研究課題/領域番号 |
23K24167
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補助金の研究課題番号 |
22H02906 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
藤田 直也 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター, 所長 (20280951)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | がん / ポドプラニン / 転移 / 血小板 |
研究開始時の研究の概要 |
われわれが同定した血小板凝集促進因子ポドプラニンは、血小板上のCLEC-2分子との相互作用を介して血小板凝集を誘導する。この相互作用を阻害する中和抗体を作製したところ、ポドプラニン陽性がん細胞株の増殖と血行性転移を抑制できることが明らかとなった。一部のポドプラニン陽性がん細胞株では、中和抗体投与時でも増殖が抑制されなかったため、中和抗体が奏功する患者選択のマーカー分子の同定や、中和抗体の効果増強につながる併用療法の開発を進めていくことを目的とする。
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研究実績の概要 |
血小板は、創傷部位などで凝集することで止血し、内包されている増殖因子などを放出することで創傷部位の修復に関わる。一方で、がん細胞と相互作用した場合にも血小板凝集が誘導され、その結果としてがん細胞の増殖や転移を促進する。つまり、血小板は創傷治癒といった生体の生体防御・生命維持に重要な役割を果たす一方で、がんをはじめとする疾病の悪化にも関わることが知られており、そうした二面性に関与する機構の解明は血小板を標的にした治療薬開発において喫緊の課題となっている。 研究代表者が同定したポドプラニン分子は、血小板上のCLEC-2分子との直接的な相互作用により凝固系の関与無しに血小板凝集を惹起する。ポドプラニンとCLEC-2との相互作用を阻害できる中和抗体は、ポドプラニン陽性がん細胞による血小板凝集を抑制し、ポドプラニン陽性がん細胞の増殖と転移を抑制する。しかし、ポドプラニン陽性の骨肉腫細胞の中には、中和抗体で腫瘍増殖が抑制されない細胞が存在することが見出された。これら細胞では血小板より放出される増殖因子のレセプターの発現量が低く、ポドプラニンに対する中和抗体の抗腫瘍効果は、ポドプラニン発現量だけでなく血小板より放出される増殖因子のレセプター発現量とも相関していることが明らかとなった。一方で、中和抗体はポドプラニン陽性細胞に対しては等しく血行性の肺転移を抑制した。よって、血行性転移の抑制効果は、ポドプラニン発現レベルのみに依存している可能性が示唆された。なお、レセプターの活性化を検証するために、リン酸化レセプターを認識する抗体を用いたWestern Blot法での検証を行なっていたが、用いてきたリン酸化レセプターに対する抗体がFFPE切片におけるヒト臨床検体の免疫染色には用いることができないという問題が生じたため、一部のin vitro実験データの取り直しを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗ポドプラニン中和抗体で抗腫瘍効果が認められる骨肉腫細胞と認められない骨肉腫細胞の比較解析により、血小板より放出される増殖因子のレセプターが、抗ポドプラニン中和抗体の抗腫瘍効果を規定する因子であることを見出すことができた。さらに、レセプターの活性化阻害剤により、骨肉腫の腫瘍増殖が強力に抑制できることも本年度に確認することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
抗ポドプラニン中和抗体の抗腫瘍効果は、各種の血小板由来増殖因子に対するレセプターの発現強度と相関している可能性を見出していた。そこで、構造的にも阻害プロファイル的にも異なるレセプター阻害剤を数種類用いることで、阻害剤のオフターゲット効果では無いとの別手法での確認を行なった。しかし、Western Blot法などin vitroの実験に用いてきたリン酸化レセプターに対する抗体ではヒト検体での免疫染色が上手く行えないという問題が生じたため、FFPE切片の免疫染色が可能なリン酸化レセプターに対する抗体を再度スクリーニングし、ポドプラニン発現頻度と血小板由来の増殖因子に対するレセプターの活性化状態と臨床的な予後との相関を免疫組織染色により再確認していく。 これまでに、抗ポドプラニン中和抗体が認識するヒトポドプラニンの結合部位を同定し、その結合部位をマウスポドプラニンの相同部位と置換したノックインマウスの樹立に成功している。ただ、このマウスはC57BL/6N系統由来のES細胞株を用いて作製されていた。本邦において現在はチャールズリバーからジャクソンラボラトリーにブリーダーが変更された結果、C57BL/6NからC57BL/6Jへと切り替わっているため、今後を考えてC57BL/6Jとの自然交配によるキメラマウス作製を進めている。そのノックインマウス作製が完了次第、抗ポドプラニン中和抗体投与時の抗腫瘍効果における免疫細胞の寄与を検討する予定である。
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