研究課題/領域番号 |
23K24170
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補助金の研究課題番号 |
22H02909 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
青木 正博 愛知県がんセンター(研究所), がん病態生理学分野, 副所長兼分野長 (60362464)
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研究分担者 |
三城 恵美 (佐藤恵美) 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任講師 (00455544)
梶野 リエ 愛知県がんセンター(研究所), がん病態生理学分野, 主任研究員 (20633184)
小島 康 愛知県がんセンター(研究所), がん病態生理学分野, 主任研究員 (30464217)
藤下 晃章 愛知県がんセンター(研究所), がん病態生理学分野, 主任研究員 (50511870)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 大腸がん / 転移 / がん幹細胞 / マウスモデル |
研究開始時の研究の概要 |
大腸がん幹細胞は転移・再発や治療抵抗性に関与することが知られているが、幹細胞性を制御・維持する分子機構は不明である。研究代表者らは、新規大腸がん自然発症・転移モデルの解析から、2つのシグナル経路が転移性大腸がんの幹細胞性や転移形成能に関与することを見出している。本研究では、大腸がん幹細胞がどのように可塑性や未分化性を維持して転移に寄与するのか、転移性大腸がんマウスモデルを用いてその分子機構を解明し、臨床検体を用いて検証する。転移性大腸がんに対する新しい治療戦略を確立する研究基盤の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
1. PKA-CREB-ALCAM経路の役割解明: 転移性大腸がんマウスモデル(CKPSマウス)由来の大腸がん細胞株(CKPS細胞)において、PKA-CREB経路の下流でALCAMの発現を制御する分子を探索するため、前年度までにリン酸化CREB抗体を用いたChIP-seq解析を実施した。本年度はこのデータを元に、リン酸化CREB標的遺伝子候補の解析を実施した。通常(2次元)培養条件と比較して、リン酸化CREBおよびALCAMのレベルが上昇するがん幹細胞(3次元)培養条件下において発現が上昇する遺伝子群をRNA-seq解析により同定し、ChIP-seq解析結果と統合した。がん幹細胞培養条件下で発現上昇するリン酸化CREB標的遺伝子候補についてエンリッチメント解析を実施したところ、血管・血液、アポトーシス抑制に関連する情報などが浮上した。さらにCrebノックアウト(KO)細胞を用いて標的遺伝子を絞り込んでいる。候補の一つであるBmf遺伝子をKOしたが、転移形成能に顕著な影響を与えなかったため、その他の候補遺伝子について解析を進めている。 2. シグナル経路Xの役割解明: 本年度は、シグナル経路Xの重要な構成因子AをKOしたCKPS細胞のRNA-seq解析およびプロテオーム解析を実施した。エンリッチメント解析から、リボゾーム関連の遺伝子・タンパク発現の低下がAをKOしたCKPS細胞で認められた。分泌細胞の特徴を示唆する分子群に加えて、炎症に関連する遺伝子群の発現が上昇していた。また、AをKOした細胞において、重要な細胞内シグナル経路に関与する分子群の発現低下が確認された。 3. 大腸がん臨床検体を用いた検証: 1.および2.で得られた結果について、TCGAの公共データベースを元にin silicoベースでの解析を行うとともに、患者由来オルガノイドを用いた検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「1. PKA-CREB-ALCAM経路の役割解明」に関して、リン酸化CREB標的遺伝子候補群から、RNA-seq解析の結果を加味してALCAMの発現制御に関与する遺伝子の同定を目指しているが、まだ絞り切れていないことから、「3. 大腸がん臨床検体を用いた解析」のうち、大腸がん臨床検体を用いた発現解析がやや遅れている。一方で、「2. シグナル経路Xの役割解明」については、その重要な構成因子Aをノックアウトした細胞のRNA-seq解析、プロテオーム解析から重要な知見が得られており、「3. 大腸がん臨床検体を用いた解析」のうち、大腸がん細胞株やオルガノイドを用いた検証でも幹細胞性におけるAの重要性が強く示唆されている。そのため、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きリン酸化CREB標的遺伝子候補の同定作業を実施する。CRISPR-Cas9により残りのリン酸化CREB標的遺伝子候補のノックアウト細胞を樹立し、脾注肝転移モデルによる転移巣の形成能および病理組織像を対照のCKPS細胞と比較する。同時に作成したCREB標的遺伝子ノックアウト細胞を用いてALCAMの発現やがん幹細胞性への関与を検討することで、PKA-CREB経路によるALCAM発現制御機構の解明を目指す。また、PKA-CREB経路がALCAM非依存的に大腸がんの幹細胞性維持に関わる可能性についても検討する。 また、シグナル経路Xについては、これまでに得られた結果をもとに、その構成因子AおよびBの下流で大腸がんの幹細胞性に関与する候補分子のノックアウトおよび阻害薬による介入を実施し、その特定を目指す。また、シグナル経路Xは代謝制御への関与が示唆されるため、同経路に介入したCKPS細胞を用いてメタボローム解析を実施する。さらに、TCGAなどの公共データベースや公開されている情報を元にin silicoベースでの解析を続け、ヒト大腸がんにおける候補遺伝子の発現について検討するとともに、大腸がん臨床検体(原発巣・転移巣)を用いた免疫染色やqRT-PCR、ウェスタンブロット等による発現解析によって検証を行う。
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