研究課題/領域番号 |
23K24154
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補助金の研究課題番号 |
22H02893 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
梅本 英司 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (90452440)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 腸管免疫 / パイエル板 / 生理活性分子 / Gタンパク質共役型受容体 / 貪食細胞 / 粘膜免疫 / マクロファージ / GPCR / バイエル版 |
研究開始時の研究の概要 |
小腸パイエル板は外来抗原の通過口であるが、パイエル板貪食細胞による抗原取り込みの分子機構には不明な点が多い。申請者らは腸内細菌が産生するピルビン酸および乳酸が小腸粘膜固有層のCX3CR1+貪食細胞上のGタンパク質共役型受容体GPR31に結合することで、その樹状突起を伸長することを報告した。一方、パイエル板ではCX3CR1+樹状細胞サブセットのLysoDCがGPR31を発現する。本研究ではピルビン酸・乳酸-GPR31シグナルがパイエル板CX3CR1+貪食細胞集団による抗原の捕捉および免疫応答を制御し、パイエル板から感染する病原性細菌に対する感染防御における役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
腸管管腔には腸内細菌や食物抗原など様々な抗原に日常的に暴露されるとともに、病原性微生物の侵入部位となる。小腸パイエル板は外来抗原の通過口として機能するが、パイエル板貪食細胞による抗原取り込みの分子機構には不明な点が多い。我々は腸内細菌が産生するピルビン酸および乳酸が小腸粘膜固有層のCX3CR1+貪食細胞上のG蛋白質共役型受容体GPR31に結合することで、その樹状突起を伸長することを既に報告している。一方、パイエル板CX3CR1+貪食細胞は粘膜固有層のCX3CR1+細胞と表現型や機能が異なり、複数の細胞集団から成る。なかでもLysoDCは上皮細胞層直下に位置し、特にM細胞のポケット構造に樹状突起を伸長することで、M細胞を通過した抗原を捕捉する。我々は本研究において、ピルビン酸の経口投与によりLysoDCはGPR31依存的にM細胞に樹状突起を伸長することを見出した。特にピルビン酸はLysoDCにおいて、先端が膨らむバルーン状の樹状突起の伸長を誘導したことから、効率的にM細胞ポケット内の病原性細菌を捕捉すると考えられた。また、経口感染時におけるパイエル板LysoDCのRNA-seq解析を行ったところ、GPR31欠損マウスで、抗原プロセシングに関する種々の遺伝子発現の減少が認められた。パイエル板選択的に感染するリステリア株を経口感染させて免疫応答を誘導した後、小腸絨毛に感染するリステリア強毒株を経口投与すると、GPR31欠損マウスの体重および生存率が野生型マウスと比べて減少した。以上より、ピルビン酸-GPR31シグナルはパイエル板LysoDCの樹状突起伸長および病原性細菌に対する免疫応答誘導に重要な役割を果たすと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パイエル板のCX3CR1+貪食細胞集団はLysoDCおよびLysoMacの細胞集団に分けられ、GPR31はLysoDCに高発現する。LysoDCは上皮細胞層直下に位置し、特にM細胞のポケット構造に樹状突起を伸長することで、M細胞を通過した抗原を捕捉する。我々はこれまでの解析で、ピルビン酸を経口投与するとLysoDCはGPR31依存的にM細胞に樹状突起を伸長することを明らかにしている。二光子生体顕微鏡によりGPR31シグナルを介したLysoDCの樹状突起伸長を三次元で観察したところ、樹状突起の形態は樹状突起の先端が膨らむバルーン型と先端に向けて細くなるフィンガー型の2タイプあり、野生型マウスではピルビン酸の投与により特にバルーン型の樹状突起が顕著に増加することが明らかになった。この形態学的特徴はM細胞ポケットに侵入した病原体を効率よく捕捉するために適していると考えられた。 GPR31シグナルを介したLysoDCのM細胞への樹状突起伸長が病原体感染における役割を明らかにするため、マウスにおいてパイエル板のM細胞から選択的に組織内に侵入することが知られるリステリア菌株EGDe株をGPR31欠損マウスに経口感染させ、LysoDCの遺伝子RNA-seq解析を行ったところ、GPR31欠損マウスで抗原プロセシングに関する種々の遺伝子の発現が減少した。さらにEGDe株を経口投与して免疫応答を誘導した後、小腸絨毛に感染するリステリア強毒株10403s株を経口感染させると、GPR31欠損マウスの体重および生存率が野生型マウスと比べて減少した。以上より、ピルビン酸-GPR31シグナルはパイエル板においてLysoDCの樹状突起の伸長を促進し、病原性細菌に対する免疫応答の誘導に重要な役割を果たすことが考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
パイエル板における抗原特異的な免疫応答におけるGPR31シグナルの役割:野生型マウスおよびGPR31欠損マウスにリステリア菌を経口感染させた後、パイエル板および腸管粘膜固有層から単離したT細胞と、リステリアの溶血素リステリオリシンの部分ペプチドと抗原提示細胞と共培養することで、これらの組織におけるリステリア特異的な免疫応答を評価する。また、ピルビン酸の経口投与によりリステリアに対する免疫応答が増強されるかどうかを、抗原特異的なT細胞誘導、体重減少や生存率等を指標に解析する。
GPR31依存的にパイエル板で誘導されたエフェクターT細胞の動態解析:KikGRマウスは紫色光の照射で蛍光が緑色から赤色に変化する蛍光タンパク質を発現しており、特定の部位に紫色光を照射することで、細胞動態の追跡が可能である。GRP31欠損マウス × KiKGRマウスのパイエル板に紫色光を照射して、パイエル板でGPR31依存的に誘導されたT細胞が粘膜固有層に移動してエフェクター機能を発揮する可能性を検討する。
GPR31発現細胞集団およびその局在の解析:パイエル板においてGPR31は少なくともlysoDCに発現するものの、パイエル板にはCX3CR1+細胞集団は複数存在することから、GPR31の詳細な発現細胞やその局在については十分解析されていない。GPR31発現細胞の局在および形態を詳細に解析するため、GPR31-creマウスを作製し、GPR31発現細胞がTdTomatoを発現するマウスを作出する。このマウスをCX3CR1-GFPマウスと掛け合わすことで、パイエル板のGPR31発現細胞を生体内で可視化し、リステリア菌感染時における局在や形態を明らかにする。
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