研究課題/領域番号 |
23K24158
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補助金の研究課題番号 |
22H02897 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
田中 正光 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20291396)
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研究分担者 |
栗山 正 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (30398226)
伊藤 剛 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (60607563)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 腫瘍マクロファージ / がん関連線維芽細胞 / がん微小環境 / CEF / 間質ニッチ / 中皮細胞 / マクロファージ / 癌関連線維芽細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
腹膜播種を高頻度におこし、悪性度の高いスキルス胃癌などでは、癌の中心部から離れた周辺部にまで広く線維化が生じ、その線維組織中に少数の癌細胞が点在する病理像が特徴的である。これは腫瘍の先進フロントを形成しているのは癌細胞自身ではなく、線維芽細胞などの間質組織である事を示す。では癌細胞が少数または不在の腫瘍周辺部で、どうやって癌促進性の間質が作られるのか?遠隔地の間質細胞を活性化する新しい機構について分子メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
腫瘍が広がる際には間質の変化が広く先行し、それを追うように癌細胞が広がり、さらに間質変化の領域が先進拡大する事が、難治性である播種型癌の原理ではないかと考えている。癌細胞に好環境な間質ニッチを常に先進部に準備する事は、腫瘍の持続的な進行を助ける。これまで癌が遠隔地の間質細胞をリモートで活性化する2つの新規機構を検討してきた。(1)マクロファージは癌の細胞外小胞を取り込み、運搬し、他の間質細胞に情報伝搬する。(2)癌細胞で刺激された線維芽細胞は、次々と自律的に線維芽細胞をリプログラムする。癌の生育をサポートする間質細胞ニッチを遠隔地に作るこれら2つの機構の分子メカニズムについての解析を進めている。 (1)MΦを介した癌分子情報の伝搬機構に関して、先行研究で行ったMΦブレブ小胞で伝搬される癌細胞由来分子の網羅解析によって、ガングリオシドの合成酵素が多く検出された。そこでガングリオシドの調節、特にその最初のステップであるGM3の合成酵素であるST3GAL5について検討した。ヒト胃癌細胞において同分子のノックアウト細胞株を作成し、癌細胞自身および、これらの細胞株の産生する細胞外小胞(エクソソーム)を受け取ったマクロファージや樹状細胞の特性変化、さらにそれらのマクロファージや樹状細胞が第三の間質細胞として中皮細胞および免疫細胞に与える影響を調べた。その結果、癌細胞においてはHIF1a経路の活性化にST3GAL5は重要であり、ST3GAL5陽性癌細胞のエクソソームはマクロファージ上のGM3受容体を介して高効率に取り込まれ、マクロファージはM2極性シフトが生じ、さらに中皮細胞に対して癌関連線維芽細胞への変換を促した。また樹状細胞/Tリンパ球に対してはST3GAL5陽性癌細胞のエクソソームは免疫抑制作用がある事などが判明した。これらの内容をまとめて論文に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MΦを介した癌分子情報の伝搬機構について、ガングリオシド合成酵素を基盤とする新規知見についてまとまった結果が得られ論文発表でき、また今後の展開に結び付いている。また基質硬度など他の検討項目においても、その方法の予備実験的な検証が終えられ、今後の実験遂行の見通しが当初予定どおりとなった。
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今後の研究の推進方策 |
概要(1)MΦを介した癌分子情報の伝搬機構に関しては、マクロファージが産生する癌細胞由来分子を含む小胞の分泌機構の検討を進める。それらの小胞とサイズ・形態が類似する既知の細胞外小胞の情報を基に、その形成メカニズムと責任分子の経路について解析を進めてゆく。また前年度に解析したST3GAL5に関しては、臨床病理組織標本での検討を行うと共に、既存データベースのバイオインフォマティクス解析を加えて実際の腫瘍の播種における同分子の意義を検討する。概要(2)癌促進性線維芽細胞の連続産生に関しても、これまでに抽出した同成因による線維芽細胞のサブクラスを、病理標本における多重染色の解析を加えてその分布や頻度についての検証を増やしてゆく予定である。その他として、基質硬度の変換が癌細胞の浸潤、動態に与える影響を検討している。細胞内張力測定が可能な分子プローブを導入した癌細胞を用いて、その足場の硬度判定がFRET高率の差から可能なことが前年度に分かったので、それを応用した検討を進めてゆく。
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