を同定することに成功している。tRNAの2-チオウリジン合成に関わる遺伝子の欠損がCTABなど陽イオン性抗菌物質に対する耐性化を引き起こすことは全く報告されておらず、新たな抗菌物質耐性機構であると推定される。複数種のCTAB耐性を導く遺伝子変異を同定できたこと、ならびに、tusA欠損がCTAB耐性を引き起こすメカニズムについて解析が進んでいる状況から、本研究計画がおおむね順調に進展していると判断する。 また本研究では、代表者と2名の分担者が大学院生の研究指導を行いながら、研究を推進している。本課題に関連して、複数名の大学院生が本年度に学会発表を行い、プレゼンテーション力、質疑応答力を上昇させている。この状況から、人材育成の観点においてもおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
環境ストレスに対する耐性化と病原性の上昇を引き起こす細菌の遺伝子変異について、同定と機能解析を進める予定である。具体的には以下を予定している。 (1) 病原性機能が上昇した細菌変異株の分離 (2) 様々な感染環境を模擬した感染モデルの構築
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