研究課題/領域番号 |
23K24171
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補助金の研究課題番号 |
22H02910 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 (2023-2024) 愛知県がんセンター(研究所) (2022) |
研究代表者 |
井上 聡 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30801930)
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研究分担者 |
松下 博和 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫制御TR分野, 分野長 (80597782)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | CAR-T細胞 / ゲノム異常 / がん免疫 / 個別化医療 / 細胞免疫治療 |
研究開始時の研究の概要 |
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法は難治性腫瘍に対する治療法として注目されている。しかし、大半の悪性腫瘍に対しては持続的な治療効果が得 られていない。現在、主に T 細胞の質、免疫抑制環境にのみ着目して抵抗性を克服する手法の開発が進められている。本研究では、腫瘍細胞自体が抗腫瘍 T 細胞による細胞傷害活性への抵抗性に関わる分子機構を有するという仮説を立てた。腫瘍細胞が有する抵抗性機序を分子レベルで明らかにし、これを阻害することにより CAR-T 細胞による細胞傷害活性を高めることで治療抵抗性の克服目指すものである。
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研究実績の概要 |
キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor, CAR) T細胞免疫療法が難治がんに対する治療法として注目されている。しかし大半の悪性腫瘍に対しては持続的な治療効果が得られていないのが現状である。本研究では抗腫瘍T細胞による細胞傷害活性への抵抗性に関わる腫瘍細胞自体の分子機構が存在するという仮説のもと、治療抵抗性に関わる分子機序を明らかにするとともに、これを阻害することで抗腫瘍T細胞による細胞傷害活性を高めることを研究目的とした。まず、遺伝子発現・変異プロファイルが公開されている腫瘍細胞株に特定の標的抗原を導入する。CAR遺伝子導入T細胞による細胞傷害活性への感受性を均一条件のもと定量する。このデータを臓器横断的に127種類の細胞株について集積し、世界初のCAR-T細胞に対する感受性カタログを作成した。CAR-T細胞感受性データと公開データベース上の遺伝子発現・遺伝子変異プロファイルなどの情報と照合して、3種類の抵抗性因子候補を抽出した。次に抵抗性因子を遺伝子レベル、または薬剤により阻害することによりCAR-T細胞に対する抵抗性が克服されることをin vitro, in vivo腫瘍モデルで示した。 本研究の遂行により、難治がんに対する治療として期待されている免疫細胞療法の治療効果を飛躍的に向上させる治療方法開発に向けた基礎的データを取得する。さらに個々のゲノム・エピゲノム異常に相関した抵抗性因子に対する阻害剤とCAR-T細胞との併用療法の有用性を実証することにより、がんゲノム医療の適用対象を現状の分子モダリティに留まらず、CAR-T細胞などの細胞モダリティにも波及させることにより、「個別化免疫細胞治療」の実現に向けた分子基盤の構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
127種類の腫瘍細胞株に対するCAR-T細胞に対する感受性データベースの作成を完了させた。CAR-T細胞感受性データと公開データベース上の遺伝子発現・遺伝子変異プロファイルなどの情報と照合したところ、少なくとも3種類の抵抗性因子候補を抽出した。続いて、これらの抵抗性因子を遺伝子レベルや薬剤により阻害したところ、CAR-T細胞に対する抵抗性が部分的に解除された。またこれらの抵抗性因子が、CAR-T細胞が産生する細胞障害性因子であるFasやGranzyimeBに対して抵抗性を示すことも示された。以上の結果から、CAR-T細胞に対して抵抗性を示す難治がんに対して、抵抗性因子に対する阻害剤を併用することにより、免疫細胞療法の治療効果を飛躍的に向上させることが可能であることを支持する向けた基礎的データが得られつつある。現在、in vitroの実験系に加え、複数のin vivo腫瘍モデルにおいても検証することにより、臨床応用に向けた基盤構築を目指す。さらに、個々のゲノム・エピゲノム異常に対応した個別化ゲノム医療としてのCAR-T細胞免疫療法の有用性についても、PDXモデルなどを活用することで検証する予定である。以上のように、本研究目的の基盤となる実験結果は既に得られており、概ね順調に進捗しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
CAR-T細胞に対する感受性データベースについては、現行の127種類から180種類への拡大を目指し、データベース作成を完了させる。CAR-T細胞感受性データと公開データベース上の遺伝子発現・遺伝子変異プロファイルなどの情報との相関性解析を改めて行い、新規の抵抗性因子候補を抽出する。新規抵抗性因子候補については、遺伝子破壊や薬剤による阻害によって、CAR-T細胞に対する抵抗性が解除されるか否かを検証する。さらにこれらの抵抗性因子候補が、FasリガンドやGranzyme Bに対する感受性に及ぼす影響を検証することで、抵抗性機序を分子レベルで明らかにする予定である。既に抽出した3種類の抵抗性因子を含めて、複数の腫瘍マウスモデルを用いて、抵抗性因子阻害剤とCAR-T細胞の併用療法の有用性を検証する。さらにPDXモデルを活用することで、臨床応用の有用性の基盤構築を目指す計画である。
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