研究課題/領域番号 |
23K24147
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補助金の研究課題番号 |
22H02885 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小野寺 淳 千葉大学, 災害治療学研究所, 教授 (10586598)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | エピジェネティクス / 炎症性疾患 / TET酵素 / T細胞 / マクロファージ |
研究開始時の研究の概要 |
免疫系による炎症反応は生体防御に必須であり、加齢によって炎症反応がうまく調節できなくなると、生体防御機能の低下と病的炎症のリスク増大に繋がる。近年DNAメチル化異常と病的炎症の関連が注目されているが、発症機構は未だ不明のままである。DNAメチル化異常は老化によって蓄積され、TET遺伝子の変異によって異常がさらに加速することが知られている。 本研究では、TETを欠損させた実験マウスモデルを用いて、人工的に急激なDNAメチル化異常を誘導し病的炎症が起こる機構を解明することを目的とする。これにより病的炎症発生機構の一端が解明され、炎症性疾患の新規診断法や治療法の開発に繋がることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、「DNAメチル化異常が、なぜ免疫異常や病的炎症を引き起こすのか?」という学術的な「問い」を設定し、その分子機構を明らかにすることを目的としている。研究目的に即し、研究代表者は、モデル実験系であるTET欠損マウスに見られるゲノム不安定性、トランスポゾンの再活性化、炎症性の亢進、および細胞腫瘍化の機構解明を目指して、DNAメチル化異常に着目して研究を進めた。 令和5年度は、主に慢性呼吸器アレルギー疾患のモデルについて解析を行った。ヒト好酸球性副鼻腔炎患者検体のシングルセルRNA-seq 解析では、マウスの気道炎症に関わるTxnip遺伝子や、マウスのTET欠損で影響を受けるStefin遺伝子などのヒトにおけるホモログ遺伝子群の発現上昇が見られた。またマウスモデルとして肺胞マクロファージを用いた解析では、TETを欠損させると炎症性サイトカインの産生が増加することが分かってきた。さらに、TETを欠損したCD8+T細胞やNKT細胞では抗腫瘍活性が上昇することも明らかとなりつつあり、以上の「epigenetic異常と呼吸器疾患・腫瘍性疾患」について解析した英文原著論文を二報、英文総説を一報発表した。これらに加えて、日本国内でも複数回の学会発表の機会があり、特に地元で開催された第52回日本免疫学会学術集会とそれに引き続き行われたcMAV-cSIMVa Workshopにおいて多くの演題で発表を行った。その他邦文総説3報の執筆に携わった。国際共同研究機関として、アメリカのLa Jolla Institute for Immunology (LJI)とUniversity of California, San Diego (UCSD)などと連携して研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4-5年度を通じて、野生型とTET完全欠損の骨髄および肺胞マクロファージを長期間培養して、炎症に関わる遺伝子やレトロトランスポゾンの発現の変動について解析した。TET2/3二重欠損T細胞の機能解析では、老化に伴って性質が変化することが報告されているTfh、NKT細胞などに着目して研究を進めた。 (項目1) TET2/3二重欠損T細胞におけるナイーブ細胞急減の機構の解析:野生型マウスでは、約二年が経過するとCD62L+のナイーブT細胞の減少と活性型T細胞の増加が見られる。一方、TET2/3二重欠損(CD4-cre-ERT 2)ではタモキシフェンで遺伝子を欠損させた約2-3ヶ月後に同様の現象が見られ、特にTfh、NKT細胞などの増加が顕著であることが分かってきた。 (項目2) TET完全欠損マクロファージのヘテロクロマチンの機能不全とレトロトランスポゾン発現異常の解析:肺胞マクロファージを長期培養する実験系を確立することができた。また詳細な転写産物解析により、TET完全欠損マクロファージで発現上昇するレトロトランスポゾンを絞り込むことができた。 (項目3) TET完全欠損マクロファージと呼吸器系炎症疾患との関連:ヒト好酸球性副鼻腔炎患者検体のシングルセルRNA-seq 解析により、病態に関わる候補遺伝子の抽出を行った。 以上のように、本研究が提唱する、DNAメチル化異常-トランスポゾンの再活性化-炎症性の亢進-ループ仮説、を裏付ける証拠が着実に得られており、研究の進捗状況は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は引き続きTET欠損T細胞やマクロファージの解析を進めるために、以下の研究を計画している。 (項目1) TET2/3二重欠損T細胞におけるナイーブ細胞急減の機構の解析:Tfh、NKT細胞の増加が見られたことから、それらに加えて、老化との関連が報告されている細胞障害性CD4+T細胞を含めた詳細な機能解析を行う。具体的には、バルクとシングルセルRNA-seq、TCRレパトワ解析などによりT細胞がクローン性の増殖をするか、どのような細胞集団が増えているかを明らかにする。また抗体染色によるフローサイトメーター解析および病理組織解析により、炎症による臓器への影響を明らかにする。 (項目2) TET完全欠損マクロファージのヘテロクロマチンの形態解析:昨年度の解析により、TET完全欠損マクロファージで発現上昇するレトロトランスポゾンを絞り込むことができた。また、バイオインフォマティクス技術の進歩により、シングルセルRNA-seqでもレトロトランスポゾンの発現解析が可能になったことから、今年度は今までに取得したデータを再解析してシングルセルレベルでのレトロトランスポゾンの異常発現細胞の同定を目指す。また、DNAメチル化異常がヘテロクロマチンに及ぼす影響について、STED等の超高解像度顕微鏡を用いて観察する。 (項目3) TET完全欠損マクロファージと呼吸器系炎症疾患との関連:ヒトでは、TET2遺伝子変異により生じる炎症性マクロファージと、心血管疾患との関連が報告されている。近年、呼吸器系での2型炎症における炎症性マクロファージの役割が注目されていることから、昨年度は呼吸器系を研究対象として肺胞マクロファージの機能解析を行った。培養系は大方確立できたので、本年度はTET完全欠損マウスモデルを用いた解析を進める。バルクやシングルセルRNA-seqを適宜活用して、新たな分子機構を見出したい。
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