研究課題/領域番号 |
23K24197
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補助金の研究課題番号 |
22H02936 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51010:基盤脳科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉田 正俊 北海道大学, 人間知・脳・AI研究教育センター, 教授 (30370133)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 自由エネルギー原理 / フリービューイング |
研究開始時の研究の概要 |
我々の視知覚は眼球運動という行為によって構成される。この「アクティブ・ヴィジョン」をシーン理解と眼球運動の制御の両面から明らかにしたい。そこで本研究では「ベイジアン・サプライズ」が脳内で処理されているか検証することを目的とする。この目的のため、視覚性ミスマッチ課題またはフリービューイング課題中の脳活動を計測することで、ベイジアン・サプライズに関連する脳活動があるかどうか実験的に検証する。
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研究実績の概要 |
我々の視知覚は眼球運動という行為によって構成される。この「アクティブビジョン」をシーン理解と眼球運動の制御の両面から明らかにしたい。自由エネルギー原理では、生体がシーン理解をするために情報獲得の期待値が高い部分に視線を向けるという考えから、従来の視覚サリエンスを拡張した「ベイジアン・サプライズ」という概念が提唱されている。そこで本研究は「ベイジアン・サプライズ」が脳内で処理されているか検証することを目的とした。 そこで以下の2つの実験デザインを用いてマーモセットから脳活動を計測した。[視覚性ミスマッチ課題] マーモセットに視覚刺激を提示する。Oddball条件はstandard刺激とdeviant刺激から構成されている。Many standards条件は8種類の方位の刺激から構成されている。Oddball条件でのdeviant刺激とMany standards条件でのdeviant刺激の応答の差分から、予想外の刺激が出たことによる成分(サプライズ)を順応や方位選択性の成分から単離することが可能となる。また、視覚刺激にgrating刺激、random dot motion刺激、物体刺激を提示することで、系統的に視覚刺激への反応選択性を定量化する。[フリービューイング課題]ではマーモセットに自然画像を提示して視線を計測する。視覚刺激には公開されている自然画像データベースを用いることによって、新規な画像が提示されるようにする。 [脳活動計測] これらの行動課題を用いて、マーモセット大脳表面をカバーする96ch ECoG電極を用いて局所電場電位を計測した。また別の個体では、内視鏡型Caイメージング装置を用いて、頭頂連合野から神経細胞活動を大量に同時記録を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3頭のマーモセットで、大脳表面をカバーする96ch ECoG電極を用いて局所電場電位を計測しながら、視覚性および聴覚性ミスマッチ課題による応答を計測した。その結果、視覚、聴覚それぞれに特化した応答がそれぞれ初期視覚野、初期聴覚野で見られるだけでなく、視覚、聴覚の両方において応答が見られる脳領域(側頭連合野)を見出した。この結果は知覚のモダリティーに依存せずに「サプライズ」を処理している可能性を示唆している。本結果については、日本神経科学会および日本マーモセット研究集会にて口演発表を行った。 これまでに5頭のマーモセットでフリービューイング課題を行った。低用量ケタミンの注入によって視線移動距離(スキャンパス)が低下すること、つまり、統合失調症で見られる行動が再現されることを見出した。本結果についてはFrontiers in Neuroscience誌に学術論文として発表を行った。 また、4頭のマーモセットでAAVによるGCaMP6の導入を行い、これまでに2頭でCaイメージングを行った。頭頂連合野の神経細胞がフリービューイング課題中に刺激提示によるサプライズに応答すること、視覚性ミスマッチ課題中の刺激提示によるサプライズに応答することを見出した。 以上のことから、進捗状況はおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
96ch ECoG電極による視覚性および聴覚性ミスマッチ課題による応答の計測については現在論文執筆を行っており、出版に向けて進めてゆく。 Caイメージングのデータをさらに多くの個体から計測することによって、論文化のために充分なデータ量を獲得することを目指す。 計算論的なモデルの構築のために、視覚性ミスマッチ課題でのCaイメージングのデータから生成モデルを構築する作業をすすめる。
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