研究課題/領域番号 |
23K24141
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補助金の研究課題番号 |
22H02879 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
渡邊 洋平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50452462)
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研究分担者 |
荒井 泰葉 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80793182)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 新興感染症 / 新興ウイルス / RNA / 重症化機序 / 免疫応答 / 宿主適応 / 重篤化機序 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、申請者らが最近見出した「新興ウイルスがヒト生体内でイレギュラーな短鎖viral RNAを過剰産生して高病原性を発揮する」という新興ウイルスに普遍的な病態機序を実証することを目的とする。本研究は、新興ウイルスがサイトカインストームを惹起してARDS、多臓器不全や血栓症などの重症化を惹起する普遍的なキーファクターを特定するものであり、得られた知見は新興ウイルス感染症に汎用可能な治療法や創薬に向けた新しい機軸となる。
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研究実績の概要 |
培養細胞を用いた感染実験により、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は季節性コロナウイルス(HCoV-OC43及び229E)と同様に効率的にヒト細胞で増殖する一方dえ、SARS-CoV-2のみが感染後期にIFN産生を誘導する事象を見出した。ウイルス感染細胞から精製したRNA分画を細胞導入したところ、SARS-CoV-2感染細胞を由来とするsmall RNA分画のみがIFN誘導能を示したため、このRNAの同定を試みた。 small viral RNA(svRNA)を効率的に解読するRNA-seq法を構築することで、HCoVと異なり、SARS-CoV-2がウイルスゲノムRNAの5’末端断片(5’ end svRNA)を大量に産生することが分かった。5’ end svRNAは、5’ triphosphateと末端63塩基によるRNA2次構造の存在によってRIG-Iを刺激していた。 ヒト気道再構築モデルを用いたex vivo感染実験により、OC43と異なり、SARS-CoV-2が感染後期に5’ end svRNAを蓄積させてIFN応答を惹起することを明らかにした。また、SARS-CoV-2変異株間で5’ end svRNA産生量に相違があり、これは臨床的に報告されているウイルス病原性の違いと一致した。 5’ end svRNAがウイルス複製に機能を持つのか評価するために、実験的な補完実験をおこなった。その結果、細胞内の5’ end svRNA量を100倍以上に増加させてもSARS-CoV-2 RNA複製量は変化しなかった。このことから、5’ end svRNAはウイルス複製自体を制御する役割はなく、異常なRNA複製の副産物として蓄積すると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新興ウイルスとしてのSARS-CoV-2を対象に、ヒト細胞での複製過程で免疫を惹起する異常な短鎖viral RNAを蓄積する事象を見出した。また、細胞内に蓄積する短鎖viral RNAを特性化して5’末端から63ntをピーク長とする短いゲノム断片であることを明らかにした。また短鎖viral RNAの5’ triphosphateとRNA2次構造がRIG-Iを介して自然免疫を誘導することが分かった。一方で、SARS-CoV-2の解析を優先させたために、高病原性鳥インフルエンザウイルスを対象とした解析については、インフルエンザウイルスが産生する短鎖viral RNAの存在と代表的なRNA配列は決定できたが、免疫誘導能などの機能解析まで進展できなかった。しかし研究計画全体としては、初年度としてSARS-CoV-2感染細胞内で蓄積する短鎖viral RNAの特徴を計画以上に詳細に捉えることができており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新興ウイルスとしてのSARS-CoV-2を対象とした研究について、昨年度に細胞内で産生された短鎖viral RNAを特性化できたことから、今年度は短鎖viral RNAがエクソソーム中に取り込まれて細胞外に放出されうるのか、短鎖viral RNA含有エクソソームに非感染細胞の自然免疫誘導能があるのかについて解析を進展させる。 次に高病原性鳥インフルエンザウイルスを対象とした研究について、RT-PCR法で増幅した遺伝子産物をサンガーシークエンスしてヒト細胞で産生する短鎖viral RNAの存在確認と代表配列を決定できていることから、今年度はsmall RNA-seq法によってより包括的に短鎖viral RNA配列を解読する。また代表配列について、RNA合成して細胞導入させることで、インフルエンザウイルスを由来とする短鎖viral RNAに免疫誘導能があるのかについて評価する。
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